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岬くんより先に着いて驚かせてあげたいという気持ちもあり、いつもより早起きしたのだ。
「き、今日はみさきくんが好きそうなとことかたくさん考えてきたから…!その、楽しみにしてて欲しいな」
僕は緊張しながらも、精一杯の気持ちを込めて伝えた。
岬くんは一瞬驚いたような表情を見せた後、すぐに満面の笑顔になった。
「ふふっ、朝陽くんなにしてくれるんだろって期待してたから、今から楽しみにしてるね」
そう言ってくれる岬くんの言葉に、僕の胸はさらに高鳴った。
今日のデートは、きっと成功させる!
そんなことを意気込んだ。
◆◇◆◇
しばらく歩いて映画館に着くと、入り口にはすでに多くの人が集まっていた。
休日の昼下がりということもあり、ロビーは熱気と期待に満ちたざわめきで溢れている。
大きなポスターが飾られたロビーでは
今から僕たちが観る予定の「スペース・ディメンション」の、迫力ある宇宙船のビジュアルが目を引いた。
平日の夕方でも思った以上に人が多くて、映画の評判の良さが伺える。
「すごい人だね……」
僕が思わず呟くと、岬くんはニッと口角を上げて笑い
「人気だって噂だったからね~」と言って
慣れた様子でパンフレット売り場に向かっていった。
そのスムーズな動きに、僕は感心するばかりだ。
(なんか、こういうところでスムーズに動けるところが岬くんっぽい…僕も頑張らないと)
と、心の中で呟きながら、僕も慌てて岬くんの後を追いかけた。
映画が始まるまでの間に、売店で飲み物やポップコーンなどを買っておくことにした。
甘いキャラメルの香りが、売店周辺に漂っている。
「朝陽くんどれにする?」
岬くんが、ずらりと並んだドリンクの棚を指差して尋ねた。
「えっと……じゃあこれで」
僕は、無難にオレンジジュースを選んだ。
「オッケー。ポップコーン何味がいい?」
「えっと、キャラメルがいいかな…みさきくんは?」
「あ、俺も同じこと思ってた」
「よかった」
同じ好みに、僕は嬉しくなった。
僕が飲み物を選ぶ間も、岬くんはテキパキと必要な物を買いそろえてくれる。
こういう時、やっぱり男らしくて頼りになると思う反面、つい頼ってしまう自分が情けなくもなる。
でも、今日は僕が岬くんをエスコートしなきゃいけないんだ。
そう心に言い聞かせて、僕は財布からお金を出して支払いをした。
「あっ……お金出すよ」
岬くんが、財布を取ろうとしたのを止めるように
「今日は僕が奢る。いつもデートプラン考えてもらったり奢って貰ってるし……!そのお礼だから」
そう伝えると、岬くんは少し照れくさそうにしながら
「朝陽くんがそういうなら……ありがたく」と言ってくれたので、僕はホッと胸を撫で下ろした。
(よし……これで一歩前進)
小さな達成感に、僕はこっそりガッツポーズをした。
そんなこんなで、いよいよ映画鑑賞中のこと。
映画館に入ると、すでに座席は半分ほど埋まっていて、独特の静けさと期待感が漂っていた。
僕たちは真ん中あたりの列に二人並んで座ることができた。
暗くなるにつれて、ざわめいていた周りの人達も静かになり
スクリーンが明るくなると同時に、上映開始のアナウンスが流れる。
スクリーンには、迫力のある宇宙船の映像と共に、重低音の効いた音楽が流れ始めた。
まるでそこにいるかのような臨場感に、僕は思わず息を呑む。
ワクワクしながらスクリーンを見つめていると、横から何か温かいものが触れた気がして
視線を移した。
そこには、僕の右手をそっと握りしめている岬くんの手があった。
その突然の行動に、僕はドキッとしてしまい
反射的にその手を握り返してしまう。
(こ、こんなとこで……でも嬉しい…っ)
心臓がドクドクと音を立てる。
その状態のまま、僕はスクリーンに集中するのだった。
映画の内容は、宇宙戦争を舞台にしたSFアクションもので
迫力満点なだけでなく、ストーリー性も高く、ぐいぐいと引き込まれる面白さだった。
特に終盤の戦闘シーンでは、ハラハラさせられ、つい前のめりになってしまうほど夢中になったのだ。
あっという間に時間が過ぎ
意外に面白かったなあ、と、深い余韻に浸りながらエンドロールが終わり。映画館を後にした。
◆◇◆◇
「いやー、来てよかった」
岬くんが、満足そうに伸びをした。
「だよね、特にあのラストバトルのシーンとかすごかったよ!」
僕も興奮冷めやらぬといった様子で答えた。
「朝陽くんもSFものとか興味はあったんだ?」
岬くんが、僕の顔を覗き込むように尋ねた。
「ど、どっちかっていうと、今日好きになったかも?意外と面白いなって…」
僕は少し照れながら答えた。
「そりゃ嬉しいな」
岬くんは、僕の言葉に嬉しそうに微笑んだ。
そんな風に映画の感想を話しながら、僕たちは映画館を出た。
すると目の前に広がるのは、たくさんの建物やお店がひしめき合い、賑わう街の景色だった。
「あ……えっと、この辺りに前にみさきくんが行ってみたいって言ってたコーヒーが美味しいカフェがあるんだ、そこ行ってみない?」