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――小田原城。
北条氏康殿。
大変残念である。
聡明な貴殿なら、謝罪すると思っていたが……
此度来た返信を見て、失望した。
そちらがそう来るなら――
宣言通り、征伐をさせていただく。
――長尾景虎。
「……は?」
北条氏康は、届いた書状を見つめていた。
「これは一体………」
「殿…返書を送ったのですか?」
多目元忠は困惑する。
「……え?」
「殿が送られたのでは?」
「わしはまだ考えておったところじゃ」
「返書など、出しておらんよ」
「…………」
「では、一体誰が……?」
「私が送りました」
「…………」
氏康の顔が引きつる。
「……氏政」
「はい?」
「貴様、勝手に……」
「いくら実の息子とはいえ……」
「ぐぬぬ……!」
「止めないでくれ、元忠!!」
「殿、落ち着いてください!」
多目元忠が必死に止める。
「お気持ちは大変分かりますが、暴力は……」
「いや……しでかしたことを考えたら……」
「…………泣」
ーーーーーーーーーー
――春日山城。
「……残念じゃ」
長尾景虎は、返書を見つめていた。
「聡明だと聞いておったが……」
「まさか、このような返書が来るとは……」
長野業正も書状を見る。
「ふむ……」
「確かに北条の花押が着いておりますが……」
「氏康殿が書いたにしては……」
「どちらにせよ」
方円が静かに口を開く。
「この文に関する弁明は、来ていないのです」
「元に戻す戦を、始めましょう」
――方円は、正蛇の槍に手をかける。
「……」
佐竹義重が拳を握る。
「ぶっ潰してやる……」
里見義堯も続く。
「今までしてきたことへの報い……」
「夜も眠れぬほどの嫌がらせで、返してやる💢💢」
方円は立ち上がる。
「では、わたくしは一度、甲斐に引き上げさせていただきます」
「兵を連れてこなければなりませんので」
「…………」
(農民にとっては、収穫時期だろうと戦わなくてはならない……)
(全く美味しくない戦……)
富来 えび
302
富来 えび
30
(しかし、兵は必要……)
「ふむ……」
「…………」
「💡」
「ふふふふ……」
全員が方円を見る。
「お、おう……」
(あいつ、なんで笑ってるんだ……???)
ーーーーーーーーーー
――甲斐国。
「さて……」
方円は周りを見渡す。
「甲斐国の周りをうろちょろしている、山賊達を懲らしめに行きましょう」
「もちろん、していることは悪事です」
「ですが、この国は飢えている」
「こうするしかない事情もありますからね」
そして方円は、側近たちへ告げる。
「……殺してはなりませんよ」
「せっかく、いい方法を閃いたのですから」
側近は困惑した顔を浮かべる。
「は……はあ……」
「 ̄▽ ̄;」
ーーーーーーーーーー
――甲斐国山中。
「お頭!」
山賊の下っ端が慌てて駆け込んでくる。
「武田の兵が攻めてきやした!」
「囲まれてます!!!」
「なんだと!?」
頭が立ち上がる。
その瞬間――
「サクッ」
「ひえっ!:( ;´꒳`;):」
一本の矢が突き刺さった。
「矢が……?」
下っ端が矢を見る。
「ん……?」
「なにか着いてますぜ、お頭」
「見せろ」
頭が紙を広げる。
そこには――
『甲斐国を荒らし回る山賊達へ』
『民や商人たちを苦しめる悪事、たいへん許すまじ』
『しかし、そうせざる事情があることは、この私は痛いほど知っている』
『過ちを認め、関東管領をお戻しする正義の戦に参陣せよ』
『そうすれば、今まで行っていたことは全て水へ流すこととする』
「…………」
「えっ?!」
下っ端が目を丸くする。
頭も、しばらく書状を見つめていた。
「……年貢や税の負担が、少し減ったことは聞いていたが……」
別の下っ端が口を開く。
「お頭、多分従わなかったら……」
「前の国主のようになりますよね?」
「降伏した方がいいのでは……?」
さらに別の下っ端達も頷く。
「そうだ……」
「殺されるよりマシだ」
「全て水へ流すと言ってるんだ」
「ザワザワ……」
「ザワザワ……」
その時――
外から大声が響いた。
「どうする、山賊共ー!!」
「正義の戦に従わないと言うなら!」
「民や商人を苦しめる悪人として、この村上義清自ら征伐するぞ!!!」
「観念して出てまいれーー!!」
「今の甲斐国主は約束を守る方!」
「出てまいれー!」
戸の向こうから、さらに声が響く。
頭が叫ぶ。
「……本当に水に流してくれるんだろうなあ!」
村上義清が答える。
「今の国主は約束は守ると言っておるだろう?!」
「あの鬼畜の前国主とは違うんじゃー!」
「わしだって領地を取り返して貰った!」
「保証いたすー!」
「…………」
頭はしばらく考え――
「……わかった」
「信じて降伏しよう」
「民や商人にも、後で直接謝らせてくれ」
「良い心がけじゃ!」
村上義清が答える。
「事情は民も知っておろう!」
「悪いようにはせぬぞー!」
そこへ方円が歩み寄る。
「よく決断してくださいましたね」
「先払いで、砂金を少し渡しておきます」
「……!」
山賊たちが驚く。
「過ちを認め、謝ると言ったのです」
「では、行きましょうか」
方円は微笑む。
「正義の戦へ」
「へ……へい!」
頭が振り返る。
「行くぞ、お前たちー!」
「おおー!」
こうして――
甲斐国を荒らしていた山賊たちは、
正義の戦へと加わることになった。
方円は、戦うための兵を集めるだけではない。
この甲斐で生きる者たちを、
一人でも多く救おうとしていた。
コメント
1件
第十一章読了したよ〜🌸 氏政くんが勝手に返書送っちゃったせいで開戦しちゃうの、まじか…ってなった💦 でも方円が山賊たちに矢で投降勧告して、しかも許して兵に加える流れ、めっちゃ良かった😭 「一人でも多く救おう」って姿勢が沁みる…推せる!!