テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
なっちゃん
849
泡沫
23
主が此処へ来てから、早くも数ヵ月がたとうとしていた。今日も主はこちらの世界にこられて、今は庭で二階の執事たちの訓練をムーと共に見学している。
とても楽しそうにしていたが、依頼の話をしなければいけないので、私は主に声をかけた。
「主様。見学をなさっていたのですか?」
『そうだよ、皆はやっぱりすごいね。武器だって十分重いはずなのにあんなふうに動けるなんて…才能と努力の賜物だね。』
ムーを撫でながらそういう主はとても嬉しそうに微笑んでいる。そして、
『ところでベリアン。なにか用があったから来たんじゃないの?もしかして新しい依頼?』
と私に問いかけた。さすが、主は鋭い。ここ数ヵ月で、この世界の事や私たち執事のことをだいぶ理解してきている。
「えぇ、そうです。クロバナー家より新しい依頼が来ましたので、食堂へご案内しようと思いまして。よくわかりましたね。」
『だって、依頼のときはだいたい私が他の執事といないときにベリアンが声かけてくれるから、そうかなと思って。ありがとう、それじゃあ食堂に行こうか。』
「はい、ですが私は2階の皆さんにも声をかけてからいくので、先に向かっていていただけますか?ムーちゃん、主様をお願いしますね。」
その後2階の執事を食堂に向かわせ、執事達と主が揃った食堂に私も向かった。
「皆さん、集まっていただきありがとうございます。今回グロバナー家より新しい依頼が来ましたのでお伝えさせていただきますね。」
この依頼というのは、グロバナー家主催の舞踏会への参加だ。参加といっても、私たち執事はこの会の警備のためなのだが…主には今回招待状が届いている。主がこの世界に来て始めての舞踏会だ。そのため気合いをいれて依頼に取り組んでほしいと執事たちへお願いし、主に参加をしてもらはなくてはならないことを伝えた。
『分かった。参加するよ。皆が頑張って依頼をしているときに私だけくつろいでいるんじゃね…まぁ、舞踏会の参加ならあまり変わらないかもだけど。』
「主様!、ありがとうございます。舞踏会まではまだ少し時間がありますので、それまでにワルツやマナーを覚えなくてはですね。我々がサポートしますので、あまり不安には思われなくて大丈夫ですよ。」
きっと主は突然の舞踏会の参加を不安に思っているだろうと考えての発言だったが、主は申し訳なさそうに顔を赤らめて言った。
『えっと…驚かないで聞いてほしいんだけど、私、ワルツは習ってたことがあって一通り踊れるし、マナーも興味があって一からやり直した経験があるから大丈夫だと思う。でも久しぶりで自信なくて…確認してもらっても良いかな?』
主が話し終わると、その場にいた全員が驚きを隠せず、ざわめき始めた。
「すごいです!やっぱり僕の主様は天才ですね!」
「クフフ、主様はワルツが踊れるのですか?それでは是非私と一曲お願いしたいですね。」
「やっぱ主様はすごいっすね。俺も鼻が高いっす。」
あちこちで主をほめる声が飛び交う。そしてそれに比例して主の顔がだんだん赤くなっていく。
「皆さん、驚くのはわかりますが、主様を困らせてはいけませんよ?」
「ですが主様、いまの話は本当ですか?正直な話、私もかなり動揺しているのですが…」
『本当だよ。でもさっき言ったとおり久しぶりだから、ちょっと自信ないの。だから一応教え直してもらっても良い?』
この日からマナーを私に、ワルツを地下の執事たちに教わった主だったが、どれも完璧だったという。
次回は舞踏会当日のお話です。お楽しみに♪
コメント
1件
読み終えました。第2話、とてもほっこりしましたね。主人が「実はワルツもマナーも既に出来る」と明かす場面、驚きつつも素直に喜ぶ執事たちの反応が可愛らしくて、つい微笑んでしまいました。ベリアンが先回りして不安を和らげようとする気遣いも優しくて好きです。主と執事たちの信頼関係がじわじわ伝わってくる、あたたかいエピソードでした。次回の舞踏会、楽しみにしてます!