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日曜日、予定より少し早めにやって来た田所さんと共に出掛けてしまった竜之介くん。
彼が出掛けてしまう事を知ってからというもの機嫌を損ねて不貞腐れている凜の相手をしながら家事をこなしていると、インターホンが鳴った。
モニターで確認すると、そこには竜之介くんを送り終えて戻って来た田所さんの姿があった。
「田所さん? あ、今開けますね」
何か忘れ物でもあったのかと急いで玄関を開ける。
「あの、どうかなさいましたか?」
「いえ、お二人にお昼ご飯を届ける事と、機嫌を損ねた凜様のお相手をする様、竜之介様に頼まれましたので。上がっても宜しいでしょうか?」
「あ、はい、どうぞ……」
どうやら竜之介くんが彼に凜の相手を頼んだらしい。
凜を見ていてくれる人がいるのは有難いけど、田所さんと顔を合わせるのはもの凄く気まずい。
けれど、竜之介くんの気遣いでもあるし、お昼まで持って来てくれたとあっては追い返す訳にもいかず、私は彼を招き入れた。
「凜様、竜之介様が戻られるまで私がお相手をしても宜しいでしょうか?」
「……たどころが? うん、いいよ……」
よく会っている相手と言っても田所さんはいつも業務を淡々とこなすだけで、凜自身彼に対して苦手意識があるのか、何だか少し遠慮しているようだったけれど、お昼を食べ終え積み木やブロックで一緒に遊んでいるうちに、だんだん田所さんに心を開いていく凜。
そんな凜の様子に安堵しつつ家事を片付けていたのだけど、そこで思わぬ光景を目撃する。
いつも無表情な田所さんが、凜相手に凄く優しげな表情を向けていたのだ。
笑うというより微笑む感じではあるけど、それは心の底から楽しんでいるようにも見受けられる。
(ああいう表情も、するんだ……)
思いがけない彼の新たな一面に、少しだけ苦手意識が薄れた気がした。
とは言え、恐らく彼は竜之介くんのご両親同様私の事をあまり良く思ってはいないだろうし、この前の話の事もあるので気まずいのは変わらない。
それから暫くして、昼寝をしてしまった凜を部屋に寝かせて戻って来ると、田所さんが紅茶を淹れてくれた。
「……あの、凜の相手をしてくださってありがとうございます」
「いえ、私はあくまでも竜之介様の指示に従っただけですのでお気になさらず」
二人きりになるとやはり相変わらずというか何と言うか、素っ気なく冷たい感じがひしひしと伝わってくる。
ローテーブルを挟み、向かい合わせでソファーに座る私たち。
会話が途切れて無言の時が訪れると、気まずい空気が流れていく。
お互い相手の出方を窺うような感じでいると、
「――亜子様、この前のお話の続きをしても、宜しいでしょうか?」
このままでは埒が明かないと思ったのか、田所さんの方から話を切り出してきた。