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珠莉たちのいる休憩スペースの奥から、小さな物音が聞こえた。
弁当売り場の陰に隠れていたのは、見慣れぬ親子と年配の男性、そして幼い子供二人だ。
老人――桧山周作がゆっくり歩み出る。
「やれやれ、ようやく静かになったと思ったら……こっちはまだ騒がしいみたいじゃな」
背後から、小柄な男の子が不安そうに母の袖を掴む。
「ママ……こわいよ……」
彼は田島翔太。そして、しゃがんで優しく抱きしめるのが田島麻衣だ。
「大丈夫、大丈夫だから……少しの間、ここでみんなと一緒にいようね」麻衣はわざと明るい声を出したが、声は震えている。
その隣で、うずくまるように膝を抱えていたのは栗田さくら。隣には元気そうな風間大翔が寄り添っていた。
「さくら、大丈夫だよ。俺が隣にいるから、へーき、へーき!」
珠莉たちも声をかける。「こんにちは。ここに一緒にいてもいいですか?」
麻衣は小さくうなずき、全員の輪に加わった。
桧山周作は全体の様子をさっと眺め、穏やかな低い声で言う。
「こういうときはな、小さいのも大人も、まず落ち着くことなんじゃ。まずは水を飲みなされ」
と、彼が用意していたペットボトルから子供たちに水を渡して回る。
ほんのわずかな温もりが、広がっていくようだった。
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