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「才花はあのとき、木村が大きい家だと知っていたが言わなかったんだな?」

「そうだね…」

「その才花の気持ちと、小松さんの気持ちを理解して共有しようと思っていた。タクも一樹も同じだろう」

「うん」

「だが…才花と小松さんの気持ちは十分に理解する…そうとしか今は言えない」

「うん、大丈夫」

「才花を理解しているし、その気持ちを否定はしないから」

「うん」

「距離を間違わなけりゃ、問題ない」

「そうだね。お父さんは…さすがだね…当たっているみたい…」

「ああ」

「それがしーちゃんなら、それでいいの」

「そういうところも、才花の飛び抜けて頭のいいところで小松さんと一樹にそっくりだ」


私の膝が不自由な時に用意してくれたスツールに私の方を向いて座った羅依は


「乾かしてくれ」


と私の腰に腕を回す。


「いいよ」


私はドライヤーをオンにしてから、羅依の言う‘あのとき’を思い返した。


ホテルの一室で父と兄に会った日、最後の最後にタクが言ったんだ。


「下世話な話をして申し訳ないけど、小松さん。俺、ケガをした直後の才花ちゃんと会うのと同時に木村親子、父と娘ね、に会ってんの」

「ああ、聞いてる」

「でも羅依も俺も今日までに叔母さんに会ってない。まあ、俺はいいよ。でも羅依も才花ちゃんも会ってない。どうも釈然としないところで、さっきの別途生活費のことを聞いたわけ。それ…用途なんかは大丈夫なの?」

「第三者から見れば、そう思うだろうね」


父はタクから私に視線を移しながら


「でも、私にすれば茂美さんには感謝するばかりだよ」


大丈夫だという風に小さく頷いた。


「才花ちゃんへの生活費を使い込まれても?」

「才花には不自由なく、他の子を羨ましいと思うことないほどのことをしてくれていた。才花の生活費にもちゃんと使ってくれていたのだから不満はないんだ。才花が毎日同じ服を着ているとか、そういうことならば許せないけれどそうではなかった。彼女は才花のダンスの送迎から食事、私が出来ないことを十分にやってくれたよ」

「どうやって分かるの?」

「たまに通学路を覗けば分かるし、茂美さんのスーパーに行く回数やかごの中身でちゃんと料理してることは分かる。キッズやジュニアの大会に才花がちゃんとエントリーされているかを見れば、ダンスも続けさせてもらっているわけだ」

「…ひどいストーキングだね、小松さん」

「何も私一人がやったわけではないよ。組員を使ったりしてね。才花のランドセル、ゴールドベージュで可愛いかったね。髪もいろいろと可愛くしてもらって…」

「ちょっと…小松さん。だんだんヤバい人だって」

「ははっ、とにかく…茂美さんの金の使い方は彼女の自由。才花が不自由なく、安心して生活させてもらっていたのだから感謝しかない」

「私も、お父さんと同じように思う…しーちゃんは食事に気を配ったり、本当によくしてくれたの。感謝してる」

「じゃあ、じゃあ、じゃあさ、二人の気持ちもよく分かるから金のことは置いておいて、俺が釈然としない部分は小松さん、どう思う?」

「それは予測でしかないけれど、彼女は誰かの世話をすることに長けてるのか、好きなんだろうね。それに全力。今はその娘の世話、もうすぐペットでも飼うんじゃないかな?誰かを世話していたい人、そんな気がするね」

「親父がそういうのなら、彼女の性格はそうなのでしょうが、才花が家を出て、親父からの入金がストップして…稼ぐ旦那を探したようにも思えますね」


お兄ちゃんがそう言った時、私は木村の家がお金持ちだと聞いていたけれど、そこで何も伝えなかった。

それがしーちゃんならいいんだ。


でも、父や兄と会ったことは言わないでおこうと思ったんだ。

もし、父に何かを要求するなんてこと…ないだろうけれど、もしかしてあったら……私はしーちゃんと会えなくなってしまうもの。

だから伝えていない。


そして今日の様子。

羅依が言うように距離を間違わないようにしよう。


「はい、これでいいんじゃないかな?」

「いい。交代」

「お願いしまぁす」


私が鏡に向かって座ると


「こっち」


羅依はくるりと私の向きを変え、自分がやっていたように私の腕を羅依の腰に回すように一本ずつ置く…これは…顔を埋める位置が…バスタオル越しに電柱立ってますけど…

Kingの寵愛 ~一夜のお仕事だったのに…捕獲されたの?~

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