「へぇ、じゃあ俺にもチャンスはあるってことでいーの?」
「チャ、チャンス…?」
「そ、チャンス。だって彩歌彼氏いないんでしょ?だったら俺を彩歌の彼氏候補にしてよ」
いよいよ確実にターゲットにされてしまった…てか、北斗くんとは付き合ってないって言ったけど彼氏いないなんて言ったっけ。
「私、彼氏いないっていつ言いましたっけ」
「え、いるの?」
「いませんけど」
「じゃあそれ聞く必要あった?笑」
「ないですね、すみません」
「で、いいの?俺が彩歌の彼氏候補になっても」
「ま、まぁ」
「よっしゃ。絶対振り向かせてやるから」
「ねぇ、北斗くんどーしよ」
「なんだよ、急に準備室来たと思ったら」
「だってさぁ、あの魅惑の悪魔がだよ?私に『彼氏候補になってもいいか』って。どうせ田中先輩のこと好きになってもすぐ捨てられるんだよ?」
「ちょ、ちょっと待って?捨てられるってどういうことだよ」
「北斗くん知らないの?田中先輩の噂」
「聞いたことない。つか、生徒の噂なんて普通誰かが教えてくれないと耳に入らないからね」
「そっか、松村せんせー無愛想だから人寄ってこないもんね」
「この流れで松村先生って言うなよ」
「だって北斗くんと松村先生って同じようで違うからね?」
「まー、一理ある…か。で?捨てられるってのはどういうことだよ」
「もう彩歌さん優しいから教えてあげるわ。田中先輩って、学校1チャラいって有名で、すぐ女を変えてるんだって。いざ女が先輩のこと好きになったら体の関係だけ持ってすぐ切り捨てんの。被害者は2桁超えてるらしいよ」
「それ、上の人にバレたら停学レベルじゃん」
「確かに。で、どうしたらいいんだろ」
「でもそれただの噂に過ぎないんだろ?誰かが見たって訳でもやられたって確かに言ってる人がいる訳でもないんだろ?」
「言われてみれば誰が言ってたとかそういうの知らないかも」
「1回田中を信じてみたら?それで結局噂が本当なんだったら俺のとこ来な。たっぷり抱いてやるから」
北斗くんはニヤッと笑いながら話す。
「今抱くって言った?それ、社会的問題になるよ?最悪免許剥奪されちゃう」
「ばか、抱くってそういうことじゃねえよ。ハグだハグ」
「いや今の私悪くないよね?だからばかって言われる筋合いないよね?」
「いや勘違いした彩歌が悪いでしょ」
「いーや、勘違いさせるような発言した北斗くんが悪い」
「つか、勉強しなくていいの?来週テストだけど」
話をそらされた。北斗くんは自分が都合悪くなるとすぐに話をそらすのが癖。
「そこは大丈夫。学年1位の私を舐めないでくれる?」
「そうやって調子こいて失敗しても知らないぞ?特に今回の数学は難易度高めだから」
「うーわ、出たよ松村先生。ほんっと松村先生嫌い」
「とか言っときながら今も俺と話してんじゃん」
「北斗くんはいーの。私が嫌いなのは松村先生なの!」
「同じ人だから、それ笑」
いつもと同じ話のくだりをして、教室を出ようとしたら北斗くんが引き止めた。
「そういえば、竣(しゅう)って今何してんの?」
「連絡とってないの?」
「大学まではちょくちょく会ってたんだけどな。社会人になってからお互い忙しくて」
「竣くんは今確かドラマ撮ってるって言ってたような」
「てことは番組ディレクターとか?」
「ううん、アイドルだよ」
「え?アイドル?」
「うん。知らなかったの?」
私の兄の竣は中学の頃からアイドルをやっている。今はCDデビューを果たして、ロクーンズのメンバーだ。
「いやぁ、俺あんまテレビとか見ないし。そっか、アイドルだったんだ…」
「どうやって社会情勢とかの情報採取してんの?笑」
「基本ネットニュースだな」
「じゃあ芸能人とか全然知らないの?ってかこの前ロクーンズのグッズ買った時気づかなかった?」
「全く。包装とか見てなかったから」
「ほんとに友達なのかね」
「ちょっと俺でもわからなくなってきたわ…」
「じゃあ戻らなきゃ。話聞いてくれてありがとーね」
コメント
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フォロー・初コメ失礼します! 物語読ませていただきました! 書き方とか表現とかすごい素敵です✨ 続き楽しみにしてます🎶