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青い人だぜ★
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#bl注意
ゆゆゆゆ
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クラブステージは大騒ぎだった。
爆音。
点滅するライト。
飛び跳ねるプレイヤーたち。
誰かがエモートを踊り始めたと思ったら、別の誰かがステージから落下している。
カオスだ。
完全に。
「うるせぇ……」
隣でシクサーが顔をしかめた。
案の定だった。
人混みも騒音も苦手な彼は、開始五分で限界を迎えている。
「もう帰るか?」
「まだ来たばっかりじゃん」
「十分だろ」
「十分じゃないよ」
僕は笑いながら彼の手を掴んだ。
「ほら、こっち」
「おい」
「いいから」
⸻
人混みを抜ける。
ステージの裏側へ。
巨大スピーカーの影になっている場所。
照明もほとんど届かない。
音もかなり小さくなる。
まるで別世界だった。
「どう?」
僕が振り返る。
シクサーは周囲を見回してから小さく息を吐いた。
「……マシだな」
「でしょ?」
「最初からここ来ればよかった」
「それじゃパーティー来た意味ないじゃん」
「あるだろ」
「どこに?」
「お前と来た」
さらっと言う。
さらっと。
僕が反応する前に。
「……」
「……なんだ」
「今のずるくない?」
「何が」
本人は本気で分かっていないらしい。
困る。
⸻
しばらく二人で壁にもたれていた。
遠くから聞こえる音楽。
たまに漏れてくる歓声。
ここだけ妙に静かだ。
「静かだね」
僕は笑った。
すると。
次の瞬間。
ぐいっ。
「えっ」
腰を引かれる。
気付いた時には、シクサーとの距離が一気に縮まっていた。
「シ、シクサー?」
「ん?」
彼は少しだけ口元を上げる。
いつもの悪い笑み。
何か企んでいる時の顔だ。
「静かだな」
「だから今そう言ったじゃん」
「いや」
シクサーはさらに顔を近付ける。
「静かすぎる」
「?」
「おかげで」
耳元で低い声。
「お前の心臓の音がうるせぇ」
思考停止。
一瞬で。
⸻
「なっ……」
「聞こえる」
「聞こえるわけない!」
「聞こえる」
「嘘だ!」
「めちゃくちゃ速い」
絶対嘘だ。
たぶん。
いや、でも。
顔は熱いし。
心臓は確かに暴れているし。
もしかして。
「……」
「ほら」
「……」
「また速くなった」
ニヤニヤしている。
最悪だ。
絶対楽しんでいる。
⸻
僕は反撃を試みた。
「シクサーだって」
「ん?」
「顔赤いよ」
ぴたり。
動きが止まる。
分かりやすい。
ものすごく分かりやすい。
「……ライトだ」
「暗いじゃん」
「気のせいだ」
「真っ赤だよ?」
「うるせぇ」
耳まで赤かった。
⸻
しばらく睨み合う。
いや。
睨み合えていない。
近すぎる。
距離感がおかしい。
そんな時だった。
スピーカーの向こうから声が聞こえた。
「おーいシクサー!」
「どこ行ったー!」
誰かが探している。
僕は慌てて離れようとした。
しかし。
離れられない。
「シクサー!?」
「静かに」
「いや見つかる!」
「見つからねぇよ」
そう言いながら離してくれない。
⸻
結局。
数人のプレイヤーがすぐ近くを通り過ぎた。
なのに誰も気付かない。
スピーカーの影は思った以上に死角らしい。
足音が遠ざかる。
ようやく静寂が戻る。
「行ったか」
シクサーが呟いた。
「危なかった……」
僕が安心して息を吐くと、
彼はまた少し笑った。
「なあ」
「?」
「パーティー会場の真ん中より」
シクサーは僕を見ながら言う。
「こういう隅っこの方が好きだな」
「人混み嫌いだもんね」
「それもある」
「じゃあ何?」
少しだけ沈黙。
そして彼は肩をすくめた。
「お前を独り占めできるから」
今夜一番うるさかったのは、
クラブのスピーカーじゃなくて。
たぶん僕の心臓だった。
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