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最近、勇斗の様子が少しおかしい気がする。
いや、おかしいっていうか、…んー…いつも通りではあるんだけど、ことあるごとに俺をみてる気がする。自意識過剰なだけかなって思ったんだけど、なんか、違和感?
もともとメンバー愛に溢れまくった男だからメンバー達のことよく見てるし、俺に対してもそうだったんだけど、前より見られてるなーって頻度が上がった気がする。
あと、見る目が…なーーんか、目に浮かぶ色が違うって言うか…いや、うーん…気のせいかな…。
見られてるかどうかなんて意識したこと無かったから、前からそうだったのかも。自信なくなってきたわ。
まあ、いいや。
別に嫌悪感とかそう言う感じじゃないし、どっちかっていうと…あの、あれ、人懐っこい犬が、人間ダイスキ!みたいにこちらをみてる視線?に近い気がする。知らんけどね。
ここ最近の忙しさにメンバーへの愛が更に激重になったんだな。たぶん。
そんな取り留めのない考えを頭のすみに追い出し、タブレットに目を向ける。
次の個人でやる仕事について書いてあるんだけど、ちょっとディレクターさんかプロデューサーさんに事前に確認が必要そうかも……。
無意識に唇に指を這わし、考え込んでると不意に勇斗から耳を疑うような台詞が飛び出してきた。
「あー……キスしてぇ……。」
「はぁ?」
こいつ急になに言ってんの?
ボソッと誰に向けるでもない言葉に、俺は怪訝な顔で勇斗に目を向ける。
「え、なに?」
当の本人はキョトンとした顔でこちらを見てる。
「え…なに?じゃないんだけど。」
「えっ?」
えっ…まさか無意識?
いや、ここには俺しかいないのに意識して言っててもキモいけど…
「…お前、無意識なの?いま、キスしてえって呟いてたけど。」
「うそ、まじ?」
え、まじで無意識で呟いたの?
俳優の仕事でキスシーンとかは普通にあるけど、アイドルな訳だし、プライベートな性愛を匂わせる(?)発言は控えた方がいいだろ。
「欲求不満なわけ?俺らアイドルなんだから変なこと呟かないでよね…。」
俺がそう言うと、勇斗は笑いながら謝る
「ごめん、ごめん」
「まぁ、今は俺しか居ないからいいけどさ…。」
そう言って俺はまたタブレットに視線を戻す。
だから、気付かなかったんだ。
勇斗が俺の唇をじぃっと見つめ、なにかを思案してるだなんて。
カタンと音が聞こえ勇斗が席を立った気配がする。トイレにでも行くのかと思ったのに、どうやら俺の方に来たらしい。
なんか聞きたいことでもあるのか?
「…?なに?」
そんなに広くはない楽屋なんだから、普通に座ってたとこから声かけりゃいいのに。なんて考えて、勇斗を見上げる。
「ごめん」
ごめん?え、なんの謝罪?
なんて、ぽけっとしてたら見上げた顔にすぅっと勇斗の大きな手がかかり、顔の向きをそのまま固定される
「は……ん!?」
意味がわからず、名前を呼び掛けようとしたその瞬間、なぜか勇斗の顔がめちゃくちゃ近くにある。0距離。マウストゥーマウス。
……キスされてる。
え、何故?
「んー!??…むっ…」
勇斗の身体を退けようと押してみるが、その手首を捕まれてしまう。
「なにす…っ!!」
一瞬、唇が離れたから顔をそむけ文句を言おうとした瞬間、顔を勇斗の方にくいっと戻されまたキスされる。
なぜ!!???
しかも、文句を言おうとして半開きだった唇の隙間からするりと勇斗の舌が俺の口内に入ってくる
「んぅっ…?!……!!…ン…ふぅ…やめ…!…っ……ん…」
舌を引っ込めようとしたが、絡めとられて貪られる。
なんとか離してもらおうとするが、全然離さねぇな、こいつ。えっ、まさかさっきのキスしたい欲をふざけて俺で満たそうとしてる?なんで?
意味わかんない。意味わかんない。
なんでこんなちゅーされてんの?
やば、息継ぎ間に合わん…苦しくなってきた
「ン…ふ…ぅ…ンン!!…」
離せ、苦しい!その念を込めて
捕まれてない方の手でどんどんと勇斗の胸を叩くと、やっと離してもらえた。
「ンン…ッ…ふぁ…はぁ…はぁ…っ、はっ…ぉ、まえ…!なにすんだ!!」
肩で息をしながらも、俺は文句を言うためにガタッと椅子から立ち上がる。
くそっ、こいつのが背が高いから見上げるしかないのがムカつく。
「なにって、キスだよじんちゃん♡」
は!?
