TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

……そう思った。
そう思って、

信じてしまった。


みんなが、

俺のことを忘れる。


名前も、

顔も、

声も。


それだけで、

この悪夢は終わるんだって。



なんだよ。


なんでなんだよ。


俺はもう、

主人公じゃない。


選んでない。

望んでない。


なのに――



……目を開けた。


天井。


白い。

ひび割れ一つない。


心臓が、

一拍遅れて

強く打つ。


この感覚。


知っている。


知りすぎている。



チャイムが、

鳴る前の

静けさ。


朝の、

まだ誰も騒いでいない

教室の気配。


俺は、

震える手で

机を触る。


ある。


木目。

傷。

前に刻んだ、

意味のない落書き。



「……嘘だろ」


声が、

掠れる。


机の中。


恐る恐る、

引き出しを開ける。


――制服。


きちんと畳まれて、

そこにある。



なんだよ。


なんなんだよ。


「終わったって……」


「終わったって

 思ったのに……!!」



チャイム。


鳴る。


逃げ場は、

ない。


世界が、

確定する音。



ミオが、

席に座っている。


何事もなかったみたいに。


ミオ「おはよ」


その声。


優しい。


何も知らない。


俺の中で、

何かが

完全に折れる。



……でも。


前と、

違う。



ミオの影が、

薄い。


完全にじゃない。


でも、

確実に。


存在が、

“残りカス”みたいに

削れている。


ミオ「……どうしたの?」


ミオ「そんな顔、

   初めて見る」


俺は、

答えられない。


だって、

これは――


俺が“戻らなかった世界”の

 続きだから。



スマホが、

震える。


通知は、

最初から

開かれている。


【アリウム】


勘違いするな。


忘れられれば

終わるわけじゃない。


君は、

“観測点”になった。


世界が壊れきるまで、

君は

ここに戻される。


今度は、

修正じゃない。


清算だ。


喉が、

ひくりと鳴る。


「……清算?」



アリウム


ミオは、

もう

元に戻らない。


ユウも、

完全には救われない。


君だけが、

全部覚えたまま

立ち会う。


それが、

“主人公をやめた罰”だ。



視界が、

滲む。


ミオが、

こちらを見る。


ミオ「ねえ」


ミオ「……私さ」


ミオ「なんで、

   こんなに

   あなたのこと、

   怖いんだろ」


その言葉で、

分かった。


もう、

取り返しはつかない。


戻るたびに、

彼女は

“人”から

遠ざかっていく。



俺は、

笑ってしまう。


ああ。


そうか。


忘れられることは、

救いじゃなかった。


忘れられないまま、

 何も変えられないことが

 本当の地獄だった。



チャイムが、

もう一度鳴る。


始業じゃない。


次の周回の合図。


俺は、

机に額をつける。


逃げない。


もう、

壊れきっている。

紫色のヒヤシンスが枯れ落ちた時に

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

40

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