テラーノベル
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AttentionとSettingは第1話をご覧ください。
start.
🐷side
グラウンドの空気が変わった。
最後の種目——
クラス対抗リレー。
これで順位が決まる。
勝てば優勝。
🦍「さぁいよいよ最後の競技です!!」
「うおおおおお!!」
「いけええええ!」
会場のテンションは最高潮。
🦍「各クラスのエースが集い、今宵行われます!」
「今宵ってなんだよw」
「がんばれー!!!」
会長の掛け声に、会場が沸く。
🐷「……」
スタート地点の近くで軽く足を伸ばす。
さっきの借り物競走のことが、
まだ頭から離れない。
『好きな人』
そして、
俺を連れて走ったおんりー。
🐷「……」
一旦、忘れよう。
うん。
バトンを受け取る順番を確認する。
俺は——
アンカー。
「冥人!」
振り向くと、同じリレーメンバーの男子。
「頼むぞマジで」
「ぜってえ勝つぞ」
🐷「任せろって」
軽く拳を合わせる。
そのとき、
「menー!」
クラス席の方から声がした。
振り向く。
…おんりーだった。
女子の囲みから、
なんとか抜けてきたらしい。
🐷「お、どうした?」
🍌「……リレー」
🐷「うん」
🍌「頑張って」
少しだけ目を逸らしながら言う。
🐷「……」
やっぱり顔赤い。
🐷「応援してくれてんの?」
🍌「当たり前でしょ」
🐷「じゃあ勝つわ」
🍌「……」
一瞬だけ目が合う。
🍌「……うん」
小さく頷いた。
🦍「それでは位置についてください!」
🐷「じゃ、ちょっと勝ってくる」
🍌「…うんw」
「おおおおお!!」
「冥人頼むぞー!!!」
観客席から、歓声が飛び交う。
各クラスが配置につく。
1走目がスタートラインに立つ。
🐷「……」
俺はアンカーゾーン。
まだ遠い。
でも、
鼓動はもう速い。
「位置についてー」
緊張が走る。
一瞬、会場が静かになる。
次の瞬間。
パンッ!!
ピストルの音。
一斉に走り出す。
🦍「さぁスタートしました!!」
「いけえええ!!」
「負けんなぁあ!!!」
応援の声が響く。
緊張、してきた。
1走目、
2走目、
3走目。
アピカQ⭐️❄️🎨_qdm
772
どんどんバトンが繋がっていく。
順位は——
今、3位。
「はぁっ………はっ」
走り終わったメンバーが、
悔しそうな顔をする。
「……はぁっ…すまんッ!!」
🐷「いや、ナイス」
「いけいけいけ!!」
「まだあるよー!!」
4走目に、バトンが渡る。
前との差が縮まる。
🐷「……よし」
「いいぞー!!」
5走目。
前のクラスを抜いた。
2位。
「冥人準備!!」
🐷「おう!」
🦍「さあそろそろです!!
アンカー勝負に突入しますっ!!」
前の走者が近づいてくる。
呼吸を整える。
バトンを受け取る瞬間——
「men!!」
声。
振り向かなくても分かる。
🍌「いけーーーッ!!」
おんりーの声。
🐷「……」
思わず笑った。
🐷「任せろ」
「はいっ!!」
バトンが手に触れる。
同時に走り出す。
🦍「さぁアンカー対決だーー!!」
前には1人。
3年生。
あの、3年1組のエース。
くっそ速い。
でも、
—————負ける気しねぇな。
🐷「……っ」
地面を蹴る。
一歩。
二歩。
距離が縮む。
観客がざわめく。
「冥人追いついてる!?」
「いけるいける!!」
「かっこいいー!!!」
残り半周。
横に並ぶ。
相手も驚いた顔をした。
舐めんなよっ!!!
🐷「……」
もう一度、
地面を強く蹴る。
前へ、
前へ。
「うおおおおおお!!」
「どっちだ!?」
歓声が爆発する。
ゴールテープが近づく。
🍌「menーーー!!」
その声を聞いた瞬間———
最後の一歩を踏み込んだ。
バサッ
ゴールテープが切れた。
一瞬の静寂。
そして——
🦍「1位!!1年1組だあああああああ!!!」
「……マジ!?!?」
「や、やったぁあああああ!!!」
「うおおおおおおお!!!」
クラス席が爆発する。
🐷「はぁ……はぁ……」
膝に手をつく。
肩を大きく上下させて、
呼吸を整える。
「すげええええ!!」
「冥人やば!!」
「ナイスラン」
3年の先輩が、声を掛けてくれた。
🐷「あざす!」
そういって、先輩と握手を交わした。
クラスメイトが一斉に駆け寄ってくる。
背中を叩かれたり、腕を掴まれたり。
🐷「ちょ、待てって……」
「お前マジ速すぎ!」
「逆転だぞ逆転!!」
🐷「……はは」
息を整えながら笑う。
そのとき——
「men!!」
また声。
🐷「……」
振り向く。
人混みをかき分けて、
一直線にこっちへ走ってくる人影。
🍌「……っ」
おんりーだった。
🐷「俺イケメンだっただろ?w」
冗談まじりに言う。
🍌「……ん//、まぁ」
🐷「え冗談のつもりだったんだが…?」
🍌「っへ?」
みるみる顔が赤くなっていく。
🍌「い、いやそのね!?
