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臣桜
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上野文
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私たちが今回旅行している紀伊半島には、和歌山県、奈良県、三重県がある。
中心部には紀伊山地があり、その中に先ほどの熊野の山々や北のほうには桜で有名な吉野山もある。
実質火山はないそうだけれど、温泉地が多い場所でもある。
私たちは大まかに、Uの字になった半島を左上からスタートして、グルッと先端の潮岬を通って、折り返しの途中で那智大社をお参りし、さらに右上付け根のほうにある志摩半島付近にいる。
志摩半島と言うと海のイメージが強いけれど、伊勢神宮は内陸部にある。
近くには伊勢志摩国立公園があり、少し北に行くと緑の多い地帯を抜けて平野部になり、伊勢市や少し離れた場所に牛肉様で有名な松阪市がある。
伊勢神宮は豊受大神宮と呼ばれる外宮、皇大神宮と呼ばれる内宮からなっていて、二つ合わせて〝お伊勢さん〟として親しまれている。
けれど伊勢神宮の正式名称は、シンプルに〝神宮〟らしい。
でもややこしいので他の神宮や球場と混同しないために、伊勢の地名を冠して伊勢神宮という通称があるとか。
だから通の人は「伊勢の神宮」と言うらしい。
現在では神社本庁の頂点である本宗となり、総氏神という扱いを受けている。
外宮では衣食住の神様、豊受大御神を祀り、内宮では天照坐皇大御神を祀っている。
さらに〝神宮百二十五社〟と言われ、内宮と外宮の他にも十四の別宮、四十三の摂社、二十四の末社、四十二の所管社があり、これを全部含めて〝神宮〟と言うのだとか。
お参りをする時は外宮から内宮へという習わしがあり、それを外宮先祭というそうだ。
私は地図アプリを見て声を上げる。
「あれー! 外宮と内宮って、結構離れてるんですね! てっきり同じ場所にあるんだと思いました」
「そうなんだよ。俺も最初に来た時、そう思った」
〝伊勢神宮〟とあたかも一つの神宮のように言っているので、同じ敷地内に外宮と内宮があると思い込んでいたけれど、外宮は伊勢市内にある伊市勢駅に近い。
駅からまっすぐ道が通っている外宮参道線を進むと、赤福外宮前店など胸が高鳴るお店があり、外宮がある。
お参りが終わったら伊勢磯部線という大きな道路を通り、車だと十五分程度で有名なおかげ横町のある、内宮に着く事ができる。
まず外宮参拝という事で、私たちは運転手さんに駐車場で待っていてもらい、|火除橋《ひよけばし》を前にする。
「外宮と内宮でもマナーが違っていて、外宮は左側通行、内宮は右側通行なんだ」
「ほえー! 教えてもらって良かった」
勿論、橋の真ん中には例によって看板があり、【左側をお通りください】とある。
「参道の真ん中は正中と呼ばれて神様の通り道になっているから、右か左かどっちかなんだよ」
「あ、それは聞いた事あります」
確かにこの火除橋でも、あえて真ん中には木で段を作って、その上を歩けないようにしている。
「今回の旅行は、本当に御利益がありそうね」
手水舎で手と口をお清めしたあと、ちえりさんがハンカチで手や口元を拭いつつ言う。
「ホントね~。東京に帰った途端、彼ピッピができたりして」
弥生さんが言い、大地さんに「そう簡単かな……」とぼやかれ、脛を蹴っている。
その様子を微笑ましく見ていると、尊さんが言った。
「朱里、今さらだけど柏手はこうな」
そう言って、尊さんは両手を合わせてから右手を手前に少しずらす。
「へえ! なるほど」
私は彼の真似をしてみる。
「神様から見て左側は神聖な方向なんだ。俺らから見ると右側な。参拝する時はお宮の正面に立つ訳だが、そうやって敬意を表して、去る時も右足から下がる」
「うーん……、難しいけど、お宮の右側がビャーッと神聖な光で光っていると思って、そっちに敬意を払えばいいんですね」
「ハハッ、そのほうが分かりやすいかもな。ま、細かい作法みたいなもんだから、間違えていても怒られる事はない」
次に私たちは右手にある、まがたま池を前にする。
屋根のある場所から池を眺める事ができて、正面には正方形の奉納舞台もある。
「左手の建物は〝せんぐう館〟。博物館で、御正殿の一部を原寸大の模型にした物とかがある。二十年に一度、式年遷宮っていうお祭りがあるんだが、ぶっちゃけて言えば社殿とか神様が着る衣の〝御装束〟、刀や楽器、文具とかの〝神宝〟を新しくして、神様に新居に移ってもらうお祭りだ。橋も新しく架け替えるんだよ。その様子とかも〝せんぐう館〟に資料として展示されてある」
「へぇ~! リッチ~! 二十年って言ったら、家電もガタがきますからねぇ……」
私の言葉を聞き、尊さんはクスクスと笑う。
コメント
1件
第855話読了!伊勢神宮めっちゃ詳しくて勉強になったわ。外宮と内宮が離れてるって知らんかったし、参拝マナーも「神様から見て左側が神聖」って朱里ちゃんの解釈、めっちゃ分かりやすくて笑った(笑)。せんぐう館の話も興味深いな〜。みんなで観光してる雰囲気がほんわかしてて、旅情たっぷりやった。次が楽しみ!