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※実際の団体、個人とは無関係です。
※成人向けに準ずる表現があります。ご注意ください。
※その他捏造した設定が多く含まれます。
セラフが目を開けると知らない天井が目に入る。
まさか寝てる間に連れ去られたとでも言うのか、顔を動かさないように目の動きだけで周りを確認すると、見張りらしき人はいないようだった。
手足を拘束されている感覚もない。
右耳へつけているアキラ特製通信機もそのままだ。
だが、スイッチを押してもノイズが聞こえるだけで返答はない。
寝ていた床から体を起こし、さらに用心深く周りを見渡す。
小さな黒い棚、シングルサイズのベッド。
扉も窓も無ければ、監視カメラのようなものもない。
例えるなら、ドット絵風のゲームで初心者が作りがちな豆腐部屋だ。
「……監禁された…?」
ゆっくり立ち上がると服に小さな違和感がある。
探ってみるとポケットに何か入っていた。
布と擦れた音を聞くに紙かなにかだろう。
慎重にソレを取り出すと、コピー用紙にただ一文。
『セッ久しないと出られない部屋』
とだけ書かれていた。
一体何なんだ、それに自分一人だけでどうしろと言うのだ、目的はなんだとセラフは思ったが、不満を言っても誰も聞いてはくれない。
ひとまず他に部屋を出る方法がないか、部屋の中を物色しようとまずベッドへ近づくと、その上にはあり得ない人物が寝ていた。
「奏斗……?いや、でも、この姿は、」
セラフが目にした人物は学生の頃の奏斗によく似ていた。
制服もかつて彼が着ていた物とそっくりだ。
依頼で変装するにしても過去の制服を着るのは適切ではないし、それを知らない奏斗ではない。
用心しながらセラフは、起きる気配のない奏斗に瓜二つな何者かを拘束しようと羽織の飾りベルトを引き抜いた。
もし組織絡みの誰かで、起きた時に攻撃されては面倒だ、そう思い、マウントポジションをとると薄く彼の目が開いた。
「… ?……ッ誰、ぁぐっ…!!」
セラフを視認した瞬間、大きく目を見開き、左脇から素早く銃を取り出した。
訓練されているかのような動きにセラフは躊躇を捨てた。
同業であれば手加減はいらない。
セラフの体は習慣のようにナイフを取り出して、銃身を弾き、喉元へ刃先を押し当てる。
「誰、はこっちの台詞なんだけど。
……君、何が目的?」
「目的?な、なにが、…」
セラフの言葉にとぼけたような顔をする、ふざけているとしか思えなかった。
手に力を込め、ナイフをさらに強く押し当てる。
白い首にじわりと赤が滲んでくるが、まだ出血するほどではない。
「俺から情報でも取ろうとしたの?シないと出られない部屋ってことは、ハニトラが専門?」
不思議そうに見開かれた青い瞳はターゲットマークまで再現されている。
どこの誰だか知らないが、アキラにも雲雀にも負けない変装能力だな、とセラフは頭の片隅で思った。
「待てよ、僕は本当に何も知らない。…ここで争ってもお互い、何の得もないだろ。」
スッと目を細めてセラフを見据えるその目は、確かに見覚えはある。
であれば、本当に奏斗なのだろうか。
だが、セラフが分からないこと、銃を向けようとしたことを考えると疑わしい。
「君を信用できない。」
きっぱりとセラフが告げると、奏斗らしき人は睨みを効かせた目線を投げかけてきた。
「…せめてナイフ止めてくんない?こっちは丸腰なんだから」
無抵抗の意を示して、両手を肩の位置まであげた奏斗らしき人。
これ以上会話する意思もないセラフは無言のままナイフを納めた。
視界の端で安堵したようなため息が漏れたとき、 不意を突いて両腕を拘束した。
「ッおい!何すんだよ!!離せッ…!あぁもう!!」