「おま、…キッ、キスだよじゃねぇ!どういうつもりだ。」
キスされたのはわかってんだよ。
限度があるでしょ!明らかにやりすぎ!!意味わからんて。
混乱してる俺は、メンバーもファンもいない空間で、動画もなにも回ってない完全にオフな状態でキスされてるにも関わらず、いつもの悪ふざけの延長だと思い込み、勇斗に文句を言う。
「だって、じんちゃんが可愛いから」
返ってきたのはそんな言葉。
こいつ俺のこと馬鹿にしてるの?
も〜〜なに!?
「はっ!?ふざけるにもほどがあるだろ!」
「ふざけてないよ、食べちゃいたい♡」
文句を言う俺に対し、勇斗はにこやかな顔でそんなことを言い出す。
「きしょっ!えっ?!欲求不満すぎて頭おかしくなったの!?バカなの?」
やば!馬鹿じゃん!
距離感バグりすぎてる…
更に文句を言おうと口を開いた瞬間
「いや、本気」
そんな声が響く。
さっきまでのふざけたみたいなトーンじゃない、声。
「…は?」
「じんちゃんはバカだね、逃げてくれればよかったのに。」
そう耳許で囁いてくる勇斗。
耳に息があたりゾワッとする。
「ヒッ…はやと…?」
え、なに?
にこやかな顔なのは変わらないのに、勇斗の射貫くような視線が俺を刺す。
瞳にゆらゆらと揺れるような光があるように見えて、それがなにかはわからないけど、なんかヤバイ気がして無意識に後退りをしてしまう。
なんだか、肉食動物に狙われた獲物の気分だ。
じりじりと後ろ下がってたのに壁に背がついてしまい、これ以上後ろには行けない。
俺は困惑したまま勇斗を見つめる。
横に逃げようか、そんなことを考えてると、勇斗は俺の顔の横に手をつき俺の逃げ道を塞いでしまう。
ほんとにどうしたんだ?
疲れすぎて変になったのか?
仕事多すぎ?休ませたらもとに戻るか?
「プライベートでキスするなんて、ふざけててもしたことないでしょ?」
いろんなことをぐるぐる考えてると、勇斗がそんなことを言い出す。
仕事でも動画でも何もないのにプライベートでメンバー間でキスしてたらやばいし、仕事でも口にはしないだろ。
しないから混乱してるんだよ俺は。
「…そりゃ、そうだけど…じゃぁ…なんで」
勇斗がなにを考えてるのかわからなすぎる。
「なんでって、キスしたかったから。」
はい?
「いや、意味わからんて。」
「そのままの意味だよ、俺が、仁人にキスしたかったからしたの。」
「…は?いや、え?」
えっ、どういう意味から?
キスシタカッタカラシタ??
「…かわいいね」
なにを言ってるのこいつ。
真顔で可愛いねって、なに。
ふざけてよく言われる言葉なのに、なぜかじわじわと顔が熱くなる。
「は?…いみ、わかんないって…ちょ…もう、どいて…」
「照れてる?」
「てれてない!意味わかんない!どいて」
ほんと意味わかんない
「やだ。可愛すぎる仁人が悪い。」
「は!?」
なに言ってるの、かわいすぎ?はい?
「だから、もう一回キスさせて」
「!?、やだよ!」
ほんとになに言ってるの???
「拒否権はありませーん」
そんなことを言って俺に迫る勇斗に、逃げようとするが、押してもびくともしない。
「なんでっ、どいて」
俺も男なのに、全然抵抗できず情けなくなる。なんだこのフィジカルお化け!!
勇斗が更に俺に迫ってきて、びっくりして反射的に目をぎゅっと瞑る。
あ、ヤバイ、そう考えたその瞬間
「かーわいっ…」
ぼそっと呟きが聞こえまた唇を奪われる
「ンッ…!!」
逃げようと右往左往してた両手をつかまえられ、恋人繋ぎみたいにぎゅっと握り壁に押し付けられる
「…っ…ぅん……ふぁ…ゃ…!…っ」
やめろって言いたいのに、また舌を入れられ口内を激しく掻き回される。
互いの唾液が混ざりくちゅくちゅと音が鳴り脳内に響く。なんで、どうしてなんて考えながら舌をぢゅぅっと吸い上げられ、言い様のない快感が走る。
「は…ゃ……!!…ぁっ…やめ…ンッん」
やめてくれと言いたいのにでてくる声はくぐもった鼻から抜ける声で、無性に恥ずかしい。
こいつ、キス上手すぎじゃない…?
意味わかんない、やばい、頭がふわふわする。キスってこんな気持ちいいものだっけ……?
