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翌朝、眩しい朝光が高級スイートルームのフカフカなベッドに差し込んでいた。隣を見ると、銀髪を乱したヘカーティアが、俺の腕にすっかり身を預けて幸せそうな寝顔を浮かべている。神としての威厳と、俺だけにしか見せない愛くるしい甘え顔のギャップ。朝一番から実に目の保養だ。
俺は起こさないようにそっと腕を抜き、サイドテーブルに置いていたスマホを手に取った。
画面をタップし、例の『異世界観測アプリ』を開く。
「……おや、朝から精が出てるな」
アプリの画面越しに見える異世界の空は、どす黒い雲が立ち込め、不気味な赤紫色の雷が鳴り響いていた。環境としては最悪だ。
画面の中では、覚醒した白石と佐藤が先頭に立ち、拠点に接近してきた小型の魔獣群をテキパキと迎撃していた。白石の『絶対防御(イージス)』が眩い光を放って爪撃を弾き、佐藤の『解析閲覧(アナライズ)』がすかさず弱点を見抜いて指示を出す。見事な連携だ。二人はこの過酷な環境で、着実に「戦士」として成長している。
一方で、主犯格や傍観者たちの惨状はと言えば——まさに地獄絵図だった。
神条は自分のクソ能力である『0.1度だけ温かい風』を必死に顔に吹きかけ、寒さにガタガタと震えている。
鬼塚に至っては、恐怖で10分間瞬きを我慢してしまい、無駄に1ミリ伸びた鼻毛を涙目で気にしていた。
担任の黒岩は、頭頂部をさすりながら生成した数枚の1円玉を泥の中に落とし、「私の老後資金が……!」と発狂している。
全員、泥と汗でドロドロになり、昨日のイタ飯や高級ステーキの味を思い出しては「腹減った……」「マック食べたい……」と泣き言を漏らしていた。
画面下のチャット欄を開くと、案の定、俺宛ての通知が何百件も溜まっている。
**神条 蓮:** 『近衛、頼む! パン1個でいい! 購買の焼きそばパンでいいから送ってくれ!!』
**姫宮 莉ノ:** 『お腹すいて死にそう……私、司くんの言うこと何でも聞くから! お願いだから何か食べるもの頂戴!!』
「ハッ、誰がやるかよ」
俺は冷ややかに鼻で笑うと、グループチャットに短い動画ファイルを投下してやった。
それは、昨夜俺とヘカーティアがスイートルームで食べた、極上A5ランク和牛のサーロインステーキと高級ワインの映像だ。
**近衛 司:** 『朝から元気がなさそうだな。俺は今日も最高級の朝食を食べて、午後はイリュージョンショーの打ち合わせだ。お前たちもその辺の苔でも食べて頑張れよ』
送信した瞬間、画面の向こうで神条が「うわああああっ! 近衛ぇぇぇ!!」と地面を叩いて狂乱するのが見えた。姫宮は空腹と絶望のあまり、その場に崩れ落ちて咽び泣いている。
『ふふ……朝から酷いことをなさいますね、司様』
いつの間にか目を覚ましていたヘカーティアが、後ろから俺の首に柔らかい腕を回し、クスッと可憐に微笑んだ。
「目を覚ましたか、ヘカーティア。……自業自得だろ? 俺を絶望の淵に追いやった奴らが、飢えと恐怖で苦しむ姿。これ以上のモーニングコーヒーの供はない」
『ええ、仰る通りですわ。司様を傷つけた愚か者には、永久に希望とおあずけを与えるのがお似合いです』
ヘカーティアは俺の頬に軽くキスを落とすと、うっとりとした瞳で俺を見つめた。
「さて……そろそろ準備するか。今日の昼は、大手テレビ局が俺の『種も仕掛けもないイリュージョン』を特番で生放送したいと泣きついてきている」
俺はベッドから立ち上がり、『森羅万象』の力で一瞬にして完璧なタキシード姿へと衣替えした。
「世界を驚かせる大スターとしての華やかな日常と、スマホ越しに覗くあいつらの地獄。……最高の人生じゃないか」
ヘカーティアの手を取り、俺は今日もまた、世界を圧倒するためのステージへと足を踏み出した。
コメント
1件
うわあ、第15話読み終わりました……朝から容赦なさすぎる(笑)。ヘカーティアの寝起きの甘え顔と、異世界で必死に苔でも食べてる元クラスメイトたちの落差がエグい。A5サーロインの動画を投下して「頑張れよ」って送る司くん、完全にラスボス感が出てて最高です。イリュージョンショーの特番生放送も気になるし、楽しみにしてますね!