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(──わかってた。そんなこと)
誰にも必要とされてないなんて、とうの昔に知っていた。
誰も助けてくれないし、誰も本気で心配なんかしてない。
父も、晃司も、沙耶香も、玲央菜も──
みんな、「壊していいおもちゃ」だと思ってる。
日下部でさえ、ただ一時の興味か、退屈しのぎ。
そんなこと、全部。
(……でも、“笑ってた”のかよ)
自分が、ただ“生きてるだけ”の存在として、
あんなふうに、笑われてたなんて──
(“それでも生きるしかないんだね”──
それを見て、心の中でずっと嗤ってたのか……)
そう思った瞬間、呼吸が止まった。
身体のどこかがじゃなく、意識の芯がねじ切られる音がした。
生きるしかないって思ってた。
泣かないことが、負けないってことだと、ずっと信じてた。
でも──
(それ、哀れだったんだ)
同情されることが、一番怖かった。
惨めって、言われることよりも怖かった。
「それでも、生きてんの?」って言われるのが、いちばん嫌だった。
(……それが、全部、顔に出てた?)
玲央菜は笑っていた。
ずっと前から、気づいていた。
遥がどれだけ「泣かずにいる」ことにこだわっていたか。
その姿が、どれだけ滑稽で、無様だったか。
──だからこそ、壊したくなった。
(……オレ、全部……バレてた)
誰にも見せないようにしてたのに。
「痛くないふり」も、「耐えてるふり」も──
ぜんぶ。
(……何の意味があったんだ)
もうとうに壊れてた。
気づいてなかったわけじゃない。
ただ、「気づいてないふり」をしていたかっただけだ。
それすらも奪われた。
(……もう、ほんとうに、何も残ってねぇ)
涙じゃなく、喉が乾いて仕方なかった。
この期に及んで、まだ「泣くもんか」なんて思ってる自分が、一番きらいだった。