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花言葉と恋模様

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花言葉と恋模様

5 - 第5話

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2025年09月02日

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秋の風が、少し冷たくなってきた頃。Ifと初兎の間に、ふとした沈黙が増えた。


原因は、些細なことだった。

ライブ準備、リハーサル、レコーディング――Ifのスケジュールが詰まり、なかなか会えない日が続いた。


連絡は返ってくる。でも、短くて、淡々としていて。

初兎はその度、スマホの画面を見つめては、胸の奥がきゅっと締めつけられるのを感じていた。


「…僕たち、ほんとに恋人なんかな」


ぽつりと呟いた声は、秋桜の咲く道に吸い込まれていった。



そしてある日、やっと時間が取れたIfが、初兎を呼び出したのは、秋桜が風に揺れる公園だった。


「……ごめんな、待たせた」

「……ううん、僕のほうこそ、勝手に不安になって、めんどくさくなってた」


秋桜の間に立つふたり。風が、花と一緒に気持ちまで揺らすようだった。


「秋桜って、花言葉知ってる?」

「『乙女の純潔』とか……あとは、『調和』、やっけ」

「そう。だから、今日ここにしたんや」


Ifはポケットから、小さな紙包みを取り出した。

中には、赤いリボンで結ばれた一輪の彼岸花。


初兎は目を見張る。


「……これ、どういう意味?」

「彼岸花の花言葉、『また会う日を楽しみに』って意味もあるんや。

離れてても、心はちゃんと隣にあるって、伝えたかった」


「……そっか。あの沈黙も、伝えたい気持ちの裏返しだったんだね」


Ifは頷く。

「好きやから、余裕なくなってただけ。ほんまは、毎日でも声聞きたいのに」


初兎はふっと笑った。

「じゃあさ、次会えない日があったら、コスモス送ってよ。僕が“調和”を取りに行くから」


ふたりの手が、また重なる。

風に揺れる秋桜の奥で、確かにふたりの関係も揺れたけれど、

それでも――倒れなかった。


まっすぐな茎の先に、花はまだ、咲いている。

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