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双子の兄ができました

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双子の兄ができました

5 - 第5話「触れた指先、揺れる気持ち」

2025年06月21日

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雨の音が、静かに傘を叩いていた。


俺と奏さんは、相合傘の中。

狭い道を並んで歩くその距離は、たったの数十センチ。

なのに、心臓の音だけが不自然に大きかった。


握った傘の持ち手。

そこに、もうひとつの手が重なる。

少し冷たい。けど、それはすぐに、じんわりとあたたかくなっていった。


「さっきの…本気だった?」

小さく俺が尋ねると、奏さんは黙ったまま前を見た。

でも、ほんの少しだけ頷いたように見えた。


「陽翔さんと仲がいいの、嫌だったの?」


「嫌…っていうより……」


声が濡れていた。雨のせいじゃなかった。


「見てるのが、苦しかった」

「お前が、俺じゃない誰かと、楽しそうにしてるのが」


足が止まった。


ふたりの肩が少しぶつかったまま、俺は振り向いた。

奏さんは俺を見ていなかった。

でも、唇を噛むその表情が、何よりも雄弁だった。


「奏さん」

「俺、陽翔さんと話すの、楽しかったよ。でも――」

「奏さんの言葉が、ずっと心に残ってた」


「なんでだろうね」

「俺、ずっと奏さんのこと考えてた」


雨が止む気配はなかったけれど、

俺たちの距離は、それよりも早く縮まっていた。


握られた手に、少しだけ力がこもった。


「……俺さ」

「兄弟になったはずなのに、今、一番お前のことを“家族じゃない”って思ってる」

「……こんなの、ずるいかな」


「ずるくないよ」

「俺も同じこと考えてた」


その言葉のあと、ふたりは黙ったまま歩き出した。


でも、もう――

手は離さなかった。


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