「……これで出られるかは分からないけど、物は試しって言うよね。」
「はぁ?なに、言って……」
両の腕を縛った状態でうつ伏せにした奏斗に似た奴の下の衣類を雑に取り去り、使う場所を解していく。
知らない男の尻など触りたくもないが、昔の訓練でもやったことだ。
奏斗に似た奴はずっとやめろ、離せと声を荒げてうるさかったので彼のネクタイを口枷にしてその上からセラフの羽織を被せた。
唸っている声はするもののもうほとんど抵抗はしてこない。
「じゃ、挿れるから力抜いてて」
「ん゙んーっ!…っ、ん゙ー!!」
「うるさい。はぁ…奏斗の恰好で、ハニトラとか趣味悪すぎ」
尻たぶを左右に割り開いて、はくはくと蠢く後孔へ避妊具をつけたセラフ自身を挿入していく。
テキトーに解したからか、きつい。
奏斗に似た奴は足をバタつかせているが、力はあまり入っておらず、セラフは難なく抑えつけた。
それでも無理に押し込むとようやく半分まで入れられた。
後孔の縁から血が滲んでいるがセラフの知ったことではない。
「ぅ゙、…っ、ッ…ふ、…ん゙ぅ、っ」
「…動くよ。」
事務的にセラフが腰を動かし、頭では他に部屋から出られる方法を思案した。
爆薬は持っていないし、ナイフで壁を削るのは時間が掛かり過ぎる気がする。
せめて通信機が動いてくれれば…と、そんなことを考えていた。
一方で奏斗に似た奴は呻いているばかりで何の反応もない。
セラフとしても静かでいてくれた方が楽なのでわざわざ話しかけることもしなかった。
すると、突然右耳につけた通信機からピーッと音がした。
『こちら四季凪、こちら四季凪!聞こえていたら応答願います!』
「…凪ちゃん!?」
ノイズ混じりではあるが聞き慣れた声にセラフは驚いて、状況も忘れて声を上げた。
流石にこれには奏斗に似た奴も驚いたのか、羽織の下で身動いでいた。
『セラ夫!よかった、無事でしたか…。』
「無事ではあるけど……今、ちょっと取り込み中っ!」
動くなと牽制するために奏斗に似た奴に強く腰を打ち付けた。
そのせいでセラフ自身がかなり奥まで入ってしまった。
「んぅ゙ッッ…!?」
奏斗に似た奴はビクリと体を震わせ、その後はぐったりとベッドへ沈み込んだ。
『時間が惜しいですね。そのまま聞いてください。……今、かなり大規模なバグが発生して、違う時間軸の我々が存在しています。私の隣にも学生の頃の雲雀がいます。』
「……え?」
『それと、条件達成しないと出られない部屋、要は例の部屋です。それがランダムで割り当てられ……』
「ちょっ、ちょっと待って、凪ちゃん!」
違う時間軸の自分たちがランダムで部屋に放り込まれている、学生の雲雀がアキラと一緒にいる、今のセラフの状況と合致する点が多い。
それは、つまり目の前にいる奏斗に似た奴は学生時代の奏斗本人であるおそれが出てくる。
『どうかしましたか?もしかして、条件が厳しいとか…』
「条件は、まぁ厳しいっちゃ厳しいけど、いや、それよりも…」
通話を繋げたまま、セラフはおそるおそる奏斗に被せていた自身の赤い羽織を退ける。
突然視界がひらけたことに驚いて、セラフの様子をうかがおうと振り向いた奏斗と目が合った。
羽織の下でずっと泣いていたのだろう。
目元が赤くなって、顔は拭えなかった涙でぐしゃぐしゃだ。
口枷のネクタイも強く噛まれたせいで少しほつれて、うっすら血が滲んでいた。
「……。」
『セラ夫?大丈夫ですか?』
「大丈夫じゃないかも……」
『えっ!?一体何が、』
ふぅ、と意を決するための息をついてセラフは続けた。
「俺、たぶん学生の時の奏斗といるんだけど……同業かと思って、…無理やり条件達成しちゃった…」
『その、条件は?』
「アレだよ、…靴下しないと出られない部屋ぁ ……斧を投げる的な…」
