テラーノベル
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㎎
#Mrs. GREEN APPLE🍏
こんぶ@ミセス推し
231
エキゾチックモンスター
679
攻略対象、か。
謎の声とやらの説明を聞きながら、まぁそういうことなら誰かがさっさとクリアするやろ、と半分他人事に思っていた。
鬱先生がシャオロンとか、エーミールがゾムを、とか。ショッピはチーノやろな。いや、野郎共のそんなところなんて見たかないけどな。
誰を攻略するかなんて、自分はまだ考えてもいない。
▶
zm「トントン!トントントントントントン!」
廊下を歩いていたら声がかかった。振り向くとゾムが小走りで近づいてくる。
フードの紐がぱたぱたと揺れていた。
tn「なんや」
zm「昨日の数学の宿題、答え合わせさせてや」
tn「お前また写す気やろ」
zm「ちゃうわ!答え合わせや!」
tn「同じやろ」
ため息をつきながらも鞄から数学のプリントを出してやる。ゾムがぱっと顔を輝かせた。
zm「ありがとーな!トントンほんまに有能やわ」
tn「知っとる」
元の世界でもこいつはこうだった。何かと絡んできて、世話を焼かされて。
zm「んふ、トントンほんま優しいわぁ。じゃ、ありがと!シャオロンにじゃんけんで負けたから俺がトントンから貰わなあかんねん!」
tn「あっ、ほかの奴らにも見せるきか!?おい待てやってこいや!ww」
zm「授業前には返すからなー!」
そういってさっそうと去っていく。逃げ足が速いのはやっぱり鬱先生に似たのか。
tn「ったく………」
▶
zm「あっ、トントンやぁ!」
生徒会室の扉を開けると、ゾムが我が物顔で自分の席に座っていた。
gr「ほらな、時間のきっかり5分前だゾ」
zm「……くっ、負けちまったのぜ……」
gr「じゃ、そのハーゲンダッツよこせ。溶ける前にな!」
zm「………グルッペンのばーか!」
gr「当てれなかったお前が悪いんじゃ!」
zm「賭けを持ち出したんはグルッペンやろ!」
gr「乗ったのはゾムや!」
tn「うるさいな……」
二人の言い合いを横目に自分の席につく。書類を広げながらも、ゾムがぶつぶつ言いながらハーゲンダッツを渋々グルッペンに差し出す様子が視界の端に入る。
gr「ほれ、負け犬」
zm「……ちべたい」
悔しそうに口を尖らせながらも、グルッペンが一口食べさせてやると機嫌が直ったのか少し笑った。
現金なやつ。
tn「ゾム、なんで生徒会室おんねん」
zm「グルッペンに呼ばれてん」
gr「ゾムに手伝ってもらおうと思って」
tn「……お前、仕事増やすな」
gr「ゾムが来たがったんや」
zm「グルッペンが来いって言うたんや」
tn「どっちやねん」
二人が顔を見合わせて笑った。
仲ええな、とは思う。でもこいつがここに居ると仕事にならへん気もする。
tn「ゾム、邪魔すんなよ」
zm「せえへんて!……ちょっとしかせえへんて!」
tn「ちょっともすんな」
そのまま書類に取り掛かる。
軍にいた頃よりも圧倒的に書類の枚数が少ない。
あーもう一生書類はこれで良い。
グルッペンもハーゲンダッツを食べ終わるとエネルギー補給が完了したのか黙々と筆を執り始めた。
ゾムが暇そうに机に突っ伏す。フードと腕の間から除くペリドットが不満げにこちらを見ているのがわかった。
空いた左手で頭の上に手を乗せてやる。
ぴくっ、と一瞬動いたが決してのけようとはしない。
にへらと口元が歪んでいるのが伺える。
寂しがりやの彼のことだ。きっと構ってもらえたことがうれしかったのだろう。
書類に視線を戻す。左手はそのままゾムの頭の上に置いておく。
gr「……」
グルッペンがちらっとこちらを見た気がした。気のせいにしておく。
zm「……トントン」
tn「なんや」
zm「眠い」
tn「寝ろ」
zm「……ん」
すぐに寝息が聞こえてきた。
書類のページをめくる音と、グルッペンの筆の音と、ゾムの寝息。
gr「……トントン、クラッカーあるか?」
tn「駄目やで」
gr「紙鉄砲に使える紙は……」
tn「作らせへんで」
▶
学年球技大会。種目はバスケットボール。
別にバスケが得意なわけでも好きなわけでもない。ただクラスの人数的に出ざるを得なかっただけだ。
自分のクラスの試合が終わって、次の試合を待ちながらコートの端に座る。
次の試合はゾムのクラスだった。
mb「ゾムってバスケ部やんな?」
zm「んははっ、俺ばっかりに託さへんでなー?俺が強いからって……」
