テラーノベル
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田島麻衣が荷物を整理していると、ふと、リュックの脇からハサミの刃先が覗いているのを見つけた。よく見るとその刃に、赤黒い血がこびりついている。
麻衣はぎょっとし、思わず声を上げる。
「これ……なに?」
周囲の視線が珠莉に集まる。珠莉は思わずリュックを自分のほうに隠すが、取り繕う余裕もない。
風間大翔が興味津々でのぞきこむ。
「それ、血だよね……まさか、ゾンビに使ったんじゃないの?」
翔太が怯えた声でささやく。
「ゾ、ゾンビ倒したの……?」
栗田さくらはじっと珠莉の顔を見つめている。
桧山周作が静かに話しかける。
「じゅりちゃん、ちょっとだけ教えてくれんか。この血は……」
珠莉は、かすかに震える声で答える。
「……ごめんなさい、でも、璃都を守るために……どうしても……」
子どもたちが息をのむ。
すると桧山がうなずく。
「そうか、君は立派だ。家族、いや、大事な人を守るために戦ったんじゃな」
大翔が、「やっぱりすげぇなぁ!」と目を輝かせ、翔太も少しだけ珠莉に近づいた。
それでも田島麻衣は複雑そうにハサミと珠莉を見比べる。
「怖かった?……でも、よく頑張ったね」と優しく声をかける。
珠莉は、璃都の手をしっかり握りしめながら、小さくうなずいた。
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