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双子の兄ができました

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双子の兄ができました

4 - 第4話「拗ねた兄と、傘の中の距離」

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2025年06月21日

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放課後、空が急に暗くなった。

教室を出るころには、ぽつぽつと雨が降り始めていて、俺は思わず空を見上げた。


(やば、傘…持ってきてない)


スマホを開いて、家にメッセージを送ろうか迷っていたら、

「おーい」

階段の下から、見慣れた明るい声がした。


陽翔さんだ。


「傘持ってないんでしょ?迎えに来た~」

そう言って、にこっと笑って大きめの傘を差し出してくれた。

俺は思わず顔がほころぶ。


「ありがとう…助かった」


「じゃ、帰ろっか♪」


並んで歩く道。傘の下、雨の音。

ふたりの肩が少しだけぶつかって、俺は照れて目をそらした。


(なんか…兄弟って感じじゃないな)


そんなことを思っていた。


──家に帰ると、奏さんがいた。


リビングで静かにテレビを見ていたけど、

俺たちの「ただいま」に返事はなかった。


「……奏?」

陽翔さんが呼ぶと、奏さんはちらっとだけこっちを見た。


「……雨、強かったんだな」


それだけ言って、立ち上がって自分の部屋に戻っていった。


「……あれ、なんか機嫌悪い?」


陽翔さんが小さく笑って言う。


でも、俺は思ってた。


(傘の下の2人を、奏さんは窓から見てたのかもしれない)



🕰️ 数日後、雨がまた降った日。

陽翔さんは委員会で帰りが遅い。

俺はひとりで教室を出たけど、玄関で見覚えのある姿に気づいた。


「……奏さん」


「……帰んねぇのか」


「傘、また忘れて」


そう言うと、奏さんは無言で傘を差し出してきた。

「入れよ」

ぶっきらぼうにそう言って、俺の方に傘を傾けた。


ふたりきりの傘の中。

雨の音だけが響く。


「……陽翔といると、楽しそうだな」

ぽつりと、奏さんが言った。


「え?」


「別に…嫉妬とか、そういうんじゃないけど」


「――嫉妬、してたの?」


一瞬、奏さんの足が止まった。


「……してたら、迷惑?」


その声は、いつもの奏さんとは違って

少しだけ弱くて、でもちゃんと俺に届いていた。


「……ううん、迷惑なんかじゃない」

「なんか、嬉しかった」

俺はそれだけ言って、そっと傘の持ち手を一緒に握った。


奏さんの手が、少し震えていた。


双子の兄ができました

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