ut「頼んだで♡」
コートに入ってくるゾムを目で追う。体操服姿で、フードはない。
試合が始まる。
ゾムはうまかった。それは知っていた。元の世界でも身体能力は俺に勝る方だったし。
でも、こうして見るのは初めてかもしれない。
点を取るたびにチームメイトとハイタッチして、にかっと笑う。
zm「ふーーーーん!」
バスケットボールをぶん投げ味方に渡す。
……。
………。
なんか、ゾムめっちゃこっちをチラチラ見てくるやん。
軽く手を振ってみる。
そしたらゾムの顔がぱぁっと明るくなり、また駆けていく。
……終わったら褒めたるか。
試合終了の笛が鳴った。
ゾムのクラスが勝ったらしく、歓声が上がる。
zm「トントン!」
片付けも終わらないうちにこちらに駆けてくる。
tn「お疲れ。うまかったな」
zm「見とった!?」
tn「見とったで」
zm「えっ、……んへへ」
照れるポイントそこか、と思ったが口には出さない。
zm「うまかった?」
tn「うまかったで」
zm「トントンのとこは?」
tn「負けや」
zm「あらら」
tn「お前のクラスが強すぎんねん」
zm「それは俺が強いからやな!」
tn「うるさいな」
ぺちっと頭を叩く。ゾムが嬉しそうに笑った。
▶
休日。せっかくなのでメンバーでショッピングモールに遊びに行くことになった。
しかし買い物には興味のない奴ら。真っ先にゲーセンへと足を運んだ。
ゲーセンの騒がしい中、クレーンゲームに並んでいたらいつの間にかゾムがとなりにいた。
大きなクリーパーのぬいぐるみを抱きかかえていた。
zm「トントン、あれ取って」
tn「自分で取れ」
zm「トントンが取ってくれた方が絶対取れるもん」
tn「知らんし」
zm「だってクリーパーなんやもん!」
それでも結局コインを入れてやる。ゾムが期待の目でクレーンを見つめる。
惜しくも取れなかった。
zm「もっかい!」
tn「自分でやれ」
zm「えーーー」
そうやってしばらくしてから、少し離れたところでUFOキャッチャーをしていた鬱先生がふらっとやってきた。
手には小さなマスコットがいくつか。
ut「……お前ら付き合ってるん?」
tn「は?」
ut「えっ、付き合ってないん?」
tn「なんでやねん」
ut「なんでって……」
鬱先生が少し考えてから続けた。
ut「だってゾム、お前のこと好きやろ?」
tn「そうなん?」
ゾムがフリーズした。
zm「………へっ、ぁ、」
フードの奥から真っ赤に染まった耳が除く。
tn「……そうなん?」
もう一度聞いてみる。ゾムが更に固まった。
zm「ち、ちが、あの、そういうわけでは、」
ut「……ほな!」
tn「待てや」
鬱先生が踵を返す前に引き止める。
ut「俺関係ないやろ」
tn「関係あるわ、言い出しっぺやろ」
鬱先生がやれやれとため息をついて、腕を組んだ。
しばらく三人とも黙っていた。
tn「……ゾム」
zm「……」
tn「俺のこと好きなん?」
ゾムがぎゅっとクリーパーのぬいぐるみを抱きしめる。
zm「………ん」
tn「……」
ut「……」
ut「失礼しましたー」
tn「帰るな」
逃げようとする鬱先生の襟首を掴んで引き止める。視線はまだゾムに向けたままだった。
ゾムは耳まで真っ赤で、クリーパーのマスコットを両手でぎゅうぎゅう握りしめている。目線はずっと床に向いたまま。
tn「ゾム」
zm「……んん」
呼んでも顔を上げない。フードを目深に被ろうとする手をやんわり止める。
ut「これ俺帰ってもバレへん?」
tn「帰るなって言うとるやろ」
鬱先生をもう一度引き止めつつ、ゾムの顔を覗き込む。
tn「ちゃんと顔見せろ」
zm「っ、」
両手で顔を覆おうとするが、片腕に抱きかかえたクリーパーのせいで、結局中途半端に指の隙間から目だけ覗いている状態になった。
その隙間から見える目が潤んでいる。
tn(……やばいな、これ)
正直、自分がどう思っているのか、自分でもよくわかっていなかった。ただ、ゾムが自分のことを好きだと知って、なんでこんなに胸の奥がざわついているのか。
ut「……俺、ほんまに帰ってええ?空気読めん男にはなりたないし」
tn「ええから黙っとけ」
鬱先生の襟首を離さないまま、ゾムにもう一度声をかける。
tn「ゾム」
返事はない。クリーパーの隙間から覗く目がさらに潤む。
tn「泣くなって」
zm「な、泣いてへんもん……」
声が震えている。
tn(……これは、俺がなんとかせなあかんやつやな)
しばらく考えてから、片手で鬱先生を解放し、その手でゾムの頭をぽんと撫でた。
