コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
Side.黄
「あれどうした、怖い?」
足にくっついてきたジェシーを見て、眉をひそめる。無理に連れてくるんじゃなかったかな、と少し後悔する。
ここは国際線がある空港。
聞き慣れないアナウンスやキャリーケースの音がする。やたらと広いし、休日だから人もたくさんだ。怖い要素は多い。
しゃがんで目の高さを合わせ、「もうすぐマミー帰ってくるからね。一緒にお出迎えしよう」
「マミー、会いたい」
うん、とうなずく。「会えるよ」
腕時計を見る。妻が乗る飛行機は、あと5分くらいで着く予定だ。
出口の近くまで行き、スマホを見ると『もう着くよ』とのメールが来ていた。
数分後、ジェシーがあっと声を上げた。
「マミー!」
顔を向けると、久しぶりに見る妻の姿があった。あちらも気づいたようで、笑顔を向ける。
「ただいま、パパ、ジェシー!」
繋いでいた手を離し、嬉しそうに駆け寄っていく。ぎゅっと抱き合った。
「あっ、それ」
彼女が着けているネックウォーマーは、正真正銘、クリスマスに送ったものだ。
「これ、ありがとう。とっても温かいわ」
良かった、とうなずく。
「ジェスが選んでくれたのよね。ありがとう。シマウマも帰ったら見せてね?」
「うん!」
じゃあ行こうか、とキャリーケースを代わりに持ち歩きはじめる。
「お義父さんお義母さんは元気だった?」
「今のところはね。ジェスにも会いたいって」
「だろうな。いつ行けるようになるかな…」
苦手なことを考えれば、長時間の空の旅は少し厳しい。
「いつか行こう。来てくれるよう言ってもいいし」
「そうだね」
さっきの怖がった様子はどこへやら、両手で僕と妻と繋いだジェシーは楽しそうな表情をしている。
「ねえジェス、シマウマは英語で何て言うんだったっけ?」
んー、としばらく考える。
「Giraffe!」
「違うわよ、それはキリン」
笑いながら訂正する。「ゼ?」
「Zebra!」
良くできたね、と2人で褒める。
家族3人の他愛もない笑顔と笑声が溢れた。
終わり