テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
非常階段の扉を開けると、冷たい空気が二人を包み込んだ。
誰もいない、ひっそりとした空間。
壁に、何かが書かれていることに蓮が気づいた。
それは、油性ペンで書かれた、古い文字だった。
「…これ、俺の字…?」
そこには、蓮の字で、こう書かれていた。
『奨くん、ごめんね。俺のわがままで、この未来を選んでしまって』
二人は、混乱した。
未来の奨が、蓮を守るために過去に戻ったのではなかったのか?
なぜ、蓮が「この未来を選んでしまった」と書いているのか?
さらに読み進めると、そこには、未来の蓮が奨に宛てた、もう一つのメッセージが書かれていた。
『俺たちの関係が、グループを壊してしまった。奨くんは、リーダーとして、皆を守ろうとしてくれたのに。俺は、奨くんとの愛に固執して、周りが見えなくなってしまってた。だから…奨くんの夢を守るために、俺は、タイムスリップの力を使った。君を過去に戻して、未来を変えようとしたんだ』
奨は、息をのんだ。
タイムスリップの原因は、奨の意思ではなかった。
未来の蓮が、愛する奨と、JO1を守るために、自らの命を削るような思いで、奨を過去に送り込んだのだ。
蓮は、壁に書かれたメッセージを読み終えると、膝から崩れ落ちた。
「俺が…未来の俺が、奨くんを…」
奨は、蓮を強く抱きしめた。
「違う。これは、蓮が俺を守ってくれたんだ。俺たちの愛が、グループを壊す原因じゃなくて、未来を変える力になったんだよ」
二人の愛は、もはや二人の関係だけではなかった。
それは、未来の蓮が、愛する奨とJO1のために、全てを犠牲にしてまで守ろうとした、かけがえのないものだった。
そして、二人は気づいた。
タイムスリップの鍵は、もう未来の奨が持っているのではない。
それは、この非常階段に書かれた、未来の蓮の愛のメッセージだったのだ。