放課後の教室は、さっきまでのざわめきが嘘みたいに静まり返っていた。
部活にいくAkPrや下校するKty。
生徒が1人、また1人と消えていき、最後に残ったのは俺とAtとTgだった。
Tg「チャンスだよ !」
そう言ってTgは俺の背中を叩き、にやにやしながら教室を出て行った。
その瞬間から、俺の心臓は暴れ始めた。
机に広げていた教科書やノートを閉じると
Atが近づいてきた。
ゆっくりとした足取り。
教室に響く靴音がやけに大きく聞こえて。
心臓の音と重なっていく。
At「これ、返す」
短くそう言って返されたのは、さっき貸したノート。
ページをめくると、俺が写した字の上に、几帳面に並んだAtの筆跡が重なっている。
1字1字、丁寧に。
普段からのギャップに、胸が熱くなった。
Mz「あ 、ありがと 。役に立った ? 」
ぎこちなく声を出すと、Atは一瞬だけ目を伏せ、それから俺の瞳を真っ直ぐに見た。
At「… Mz太の字 、読みやすい」
何気ない言葉。
だけど、鼓膜を震わせるその低い声が、
体の奥まで染み込んでいく。
頬が一気に熱を帯び、呼吸さえ乱れる。
俺が狼狽えていると、Atはまだ視線を俺に向けていた。
そのまま数秒、無表情のままじっと見つめられる。
目が離せない。
逃げられない。
At「授業中 、ずっとこっち見てただろ」
不意に落とされた言葉に、喉が詰まった。
Mz「ち 、ちがっ … !」
慌てて否定しかけた声が裏返る。
心臓はもう悲鳴をあげていて、耳まで真っ赤になっているのが自分でも分かる。
Atはそんな俺を眺めて
ほんのわずかに
_口元が緩んだ。
それは笑った、と言い切れるほど大きな変化じゃない。
でも、俺の目には確かに見えた。
ずっと無表情だったAtが、俺のせいで表情を崩したのだと。
At「… 変なやつ」
そう一言残してAtはまた窓際の席に戻っていった。
まるで何もなかったかのように、カバンを開けて荷物をまとめている。
でも俺の心臓は暴れっぱなしだった。
ほんの一瞬の表情に、完全に射抜かれてしまった。
_これ、堕ちかけてんのか ?
俺が勝手に夢見てるだけ ?
アイツらに話せばきっと、
「それはもう脈アリだろ !」
と大騒ぎするだろう 。
今の俺には、Atが残した熱をどうすればいいのか分からなかった。
ただ胸に手を当てて、抑えられない鼓動を必死に堪えるしかなかった。
コメント
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最高すぎて口角が行方不明になりました👼🏻💕続きも楽しみにしてます🫶❤️🔥