優勝に貢献したのがかっこいいなって!?
そういう意味じゃないから!」
顔を真っ赤にして、
必死に否定している。
🐷「何も言ってないじゃんw」
🍌「〜〜〜っっ”…!!」
言葉にならない声が、
口から漏れ出ている。
なんと言葉を続けていいか分からず、
一瞬、沈黙が流れた。
自分でいじっておいてなんだが、
ほんとに、
好き…なのか?
今更の疑問に、
思わず戸惑う。
「恋愛」として?
脈あり…ってことでいい、のか?
いい…、、よな?//
めっっっちゃ嬉しいんだが……?
🍌「あ、……勝ったじゃん」
🐷「お、おう」
おんりーが、話題を見つけ、
ふと我にかえる。
少し、意地悪がしたくなる。
🐷「応援あったからな」
🍌「……」
一瞬だけ目が合う。
周りではまだ大騒ぎ。
「1組優勝じゃね!?」
「冥人神!!」
「アンカーえぐ!!」
でも——
その喧騒の中で、
一瞬。
ほんの一瞬だけ、
俺たちの間だけ静かになった気がした。
🐷「……なあ」
🍌「なに」
少し身を寄せる。
周りには聞こえないくらいの距離。
そして——
おんりーの耳元で小さく言った。
🐷「好きな人の応援って、すげーな」
🍌「……」
一瞬、
時間が止まる。
🍌「……は?//」
🐷「力出た」
🍌「……っッッ!!!」
みるみる顔が赤くなる。
🐷「おいおい」
🐷「また赤くなってんぞ」
🍌「うるさい!!」
そう言いながら、
バシッと、
腕を叩かれた。
「なになに!?」
「なんか話してる!」
「冥人今なんて言った!?」
周りが騒ぎ始める。
🍌「へぁっ……ッッ!!」
おんりーが逃げるように走っていった。
「ちょ、音璃?」
「どこ行くのー!?」
周りから興奮に満ちた質問が飛び交う。
「なになに??」
「何話してたの!?」
「そういう関係…?」
🐷「別に?」
「えー嘘だぁ!!」
「隠すなよ〜」
これは、俺だけの心に留めておこう。
あの顔も。
この気持ちも。
——今はまだ。
🍌side
心臓が、まだ落ち着かない。
——やばい。
やばいやばいやばい。
心臓が、うるさい。
さっきの言葉が、頭の中で何度も繰り返される。
「好きなんだ?」
耳元で、
あんな近くで、
低い声で。
思い出すだけで顔が熱くなる。
俺はグラウンドの端まで走ってきて、
思わず立ち止まった。
🍌「……なに、あれ」
手で顔を覆う。
絶対、赤い。
絶対、バレた。
🍌「……いや、いやいやいや」
首を振る。
違う。
違うだろ。
あいつはただ、
からかってるだけだ。
そうだ。
そうに決まってる。
なのに。
胸の奥が、
妙にざわつく。
その時。
🐷「おーい」
聞き慣れた声。
振り向く。
menがこっちに歩いてきていた。
🐷「何一人で逃げてんだよ」
🍌「逃げてない」
🐷「逃げてた」
🍌「逃げてない」
視線を合わせないまま言う。
だって、
今顔見たら
絶対変な顔する。
グラウンドの歓声が、
まだ遠くで聞こえる。
「優勝だよ!優勝!」
クラスメイトが、肩を抱き合って喜んでいる。
🐷「……顔赤くね?」
menが急に、顔を覗き込む。
🍌「赤くない」
🐷「赤い」
🍌「赤くないって」
🐷「ふーん」
くすっと笑う気配。
くそ。
絶対楽しんでる。
🍌「……行くぞ」
🐷「はいはい」
並んで歩き出す。
夕方の空。
体育祭の熱気で騒がしかった校庭も、
もうだいぶ静かになっていた。
「これより、閉会式を開催します。」
🍌「優勝、しちゃったね」
🐷「だなぁ…」
いまだに実感が湧かないようで、
閉会式も上の空だった。
「総合優勝の発表です。」
「きたきたきたぁ!」
「マジでよくやった!」
ヒソヒソと、1組が盛り上がる。
「優勝は………、1年1組です!!」
「うぉおおおおっ!!」
「やったあああ!」
先ほどまでの静かな雰囲気とは一転、
一気に会場が沸く。
歓声と共に、拍手が鳴り響く。
🍌「やったね」
🐷「な」
🍌「MVPはmenだな」
🐷「まじ?」
🍌「いやそうだろ」
