テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
931
1,151
ゆき
614
勇斗「……そっか、怖かったんだな」
仁人「……っ」
勇斗「自分の力で誰かを傷つけるかもしれないってずっと考えてたんだな」
責めることも、否定することもせず、佐野はただ吉田の言葉を受け止めた
勇斗「でもさ、仁人」
少しだけ腕を緩め佐野は吉田の顔を覗き込んだ
勇斗「まだ、何も分かってないだろ?」
仁人「……え?」
勇斗「仁人の能力がどこまでできるのかも、どうすれば暴走を防げるのかも。俺たち、まだちゃんと調べてないじゃん」
「だったら、一緒に調べようよ」
吉田は驚いたように目を見開いた
勇斗「もちろん、いきなり能力を使えなんて言わない。仁人が怖いって思ってるのに無理やり使わせるつもりもないよ」
「少しずつでいい。仁人が大丈夫だって思えるところからやっていこう」
仁人「……でも、もし俺がまた暴走したら?」
勇斗「そのために、俺たちがいるんだろ?」
佐野は当たり前のことを言うように笑った
勇斗「俺だけじゃない。太智も、柔太朗も、舜太もいる。みんなで考えればいいんだよ」
「それに、俺だって空間を移動する能力しかないけど使い方を間違えたら危ないのは同じだし」
仁人「……自分で言うんだ、それ」
勇斗「えっ、そこ!? もっと感動するとこじゃない!?」
仁人「……ふっ」
思わず小さな笑いがこぼれた
そんな吉田を見て佐野もほっとしたように笑う
けれど、すぐに真剣な表情へと戻った
勇斗「仁人、俺は仁人の能力がどんなものでも仁人のことが好きだよ」
「能力が使えなくたっていい、 怖くて今は何もできなくたっていい」
「だから、自分の能力を怖がってる自分まで、嫌いにならないでほしい」
吉田の目が揺れた
勇斗「俺は仁人にみんなを守るために無理してほしいわけじゃないんだ」
「仁人自身もちゃんと守ってほしい」
そう言って佐野はもう一度吉田を抱きしめた
勇斗「一人で全部背負わなくていいから、俺にも半分持たせてよ」
仁人「……半分ってどうやって持つんだよ」
勇斗「えーっと……一緒に悩む?」
仁人「なんだよ、それ……」
呆れたように言いながらも吉田は佐野の制服をそっと握った
まだ怖い
自分の能力を使うこともまた誰かを傷つけてしまうことも
その恐怖が今すぐ消えるわけではない
それでも
仁人「……勇斗」
勇斗「ん?」
仁人「……一緒に、考えてくれる?」
勇斗「もちろん!」
迷いのない返事だった
勇斗「何があっても一緒に考える、 仁人がもう大丈夫って思えるまで何度だって付き合うよ」
仁人「……そっか」
吉田は佐野の胸に顔を埋めた
仁人「……ありがとう」
その声はほんの少しだけ震えていた
けれどさっきまでの震えとは違っていた
まだ、能力への恐怖は消えていない
それでも今は一人じゃない
自分の隣にはどんな時でも手を伸ばしてくれる人がいる
その事実が吉田の心をほんの少しだけ軽くしてくれた
――いつか、自分の能力を怖がらずにいられる日が来るだろうか
その答えはまだ分からない
けれど、その日を迎えるための一歩を
吉田仁人は佐野勇斗と一緒に踏み出そうとしていた
コメント
2件

💛さん良かったね( *´꒳`*)
読み終わった……良かったなあ。勇斗の「半分持たせてよ」ってセリフがすごく刺さったわ。仁人の恐怖を否定せずに「一緒に調べよう」って寄り添う感じ、ちゃんと仁人のペースを尊重してるのが伝わってきて温かい気持ちになった。戦闘描写がなくても、こういう心のやりとりだけでグッと来るの、好きだわ。次が楽しみすぎる🔥