私
には関係ない話だった。興味もない。
あの子がどうであろうと、私の生き方が変わるわけではないから。
他人に興味はないけれど、自分に害がなければそれでいい。
私はただ平穏に生きられればよかった。
それが叶わないなら……そうね。
私が生きる意味なんてないわよね? だから、私の人生は無意味なものになる。
だけど、私は生きている。
なんのために? わからない。
わからないけど、とりあえず生きてみることにする。
私は……ただの人形にすぎないのだ。
人間ではない……。
だから、こんなにも空っぽなのだ。
私が生きている意味なんてない。
それなのに何故……
生きていかなければならないのか。
どうして私は存在している? わからない……。
それでも生きろと言うのならば……
どうか私を殺してくれ。
そうすれば、楽になれるから。……ああ、やはり駄目なのか。
あの人が居なければ何もできない私に、 生きる価値があるとは思えない。
けれど、それは許されないらしい。
私はずっとここに居るしかないようだ。…………誰か。
誰でも良いのです。
私を見つけて下さい。
助けてくれるなら、何でもします。
だからお願いです。
早く迎えに来てください。
そうでなければ、私はいつまでもこのまま……。
『あーちゃん』
どこ?どこにいるのですか? 私は此処にいます。
貴女がいなくては、私は存在できません。
『さっちゃん!』
待っていてください。今すぐ行きます。
何処であろうと必ず探し出して見せましょう。
ですから、少しだけ我慢していてくださいね。
それまでは、決して離れません。
『ごめんなさい!許してぇ~!!』
大丈夫ですよ。怒ってはいません。
ただ、心配だっただけです。
だって貴女のことが大好きだから。
愛しています。私の全てをかけて、貴女を愛しています。
私の傍にいてくだされば、それでいいんです。『…………さっちゃん?』それは、幼い少女の声だった。
―――またあえたね! 嬉しくて仕方がないというような声音。
ふわりと柔らかな風に包まれたかと思うと、 目の前にいたのは、白いワンピースを着た幼女だった。
背中から生えた真っ白な翼以外は、どこから見ても普通の子供にしか見えない。
けれど、彼女は知っている。
それが人間ではないということを。
そうして、自分が死んだのだという事実も。
だから不思議ではなかったのだ。
むしろ、当然のことだとさえ思っていた。
天使は人間の魂を回収して天界へ送る役目を負っているらしい。
しかし、何らかの理由で天国行きを免れてしまった場合は、地上に留まることになるそうだ。
そして今ここにいるということは、自分はそうなってしまったということだろう。
(ああ、わたしはやっぱり死んだのか)
『さっちゃん』というのは生前の名前だ。
友達からはいつもそう呼ばれていた。
家族にも同じように呼ばれていたので、違和感はない。
それにしても、こんなにたくさんの悪口があるなんて! まるで悪い魔女みたいね!! ああ、ごめんなさい、冗談よ。
だって私もあなたのことが大好きだから。
えーっと……つまり、あなたみたいな人のことをいうんでしょう? ちょっと違うかなぁ。
そうよね、私ったらいつも間違えちゃうわ。
きっとあなたに会うまで知らなかった言葉ばかり使うから、まだ慣れないのかしら。
あなたは優しいものね。
でも、たまにすごく意地が悪いときもあるけど。
それはそれで、いいと思うけれど。
そういえば、前に私が『あなた』のことを話したとき、「それじゃあ、まるで恋人同士のようですね」って言われたことがあるんだけど……あれってどういう意味だったの? よくわからないのだけど。
ふぅん、そうなの。
へぇ、そういう風に思う人もいるのねぇ。
じゃあ、私たちは本当に恋人同士になれるかもしれないわね。
今度試してみる? 冗談よ。
さて、そろそろ仕事の時間かしら。
また会いましょうね。
今度はゆっくりお茶を飲みながら話しましょう。
――あなたと一緒なら、きっと楽しい時間になる