「代表者は前へ。」
——恒例のアレが始まった。
「え、誰行く?」
「お前いけよ」
「いやいやお前が」
🍌「あ、あのさ………」
思い切って口を開く。
🍌「men……冥人じゃないかな、出るのは」
めっちゃ頑張ってた。
1番かっこよかったと思う。
menに、受け取って欲しい。
すると、口々に、
「確かにな」
「MVPっしょ」
「いけいけ!」
クラスメイトが賛同する。
🐷「え、俺?」
「ほらいけよ」
「早く!」
🐷「え、あぁ」
ちらっと、
こっちを振り返って、
menは笑った。
🐷「さんきゅ」
🍌「おん」
そう言って、みんなに押し出され流ような形で、
menが校長の前に歩み出た。
「総合優勝、1年1組。」
校長が、賞状を読み上げる。
グラウンドが、拍手で満ちた。
menは賞状を持って、
にっと笑った。
「きゃあああ!!」
「かっこいい〜!!」
「ファンサ?命日?」
口々に、女子が叫ぶ。
ほんっと、無自覚の女たらしだよなぁ…。
本人は全くもって自覚してないんだよな。
困ったものだ。
「代表者は元の位置へ戻ってください。」
その声と共に、
満面の笑みで帰ってきた。
🍌「…w」
🐷「なんだよ」
🍌「いや機嫌いいなと思って」
🐷「いつも元気な冥人くんですよ?」
🍌「何言ってんのw」
🐷「今日いいことあったし」
🍌「……は?」
🐷「別に?」
🍌「なんだそれ」
2人で笑っていると、スピーカーから、
終わりを告げる音声が流れた。
「えー、これで、体育祭を終わります。」
夕暮れの空の下。
グラウンドを出て、
いつもの帰り道。
アスファルトを蹴る音だけが、
妙に大きく聞こえる。
🐷「なあ」
🍌「……なに」
🐷「今日の」
心臓が跳ねた。
……触れられたくない。
無理。
もし、本当に聞かれたら。
全部バレる。
🐷「借り物のやつ」
🍌「……ッッ!」
横を見る。
ニヤって笑ってる。
🍌「競技…、だから!」
🐷「ほんとに?」
🍌「ほんとだって!!」
そっぽを向く。
沈黙。
数歩歩いて、
menがふっと笑った。
🐷「そっか」
それ以上、
何も言わなかった。
その方が、
逆に落ち着かない。
夕焼けの光が、道路を赤く染めている。
俺は少しだけ前を歩く。
隣から視線を感じる。
でも、向けない。
好き、だなんてバレたら。
気持ち悪い、って言われたら。
生きていけないよ。
menの言葉を反芻する。
(🐷「好きな人からの応援って、すげーな」)
そんなわけ——
あるわけない。
あるわけないだろ。
だって、
あいつは。
menは。
誰とでも仲いいし、
人気者だし、
俺なんか。
おちょくられてるだけだ。
ただの幼馴染だ。
それだけだ。
それだけで、
十分だろ。
……うん。
それでいい。
隣にいられるだけで。
あれこれと考えているうちに、
家の前に着いてしまった。
🐷「じゃ」
🍌「……うん」
🐷「また明日」
🍌「また明日」
背中を向ける。
ドアを開ける。
家の中は静かだった。
靴を脱いで、
自分の部屋へ。
ベッドに倒れ込む。
天井を見上げる。
さっきの声が、
また頭の中で響く。
(🐷「好きなんだ?」)
……あれがイケボというやつだろう。
はぁああ。
めっちゃ声低かった。
………かっこ、よかった…。
🍌「……違う」
小さく呟く。
🍌「そんなわけない」
あいつが、
俺を好きとか。
ありえない。
🍌「……ただの、
幼馴染だから」
そう。
これはきっと。
俺の、
一方通行。
そう思っていた方が、
楽だ。
期待なんて、しない方がいい。
目を閉じる。
浮かぶのは、
今日のグラウンド。
笑ってたmenの顔。
その奥に、
もっと昔の記憶が重なる。
まだ、
今よりずっと小さかった頃。
暑い夏。
蝉の声。
まぶしい空。
そう——
あれは、
あの年の夏。
あの夏、俺は恋をした。
5866文字。
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