テラーノベル
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保健室のベッドで、若井の腕に包まれ、
まるで長い春の夢を見ていたみたいだった。
でも、チャイムの音が2人の世界を
そっと現実に引き戻していく。
これ以上はサボるわけにもいかない、
と僕は思う。
元貴『…そろそろ、戻らなきゃ、』
僕がそう言うと、
若井は少し残念そうにため息をついた。
滉斗『…あー、やっぱ戻んなきゃ駄目かぁ、』
元貴『駄目…って、』
思わず笑ってしまう。
でも、本当は帰りたくないという
気持ちが僕の中にも少しだけ残っていた。
ベッドからゆっくり起き上がり、
ぐしゃぐしゃになった制服を慌てて整える。
ふと前を見ると、若井がじっと僕のことを
見つめている。その視線はまだどこか熱っぽい。
どうしよう、顔、多分まだ赤い…
妙な沈黙が流れる。けれど不意に――
……今度は、僕から、
そんな気持ちが胸に湧いてきて、
僕は小さいつま先立ちになり、
カーテンの影で若井の顔をじっと見つめた。
元貴『ねぇ…目、瞑ってて、』
僕が言うと、若井は少し戸惑いながらも
素直に目を閉じてくれる。
胸の鼓動がうるさいほど高鳴る。
それでも、僕はそっと首に手を回し、
若井の唇に自分からキスをした。
控えめで、だけどちゃんと甘いキス。
僕が吸い寄せられるような感覚だった。
キスを離すと、若井の耳が赤くなっていて、
今度は僕がくすりと笑ってしまった。
元貴『…ごめん、最後に、//』
そう囁くと、若井は目を丸くして僕を見つめ、
それから本気で照れくさそうに笑った。
そのまま、ふたり手を繋いで廊下まで歩いた。
教室のすぐそばで、僕たちは静かに手を離す。
扉を開けると、
教室の中がいつもよりざわついていた。
『わー!待ってたぞー!
どうしたの、!? 2人で…笑』
『元貴、顔赤いけど大丈夫?』
『保健室サボりとかリア充かよー笑』
クラスメイトたちの声が、
一気に押し寄せてくる。
僕は、あっという間にみんなに
囲まれてしまった。
顔がますます熱くなって、
『や、ちょっと体調悪くて…//』と
しどろもどろに言い訳をする。
でも、視線が僕の髪や首元にちらちら
向けられているのが分かった。
『え、元貴、なんか雰囲気変わった?』
『元貴と若井、最近距離近いよな?』
そこでハッとして若井の方をチラリと見ると、
若井は素っ気ない顔をしつつも、
耳がほんのり赤い。
みんなの冷やかしに乗ったフリをしながら、
僕はほっとしつつ席についた。
机の下で、
僕の小指と若井の小指がそっと絡まる。
誰にも気づかれないように――
でも、心がどこか軽く、
温かく浮かび上がる。
日常の風景が、不思議と今だけ特別に見えた。
そっと笑いながら、
今日が少しだけ好きになった自分がいた。
コメント
1件
うん、もう分かってた、尊過ぎるってことを!!!! あと!クラスメイト、ナイス過ぎる!!!!