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「うん。俺もちょうど空いてるし行こ」
岬くんは嬉しそうに答え、そのまま僕たちは待ち合わせ時間と場所について話し合った。
駅前の広場に決まり、具体的な時間が決まっていくたびに、僕の胸の高鳴りは増していった。
「あ、あとね!みさきくんにお願いがあるんだけど」
僕は少しだけ意を決して、もう一つの本題を切り出した。
「何?」
岬くんは、僕の言葉を待つように静かに耳を傾けてくれた。
「その…いつも岬くんがデートのプランとか立ててくれるけど、たまには僕がみさきくんのことリードしたいなって思ってて……」
言葉の途中で、僕は不安になってきた。
こんなことを言って、岬くんは嫌がらないだろうか。
岬くんはしばらく黙っていたので、僕の不安はさらに募る。
「み、岬くん…?ダメかな…」
恐る恐る尋ねると
「あっいや全然ダメじゃないよ。むしろ嬉しいし、そーいうことなら朝陽くんに任せようかな」
岬くんの優しい、そして少し照れたような声が聞こえてきて、僕は胸がいっぱいになった。
「ほんとに?じゃあみさきくんが好きそうなカフェとか色々探しておくから、楽しみにしててね……!」
僕の声は、喜びで少し上ずっていた。
「うん、ありがと、土曜日会えるの楽しみにしてる」
岬くんが笑って言ってくれたので、僕も満面の笑顔になった。
その後、他愛もない雑談を少し交わしてから電話を切った。
電話を切った後も、心臓はまだドキドキと高鳴り続けていた。
(よっしゃ……!みさきくんとデートの約束できた…!!)
嬉しさを噛み締めながら、僕はベッドに倒れ込むと、枕に顔を埋めた。
「えへへっ……」と、声にならない喜びが漏れた。
僕はとりあえずスマホで検索してみることにする。
岬くんを喜ばせたい一心で、早速Googleでデートスポットを探し始めた。
まずは、映画の後にゆっくり休憩できるカフェ。
岬くんはコーヒーが大好きだし
美味しいコーヒーが飲めるカフェを探そうと思い
検索窓に【コーヒー おすすめ カフェ】と入力して検索をかけた。
すると、上位に出てきた【月影珈琲店】という名前に、僕の目は釘付けになった。
「あっ…てかよく見たらこのコーヒーショップって確かみさきくんが行きたがってたところだ…!」
以前、岬くんが何かの雑誌でこのカフェの特集を見て、「ここ行ってみたいな」と呟いていたのを思い出したのだ。
場所も、映画館からほど近い。
さらに、キャッチコピーには「美味しいハーブティーが楽しめる♪」と書いてあって
それが僕にとっては決定打になった。
パニック障害を持つ僕にとって、カフェインは避けるべきものだから、ハーブティーがあるなら安心だ。
「よし、ここにしよう」
僕は迷うことなく決め、忘れないようにすぐにスクリーンショットを撮った。
カフェを出たあとは、どうしようかな。
いつも僕のペースに合わせてもらってばかりだし…
できるだけ、岬くんが楽しんでくれそうな場所を盛り込みたい。
でも、人混みに行って体調が悪くなったら、それこそ岬くんに迷惑をかけてしまう。
そう考えると、まだ僕も大丈夫な範囲で
岬くんと二人で楽しめる場所を選んだ方がいいはずだ。
そのとき、ふと頭に浮かんだのはゲームセンターだった。
岬くんとなにか思い出に残ることをしたい、とは毎日のように思っていたけれど
あそこなら二人でワイワイ楽しめて、思い出作りにはピッタリなはず!
と、僕は胸の中で妄想を膨らませた。
「よし、ここに決まり」
そう心の中で独りごちて、再度スクリーンショットを撮る。
これで下準備完了だ。
岬くんが喜んでくれるように
そして僕自身もスマートに動けるように、しっかりと計画を立てておかなきゃだよね…!
そう決意しながら、僕は布団に潜り込んだ。
土曜日のデートが、今から楽しみで仕方なかった。
◆◇◆◇
そして迎えた約束の土曜日。
朝から空は高く澄み渡り、雲一つ無い青空がどこまでも広がっていた。
絶好のデート日和に、僕の心も弾む。
いつもより早く、待ち合わせ時間の20分程前には駅前の広場に着いて、僕は岬くんを待った。
僕は今日のために新しい服を新調してきた。
真っ白なシャツに、落ち着いた色のパンツ。
シンプルだけど清潔感があって、隣に立つ岬くんの邪魔にならないよう
そして僕自身も恥ずかしくないようなものを選んだつもりだ。
広場の片隅で、スマートフォンの画面を鏡代わりに全身をチェックしていると
ちょうど後ろの方から、聞き慣れた優しい声が聞こえてきた。
「朝陽くん、おはよ」
振り返ると、そこにいたのは、いつものように穏やかに微笑む岬くんだった。
「あ、みさきくん!おはよ…!」
その姿を見ただけで、僕の胸はきゅんと高鳴った。
「珍しいね、いつもならオレが先にいるのに。待たせちゃったかな?」
岬くんは、僕の少しだけ緊張した表情に気づいたのか、いつものように柔らかく笑って言った。
「いや全然……!今来たばかりだよ」
確かに普段はどちらかというと岬くんが早く来るほうだけど、今日は僕がリードする特別な日だ。