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それからも同じような日々が続いた。相変わらずの日常、パーティーの後の介抱という名の“接待”。
特段の目的もなく過ごす日々に、時々大声で喚きたくなった。そんなことをしても何もならないのだけど。
「今夜のパーティーは、接待にお二人いらっしゃるそうだから、これ」
着替えて準備をしていたら着替えを持たされた。2人目に失礼がないように着替えろということか、それも下着まで。
パーティーに来る女は、キツイ香水をつけていることが多い、まるで雌猫がマーキングするように俺に“ニオイ”を付けようとする。何も言わず、着替えを受け取る。
___この女《香澄》は、どういう感覚をしているのだろう
美人でスタイルもいいが、笑った顔をほとんど見たことがない。息子の葵にしか、その笑顔は向けられていないようだ。
着替えには真新しい下着も入っていた。今はこういうものまで買い与えられていると気づいたら、身体中にイバラが巻き付いて身動きが取れなくなっている自分の姿が思い浮かんだ。
タバコに火をつけ、深く吸い込んで気持ちを落ち着ける。俺は俺の価値とやらを全うしなければ生きていけないのかもしれない。これではまるで、高級クラブのコールガールみたいだ。
ぴこん🎶
《まだお仕事かな?私はやっと家事もひと段落したところです》
ミハルからのLINEだ。
〈俺はこれから、パーティーに参加してくる。投資家たちが集まるから、気合いを入れないとね。スポンサーは大事だから〉
《そうなんですね。投資とかそんな難しい話は私にはわからないけど。翔馬さんは仕事ができる人だと思います。そんなところも素敵です、なんて》
あちこちにハートの絵文字がついている。そんなに俺のことを?
〈でも、こんな毎日よりミハルと過ごす時間が俺には必要だ。そうだ、明日、会えないか?〉
《ごめんなさい、明日は家族で用事があって。来週ならなんとか時間が取れそうだけど》
「なんでだよっ!!」
スマホに向かって、大声を出してしまった。
ミハルなら俺の思い通りになると思っていたのに、あっさりと裏切られたことがショックだった。
___俺のことを愛してると言うのは、嘘なのか?やっぱり家族が、浮気してるかもしれない夫の方が大切なのか?!
そんなわかりきったことがわからないくらい、俺は逆上していた。