tn「ほら、顔上げ」
zm「……いや」
ut「ゾムさん、なぁ」
zm「もうおれかえらへん……!ずっとここおるぅ」
クリーパーのマスコットに顔をうずめて、その場にしゃがみ込んでしまう。
tn「ゲーセンで暮らす気か」
zm「するもん……」
tn「飯どうすんねん」
zm「クレーンゲームの景品食べる……」
ut「ここらぬいぐるみしかないで」
tn「お前は黙っとけって言うたやろ」
しゃがみ込んだままぴくりとも動かないゾムの前にして鬱先生と目を合わす。
tn「……ゾム、帰るか」
zm「……帰る」
ut「1人で帰れるん?トントンと一緒に帰ったらええやん」
zm「とっ、とんとんとはかえらへんっ」
▶
教室に入った瞬間から、なんとなく落ち着かなかった。
隣のクラスの方をちらっと見てしまう自分に気づいて、すぐに視線を戻す。
tn(………)
授業中も上の空だった。ノートを取る手は動いているのに、内容が頭に入ってこない。
昼休み、いつものように購買に向かう途中、廊下の向こうにゾムの姿が見えた。シャオロンと何やら話しながら歩いている。
ゾムがふと振り返ってこちらに気づく。
zm「……あっ」
目が合った瞬間、ゾムの顔がさっと赤くなって、慌てたように視線を逸らした。シャオロンに何か言われて、小声で言い返している。
tn(……)
なんやそれ。
自分の頬にもじわっと熱が上がってくるのがわかった。慌てて反対方向を向く。
sha「トントーン、ゾムが」
tn「うるさい黙れ」
何も言っていないのに先回りして黙らせる。シャオロンがにやにやしながら離れていった。
放課後、生徒会室の扉を開けると、いつもの席にゾムはいなかった。
tn(……)
別に、来なくてもええけど。
そう思いながらも、書類を広げる手が落ち着かない。
gr「今日はゾムおらんな」
tn「知らん」
gr「ハーゲンダッツ奢られないんじゃあ……」
tn「グルッペンは変わってへんな」
gr「何がだ?」
言いながらも、扉が開く音がするたび意識がそちらに向いてしまっていた。
▶
tn「なぁ、ゾム」
▶
廊下の角からひょっこりシャオロンが顔を出す。
sha「おめでとさん。お祝いにいいエロ動画貸したろか」
tn「いらん」
zm「石瀬ろえのやつ?」
tn「お前は黙っとけ」
ゾムがにししと笑う。
tn「……てか」
sha「あーはいはいはい、いつから知っとったんって?」
tn「おま、見とったんか」
sha「大先生がLINEで実況しとったわ」
スマホを取り出すと、グループラインが鬱先生からのメッセージで埋まっていた。「告白されてる」「やばい泣く」「あのゾムこんなにいい子に育って……」「号泣」など、書かれていた。
tn「あいつ、後で覚えとけよ」
zm「……俺、アイツの息子なん」
ぽつりと零すが、誰も聞いていなかった。
▶トントン√:見守られエンド
▶おまけ
放課後、自販機でジュースを選んでいるとショッピとチーノに会った。
shp「あ、トントンさん」
ci「噂のカップルはっけーん!聞きましたよ、ゾムさんと付き合ってるって」
zm「な、なんでチーノが知っとるん!?」
ci「グループラインっす」
zm「大先生〜〜〜!!!」
チーノが茶化すようにゾムのほっぺをつつくが、それを振り払って自販機に戻る。
ショッピがトントンに顔を近づけて小声で話しかける。
shp「やー、めでたいっすね。他のPLの奴らもうまいこと進んでへんのに」
ちらっとチーノを見るショッピ。チーノはマイペースにジュースを選んでいる。
tn「お前らはどうなん」
shp「全然っす。攻略する気ゼロらしくて」
いつの間にかチーノより先にジュースを選び終わったゾムが側にいた。
そして一言。
zm「ショッピ、がんばれ」
ぐっと親指を立てる。ショッピが乾いた笑みを浮かべた。
shp「……ありがとうございます」
コメント
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ああもう、ゾムがかわいすぎて胸が詰まりました……! ゲーセンで鬱先生にポロッと言われてからの一連の流れ、ゾムのフリーズと耳の赤さ、クリーパーに顔をうずめて「ずっとここおる」って駄々こねるところ、全部が愛おしかったです。トントンが一度ならず二度「そうなん?」って聞き直すところに、彼の動揺と優しさがにじんでて。最後の「なぁ、ゾム」で終わる余白もすごく好きです。おまけの「ショッピ、がんばれ」にもほっこりしました。この距離感、本当に素敵です🌷