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《一華編》
私が無視されるようになって、もう2週間近くが経つ。
初めこそ落ち込んで、無理をしてでも学校に行けばよかったと考えたり、私はどうすれば良かっただろうかと何度も脳内でシュミレーションをしたりしていたが、結局過去は変えられない。
メッセージで何度謝っても、誰とのトークでさえ既読すらつかない。ブロックされているのかもしれないと考えると、またじわりと視界が滲んだ。
私は彼女たちに嫌われたくないと思っている。
気持ちを切り替えなければ。
これ以上私が悩んでいても無駄だ。だから私から、どうにか彼女たちと話し合いが出来るようにしなくてはならない。
そう決意を決めた。
そして私は無視されることを前提に、休み時間の間、ずっと彼女たちに付きまとった。
彼女たちがトイレへ行った時、また私もそれについて行った。
「私の何が気に入らないの?
言ってくれたら治すから教えて」
「…」
やはり私は完全に空気だ。
なんて、気を落としかけたその時。
ふと手を振り上げる友達が目に入った。
「…っ、生意気なのよ!」
「!」
ビンタされる。
痛い、けれども無視されるよりも痛くなかった。
彼女がどういった経緯であれ、反応してくれたのが嬉しい。
彼女と目が合った。
私は睨まれているのだが、嬉しくて思わず頬が緩んでしまう。
「…何笑ってんの!!」
「お願い、私の何が気に入らなかったのか教えて」
「ずっと付きまとって来て、しつこい!!」
足を蹴られて後ろに倒れる。
衝撃でおしりを打った。痛かった。
トイレの床は汚いよなと、まるで他人事のように思う。
「っ、私の…何が、」
「…っ、そういう所!!」
そういう所…わからない。
どこから持ってきたのだろうか。他の友達が持ってきたバケツから、勢いよく水をかけられる。
そのバケツを頭に被せられ、視界を奪われ、友達の何人かで体を何発か蹴られた。
「言っておくけど、私達も怒ってるの」
「今まで貴女、私たちに散々指図しておいて、肝心な時に連絡が取れないって何考えてんの?」
「だからっ…、それは、謝ったでしょ?
ぁぐッ…」
地面に着いていた私の手を、上から踏まれた。
視界を覆われていて誰が私を踏んでいるのかさえもわからない。
「それに、…私も倒れて、しんどい思いをしてたの」
バケツを頭から外す。
「まだ言うの?」
また一発、次はお腹に向けて蹴りが入った。
それはお腹のいい所に入ったらしい。涙が滲んだ。
「ぁヴッ」
何か込み上げて来るものを感じるまもなく床に吐き出す。
私の吐瀉物がトイレの地面に広がった。
「汚い!」
「…貴女と話すことなんて、何も無いわ」
蹲る私を尻目に、彼女たちは怒り心頭で一緒に教室へと帰ってしまった。
嘔吐した倦怠感もあり、全身が痛いしダルい。
チャイムが鳴る。
今が夏場でよかったと、全身濡れた制服を見て思う。
痛む体を震わせて立ち上がる。
とりあえず制服についた吐瀉物を落とそうと、既に濡れているスカートをまた濡らした。
私が撒き散らしたものだ。私が片付けよう。
床に散らしたものは、先に散らされた水のおかげでまだ取れやすそうだ。
私はトイレ掃除用のモップを手に取った。
これが終わったら、制服を乾かすために屋上へ行ってしばらく休もう。そう思って。