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霧の館Ⅱ ― 火傷の男 ―

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霧の館Ⅱ ― 火傷の男 ―

2 - 第二章・黒鴉(くろがらす)劇場の亡霊

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2025年11月04日

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鴉劇場は、かつて華やかなレビューで名を馳せた場所だった。

しかし今は老朽化し、時折レンタル公演が開かれるだけの廃墟同然。

その暗闇に、まだ人の息が潜んでいた。

相沢蒼は、薄暗い舞台の上に立ち、ライトを一つだけ点けた。

永井沙織は応急手当の後、病院へ搬送され一命を取り留めたが、意識は戻っていない。

――彼女が最後に見た「火傷の男」は、どこへ消えたのか。

相沢は舞台袖を調べ始めた。

埃をかぶった大道具の裏には、古びた仮面と赤い布の切れ端。

そして床板の隙間には、細い針金のようなものが仕掛けられていた。

「……ワイヤー・トリック、か。」

それは照明を遠隔で落とすための仕掛けだった。

つまり、誰かがこの劇場で“演出”を行っていたということ。

そこへ、背後から低い声が響いた。

「探偵さん。夜の劇場に一人で入るのは、少し危険ですよ。」

振り返ると、黒いスーツに赤いスカーフを巻いた男が立っていた。

整った顔立ちに、不思議な笑み。

その男こそ――黒鴉劇場の支配人、篠原怜司だった。

「篠原さん、あなたが通報者ですか?」

「ええ。あなたが来ると聞いて、少し早めに待っていました。……それに、ここは私の劇場ですから。」

篠原は優雅に微笑みながら、ポケットから何かを取り出した。

それは一枚の舞台用ポスター――だが、奇妙なことに、出演者の名前の欄に“霧島翔”の名が印刷されていた。

「この公演は、二週間後に行われる予定だった舞台《真実の仮面》。

脚本は、かつて霧島翔が手掛けた未発表作ですよ。」

「……霧島翔の?」

相沢の目が鋭く光る。

篠原は静かに頷いた。

「ええ。そしてその脚本を持ち込んだのが、“火傷の男”でした。」

一瞬、劇場の照明がチカリと点滅した。

次の瞬間、二人の間に落ちてきたのは――黒い羽根だった。

相沢が顔を上げると、舞台の天井近く、照明の足場に誰かが立っていた。

仮面をつけ、右頬には赤黒い痕――火傷の男

篠原が息を呑む。

「まさか……」

男は何も言わず、ゆっくりと片手を掲げた。

その手には、小さなリモコンのような装置。

次の瞬間――

劇場全体が真っ暗になり、天井から舞い落ちた羽根と共に、銃声が響いた。

数秒後、非常灯が点く。

そこに残されたのは、篠原の肩をかすめた弾痕と、舞台中央に落ちた“仮面”。

しかし“火傷の男”の姿は、もうどこにもなかった。

相沢は静かに仮面を拾い上げる。

その裏には、奇妙な刻印が彫られていた。

「M-03」

「……また、霧島の暗号か。」

相沢は独り言のように呟いた。

霧は、まだ晴れそうになかった。

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