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若井と大森は高野の部屋を調べるため2階へ向かった。藤澤は「俺はホールで待つ」と言い、その態度に若井は不信感を募らせる。高野の部屋は整然としていたが、机の上にメモが残されていた。
「隠し部屋に真実がある。探せ。」
高野の筆跡だった。若井は大森を見る。
「こいつも綾華と同じで、何か知ってたのか?」
大森は黙って頷き、部屋の壁を調べ始めた。すると鏡の裏に隠されたスイッチを見つける。押すと壁が軋みながら開く。
隠し部屋が現れ、埃っぽい空気が流れ出した。中には古いファイルや写真が散乱していた。
ファイルには、10年前の失踪事件の詳細が記されていた。
「5人の若者、鏡館で失踪。生存者1名、詳細不明」
これまでの部屋でも見てきた事件の詳細。
写真には5人の顔。その1人が藤澤に酷似していた。
「やっぱり藤澤だ」
若井は写真を手に取り、声を震わせた。
「こいつ、10年前にここにいた、 生き残ったってことか?」
大森は写真を一瞥し、静かに言った。
「確証はないよ。前もだけど、似てるだけかもしれない」
だが、その声には確信が欠けていた。若井は大森の瞳を覗き込み疑念が膨らんだ。
「お前も何か知ってるだろ? なんで隠す?」
大森は一瞬目を逸らし、こう答える。
「若井を守りたいだけだよ、ね?」
その言葉に、若井の心は揺れた。
愛を感じる一方で、大森の曖昧さが「疑心暗鬼」を呼び戻した。
昼過ぎ、若井は藤澤に呼び出された。館の裏庭、雨に濡れた木々の下で、藤澤は若井をじっと見つめた。
「大森が何を隠してるか、知りたいか?あいつは10年前の事件に関わってる。俺が知ってるのは、それだけじゃない」
藤澤の声は低く、執着に満ちていた。
「お前が10年前にここにいたんだろ?」
若井は写真を突きつけた。
「この顔、傷痕、全部繋がる。 話せ、藤澤」
藤澤は笑いながら言う。
「よく気づいたね、そうだよ。俺は 10年前の生き残り。この傷は….あの夜、鏡館で起きたことの証。」
そう言って藤澤は左手の傷跡を晒し、目を細めた。
「でもね若井、俺がここに来たのは若井をもう一度手に入れるためだよ。大森なんかには渡さない。」
若井の胸が締め付けられた。3年前、藤澤に裏切られた記憶が蘇る。
あの突然の別れ、説明のない失踪。藤澤の執着は、愛ではなく支配欲のように感じられた。
「お前は俺を裏切った。なんで今さら…」
「裏切った?俺は若井を守るために去ったんだ」
藤澤は一歩近づき、若井の腕を掴んだ。
「あの時、俺は….若井を失いたくなかった。でも、鏡館の呪いを知っちゃった。若井、早く気づけよ、思い出せよ!!!」
若井は藤澤の手を振り払った。
「呪い?ふざけるな。綾華や高野が消えたのは、お前の仕業じゃないのかよ!?」
藤澤の目が一瞬揺れた。
「俺じゃない。ただ……大森を信じるな。あいつは…鏡そのものだ」
その言葉の意味を、若井は理解することが出来なかった。