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そりゃそうだろうね、と言って坪井が軽く頷いたのを目で追った後「優里から聞かされてた話だけど」
そんなふうに前置きしてから芹那は再び話を戻した。
「真衣香ちゃんって普段から仲良くしてるの優里くらいなんでしょ? その優里遠ざけちゃえば行動力も気力も失うだろうし、高確率で家に引きこもっててくれるよねって思ってさ」
「何かあっても、ここまで連れ出されてたら物理的に俺は立花のとこに飛んでけないしね」
穏やかな声で、どの言葉も決して笑顔で話す内容ではないのだけれど。奇妙な空気を纏わせて続く会話は正直に言えばかなり面倒だ。
不本意な笑顔も疲れるが、坪井の努力も虚しく芹那の楽しそうな声はまだまだ続くようで。
「優里って馬鹿だもん。話の合間合間で関係ない真衣香ちゃんの話するの。ずっとマンションのオートロックが壊れたままだぁ、心配! なんて、私にはすっごく楽しい情報だったな」
またもやうっとりとした表情を浮かべる。芹那がその表情を見せるとき、穏やかではないものを感じる気がするのは間違いではないはずだ。
「立花のとこには隼人がいるよ。ややこしくならない程度に相手してもいいし、逃げてもいいよって言ってあるから。あいつのことだし平和に逃げてドライブでもしてんじゃん?」
「そうだよねぇ、じゃなきゃそんなに余裕なわけないよね、坪井くんが」
穏やかな声とは裏腹に芹那の声は酷く冷ややかなもので。
苛立っているのかタバコを灰皿にきつく押しつけ、続けざまにもう一本新しいものを咥えた。
「真衣香ちゃんのこと大事にしたいんだろうなぁって、聞いててわかったもん。だから坪井くんの悲壮感たっぷりの声聞いてみたくなっちゃって」
「へぇ、嫌な趣味だね」
「うん。私を助けてくれなかった唯一の男の人だもんね」
あはは、と響いた高笑いに胸が痛くなる。同時に怒りも沸いて。過去と現在、相反する感情が心臓を分割するから。
苦しくて仕方ない。
「坪井くんって真衣香ちゃんと何回エッチしたの? それ以上の回数犯されちゃえばいいなぁって三人使ったのに。ほーんと、残念」