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#溺愛
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皇宮に向かう馬車の中。向かい合わせに座るカイル殿下は、落ち着かない様子で窓の外を見ていた。
「……今回の件、騎士団から報告が上がっている」
最近相次いでいた家畜と人間の大量死。凄惨な現場を調査していた騎士団は、それが黒魔法の生贄である可能性が高いこと、そして魔力の痕跡が貧民病院周辺から出ていることを突き止め、警戒していたのだという。
「……まさか、聖女がその元凶だったとはな」
「……殿下が調査してくださっていたおかげで、助かりましたわ」
私が微笑むと、殿下はふいと視線を逸らし、今度は私の髪をじっと見つめた。
「……それで、その姿はどうしたのだ? 」
私は、これまで隠してきたすべてを打ち明けた。
ここが“ゲーム”の世界であること。私が本来のソフィアではなく、異世界から来た存在であること。辿るはずだった“処刑”という結末。聖国の王女であり、公爵家に無理やり引き取られた養女であること。そして、魔力を封じるピアスを外し、真の姿を取り戻したこと。
荒唐無稽な告白だった。それでもカイル殿下は、一言も遮らず、ただ私の言葉を受け止めてくれた。
「お前が誰であろうと、そんなことはもうどうでもいい。異世界だの、ゲームだの……そんな瑣末な理由で、俺がお前を処刑などさせるものか!」
そしてカイル殿下は乱暴に髪を掻き上げた。
「あの離婚届は何だ。……あれは、本心ではなかったのだな?」
私はくすりと笑った。
「そういえば、そんなものもございましたわね」
(逃亡の前日に、したためたわね)
殿下は真剣な眼差しで、私の手を包み込んだ。
「ソフィア。俺はもう、お前なしで生きる未来など考えられない。俺のそばで……これからも、ずっと一緒にいてほしい……」
「あら。今のは、もしかしてプロポーズでしょうか? 少々ロマンチックさには欠けますけれど……まあ、よろしいでしょう」
私は、微笑んだ。
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