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「ほい、着いた。」
『はい !』
お泊まり なんてことを考えたら普通にしてられないけど、あんまり不自然だと逆に先生を困らせちゃうから。
あえて、普通に接するの。
「予約してた渡辺でーす」
『渡辺…』
「ん?どーしたよ」
『いやっ!何も』
渡辺 で予約してたことが嬉しかった。
⋯まだ、姫野だけど。
「えっ、なべじゃーん!」
「なぁ、あくまでも客だから」
深澤先生が友達感覚で渡辺先生に話しかけたら、ちょっと不機嫌そうに笑ってそう言った。
「じゃ、ご案内しまーす」
でも、こんな友達いーな とも思っちゃう。
『うわぁ、景色いい。』
「ほんとだなぁ」
「じゃあごゆっくり」
「ここ何回か来たことあんだけど、この部屋が1番いーの。」
『たしかに…綺麗です』
「姫野は、こーゆーとこ来たことない?」
『ないんですよ、親早くに亡くなってるので』
「よかった。」
『えっ?』
「だって、俺が1番なんでしょ。」
『ふふっ』
先生の、一つ一つの言葉がドキドキしちゃう。
・
温泉に入って、着替えて、ご飯になった。
「はーい、入るよ」
『あ、深澤先生。』
「あれ?なべいないの」
『渡辺先生、お手洗いに』
「え、まだ渡辺先生って呼んでるの!?」
『いや、そりゃあ』
全然、気にしたことなかった。
だって、違和感なんかないんだもん。
渡辺先生 は 渡辺先生。
深澤先生 は 深澤先生。
「そろそろ変えてみたらー?付き合ったんでしょ。」
『えっ、なんでそれを…』
「まぁ、秘密ー 笑」
深澤先生も、渡辺先生と同じような悪魔みたいな笑い方をする。
でも、渡辺先生の方がやっぱ好き。
「なべと話してみなー」
『はぁーい』
とは言っても、
渡辺先生のこと、他の呼び方って⋯
「おぉ、料理きてんじゃん」
深澤先生が居なくなって、1人であれこれ考えてたら渡辺先生が戻ってきた。
「食べるか」
『ですね』
いただきます。
『あの』
「んー?」
『渡辺先生って呼ばれるの、嫌ですか?』
「あー、たしかに。付き合ったもんな」
「そろそろ変えるか」
よかった。
勇気をだして言ってみたら、先生は納得したように頷いてくれた。
「〇〇でいーよなっ?」
『⋯』
「姫野?」
『あっ、すいません』
そんな急に、名前で呼ばないでよ。
不意に、ドキドキしちゃうでしょ。
「で、お前はなんて呼んでくれんの」
え、どーしよう。
『⋯渡辺、さん、』
「ふはっ、なんだそれ」
自分でも、言ってしまってからおかしかった、と思ってしまった。
先生は、〇〇って呼んでくれるのに
私は、渡辺さん って。
「翔太 でいーよ。」
『えっ。それは…』
「あ、嫌だったか」
『そんなことは、ないです』
それでも、まだ翔太 は早すぎる。
『⋯翔太くん』
「え?」
『翔太くん って呼んでいーですか』
「呼ばれたことないなぁ、そんなこと」
『じゃあ、変えます』
「いーよ。翔太くん で」
「〇〇が特別な。」
『⋯はい!』
また、狙ってきたよ。
私の心。
コメント
6件
みなの作った夢小説毎回最高! 本当に憧れる🥺✨ 神作品すぎなー!🤔