口内を貪られながらよくわかんない考えが浮かぶ。
「ンン…ぁ…っ…」
やばい、力抜ける…そう思った瞬間膝がかくんっと折れる。そんな俺の腰を勇斗が支え、やっと唇を離してもらえた。
放心状態で勇斗を見上げると
「…じんちゃん、キスで腰抜けちゃったの?」
と、ギラギラした目でそんなことを言われる。あ、これ、欲に濡れた目だ…。
なんで俺が勇斗にこんな目むけられてんだろ…?
「……るっさい」
「気持ちよかったんだ」
やばい、頭が回らないけど
勇斗の馬鹿がなんか言ってる
「…しらない、うるさい、ばか。」
とりあえず俺は頭にでてきた文句をなにも考えずに口からだす。
「あほ、えっち、ばーか、ばーか」
「えっちってお前、襲うよ?」
低い声でそんなこと言うな
「ゃ、」
いやいやと首を振るしかできず、ほんとに自分が情けない。
「ほんっっと、可愛すぎね?」
またなんか言ってる。
「…かわいくないし、ばかじゃないの」
そんなやり取りをしてるうちに、呼吸が整い、抜けた力が戻ってきたので自力で立つ。
…いや、別に気持ちよかったからじゃなく!びっくりして!抜けた力ね?違うから、気持ちよすぎて力抜けたとか…そんなの…違うから……!
心のなかで誰に言い訳してるんだって感じだけど、そんなことを考えながらも俺は勇斗から少し離れ、今度こそちゃんと意図を聞こうと顔を見つめる。
「お前、…ほんと、なんなの急に」
「だから、俺が仁人にキスしたかったの」
返ってきたのはそんな答えにもならない答えで、
意味がわからん。なんで、俺に?
「………なんで」
「好きだから」
……???
「…………はい?」
すき…?スキ?隙?鋤?
「好き」
「誰が?」
「俺が」
「誰を?」
「仁人を。」
「いやいや、え、いや?な、仲間として?」
俺は混乱してそんなことを聞き返す
「仲間としてだけなら、あんな濃厚なディープキスはしないでしょ(笑)」
笑いながらあっけらかんと言う勇斗。
「でぃっ……!…」
え、え、え?
つまり、その、恋愛的な意味で好きってこと!?えっ、いつから?
「仁人のことが恋愛的な意味で好きだよ、愛してる」
恥ずかしげもなくさらっと追い討ちをかけてくる勇斗。
「あ!?あいっ……」
「俺もまさか長年連れ添ってきた相棒にこんな感情抱くとは思ってなかったんだけどさぁ。好きなんだよね、仁人の全部が。」
「ぁ…ぁ…」
最近の視線の違和感の正体は、仲間に向ける友情から愛情に変わったからってことなのか…?
「だからさ、これから覚悟しろよ?」
覚悟?なんの?
「ぇ…?」
「全力で落としにいくから。」
そう言って勇斗はニヤッと笑った。
あぁ、自信満々なこの顔、失敗するわけないと信じてる表情。
あ、俺、終わった。
逃げられないやつだ。
勇斗を恋愛対象としてみたことなんてないし、今考えても全然、そのキスしたいとか…そう言う好きとか…愛してるとかは、わかんないけど、でも…
仕事でもない時に急に、男に無理矢理キスされて、しかも、あんな深いやつされたのに気持ち悪いって思ってない時点で、もう未知の世界に片足を踏み入れてるのかもしれない。
他の男に同じことされたらと考えたら悪寒が走るし超気持ち悪いけど、勇斗だから別に大丈夫……そんなことを思う俺は大概勇斗のことが好きなんだよね…。
この好きと言う感情は
今は、まだ、仲間としてだけど
これが恋愛感情になるのはそう遠くない…
そんな予感がした。
End
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
後書き
大混乱なjntくんでした。
小説書くのってむずかしいですね。
いつか、この続きで恋愛感情になってくとこも書きたいなぁ……。とは思っています。(書けるとは言ってない。)
読んでくれてありがとうございました。
コメント
2件

コメント失礼します。とても好きな展開でした✨可能であれば続きが読みたいです!!応援しています
あー、もうめちゃくちゃドキドキしながら読んじゃいました…!仁人の「意味わかんない」が連発する感じ、すごくリアルで、こっちまで混乱してしまいました(笑)。勇斗の急な告白とあの自信満々な笑顔、ヤバいですね。ラストの「逃げられないやつだ」で終わるところ、最高に続きが気になります〜!仁人がこれからどんなふうに気持ちに気づいていくのか、めっちゃ楽しみにしてます✨