通信機越しでもわかるぐらい大きなため息が向こう側から聞こえる。
やってしまったことは仕方がないがどう対処したらいいのか、そんな言外を感じ取った。
『……一応、スタッフさんが座標を調節してくれて、5分後に2人まとめて事務所へ転送されると思います…。 』
それまでにせめて状態は整えておけとアキラから伝えられ、通信は途絶えた。
気まずいを通り越して罪悪感まみれのセラフはひとまず奏斗から自身を引き抜く。すると、案の定、血がべっとりと付いていた。
無理もない、未開通の場所をあれだけ乱雑に扱ってしまったのだ。
拘束を解いてやろうと手を伸ばすが、少し触れようとするだけでも怯えてしまい、びくりと奏斗の体が震える。
「ぅ゙、……っ」
「ごめんね、ちょっとじっとしててね。」
腕の拘束を解いてから、奏斗の体を仰向けにし、口枷にしていたネクタイを取った。
腕にも顔にも、腰にも痛々しい痕が残ってしまっていた。
何が起きているかわからないといった風だが、解放されても奏斗は何も言わず、壁を背にして動かず、セラフの動向を見ている。
その目にはターゲットマークが常に出ていて、当然だが警戒されている。
「じょ、状況を説明させてほしいな…」
苦し紛れの言い訳のように聞こえるだろうが、セラフは必死になって奏斗へ事情を説明した。
セラフとの通信を終え、アキラが頭を抱えて、事務所の机で唸っていると来客用のソファから雲雀が声を掛けてくる。
と言ってもいつもの雲雀ではない。
「なぁ〜、本当にここって大人の四季凪達がいる世界なん?」
「そうですよ。……あ、勝手に物は触らないでくださいね。」
はーい、と気の抜けた返事をした懐かしい姿の雲雀。
キョロキョロと辺りを見回しては、落ち着きなく立ったり座ったりを繰り返している。
それからしばらくキーボードを叩くアキラの様子を大人しく見ていた雲雀だったが、また落ち着かなくなったのか事務机の側まで来ると顎をその上へ乗せ た。
少し上目がちにアキラを見上げながら、初々しく頬を赤く染めた。
「……な、四季凪、さっきの、もう一回せん?」
「ぶふっ!!」
それを聞いたアキラは思わず吹き出し、大慌てで雲雀を見た。
きらきらと瞬く好奇心を湛えた目はじっとアキラを見つめてくる。
「…だめ?」
耐えきれずに目を逸らし、アキラは落ち着かない気持ちのままスタッフとのメールを開いたり閉じたりを繰り返した。
全くもって無意味な行動だ。
「あれは、部屋から出るためです。今はする必要がないでしょう」
「そやけどぉ……一回だけ!一回だけやから、な?」
何度言っても聞かない雲雀に折れ、アキラはこれが最後、と釘を差した上で彼を近くに呼び寄せた。
「しゃがんで。こっちに顔を、 」
床へ座らせるのも忍びないが致し方ない。
要求したわりにはおそるおそるアキラの足元へ膝をつく雲雀。
「目を閉じてください」
「お、おん……」
言われたとおりに従う雲雀、アキラの手が雲雀の顔へ触れるとびくりと肩が揺れる。
睫毛どうしが触れ合いそうな距離まで近寄り、雲雀の薄い唇へアキラは自身の唇を重ねた。
きゅっと引き結ばれた口を舌でなぞって開かせる。
そのまま舌を雲雀の口内へ侵入して中を蹂躙するようになぞる。
「ん、っふ……ぅ゙…ッ…」
呼吸の仕方がわからないまま、遠慮がちにアキラの胸元に縋る雲雀。
それを包み込むように背へと腕を回すとアキラの腕の中でびくりと雲雀が跳ねた。
歯列をなぞって、上顎を舌で撫でてやるとしがみついたままの雲雀の手がさらに強く握られた。
ふと、ある異変に気づいてアキラが雲雀から離れた。
すると、雲雀は勢いよく息を吐き出し脱力した。
「こら、雲雀、息止めないでって言ったでしょう 」
「できんてぇ……四季凪みたいになれてないもん…」