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「いつもご飯どうしてるの?」
すると、料理をしながらもオレを気にかけて話しかけてくれる彼女。
「う~ん、まぁ外で食べて来ることのが多いかな。だからたまに修さんとこでも食って帰る」
「へ~そうなんだ。修ちゃんとこで私も食べて帰ってるけど全然気付かなかった」
「オレはたまに見かけたけどね」
「えっ!そうなんだ!? 私そんな前から知ってたの?」
「まぁ」
「いつから?」
「秘密」
そう。
お互い常連の店で、つい居心地がよくて、そしてあなたに会えるかもしれないと思って、時間が空けば気付いたらオレは店にその頃もずっと通ってた。
運良く見かけるあなたは、一人の時間を楽しみながらも、美咲さんとの時間も楽しんで、ここで見かけるあなたのいろんな姿が、オレにはその頃からずっと眩しかった。
だけど。
そんな頃からずっとオレはあなたを知っているのに、こんな風に一瞬でもオレに気付かなかったあなたにちょっと悔しくなって。
ずっと前から想い続けている気持ちは、まだ隠したくなった。
あなたにもオレがあなたを見つめ続けた時間の、ほんの少しでもいいから、同じようにオレとの時間をあなたの中に刻んでほしい。
「そっちはそうやってたまに家で作ってるんだ?」
「うん。外で食べて帰るのはたまにかな。それ以外はお金もかかるし家で作って食べた方が楽な部分多いし。料理作るの嫌いじゃないからね~」
そうなんだ。
その話を聞いてまた急に家庭的な部分が見えて、そのギャップにグッとくる。
「じゃあさ。家で作る時、二人分作ってよ」
「なんで?」
「オレの分」
「え~。何、今日以外も食べにくんの?」
「一人分も二人分も同じじゃないの?」
「いや、そりゃ変わんないけどさ~」
「その分ご飯代払う」
どんなチャンスでも逃したくなくて。
なんとなく、面倒見が良さそうな、誰かにお願いされたら断れない、そんな優しいあなただと思うから。
「私食堂のおばちゃんみたいじゃん」
「そういうつもりじゃないんだけどさ。あっ、じゃあさ、一緒に作ってもらったその分ご飯ご馳走する。それならどう?」
「う~ん」
無理やりのお願いだってわかってる。
だけど、もしこの誘いに乗ってくれるなら、ご馳走すると言って、今度は彼女と食事にも行ける。
オレ的にはどちらも幸せな状況。
だけど、やはり彼女は気が進まないのか、悩んでいるみたいで。
「お互い今恋人もいなくて所詮ドキドキさせ合う関係なんだし、恋人っぽいことしてもありだと思うんだけど」
例え、恋人っぽいそんな真似事だってオレは構わない。
本気の関係じゃなくても、あなたがそんな風にオレにその時間だけでも接してくれるのなら。
あなたの手料理が食べれて、あなたと食事に行ける。
あなたの気持ちがただそこになかったとしても、今はあなたとそんな時間を過ごせるだけで、きっとオレは幸せだから。
「早瀬くんがご飯助かるだけでしょ~。まぁ別にいいけどさ」
「じゃあ決まり」
すると、彼女は嫌な素振りを見せるでもなく、軽くオレの誘いに乗ってくれた。
だとしたら、こうやってオレと過ごす時間が嫌じゃないってことだよね?
オレにはそんな些細なことでも嬉しくて期待をしてしまう。
「じゃあさ、ご飯いる時早めに連絡してね。用意あるから」
「オッケ。じゃあ、行けない日だけ前もって連絡する」
「えっ。それ以外毎日食べに来ようとしてんの?」
「当然」
当たり前じゃん。
あなたに会えるなら、あなたの手料理が食べれるなら、当然オレは毎日だってお願いしたい。
「いや、そっちも外で食べる都合や他の女性との約束もあるだろうし、必要な時連絡してくれたらいいよ。私も無理なら無理で断る」
なのに、なぜか彼女はそんなことを言う。
他の誰かとなんて約束するはずないじゃん。
ちょいちょいオレの女の影を意識しているのか、そんなことを言う彼女が少し気になる。
そんな風に言うってことは、オレにそういう存在がいても平気なのかとまたモヤモヤしてしまう。
「今他にそういう相手いないし」
だけど、彼女にだけは誤解してほしくなくて。
なのに、なんか誤解されてそうな気がして。
ホントはあなただけだと言ってしまいたくなるけど。
だけど、まだ彼女の気持ちが掴めなくて、他の女の存在は否定する。
「あっ、そう、なんだ」
もしいたらあなたはどうなの?
それでも平気でオレには何の感情も感じず、だけど料理は作ってくれるの?
それこそ都合いいだけで最低な男でしょ。
あなたはそんなオレでもいいの?
そんな男でもあなたは平気なの?
「ってかさ。ここ会社じゃないし」
「うん。わかってるよ」
「だからさ。その呼び方やめない?」
そして今度は、さっきから気になっていたことを彼女に指摘する。
「呼び方?」
「今はプライベートなんだし、下の名前で呼んでよ」
名字で呼ばれるその呼び方が、やっぱりよそよそしくて距離を感じて。
会社の仲間としてしか、なんか接してくれなさそうな気がして。
少しでもオレを意識して距離をもっと縮めたいオレは、すかさず名前で呼んでほしいと彼女にお願いする。
「いや、でももう早瀬くんのが慣れてるし」
慣れてるとしても、そんなままじゃあなたはオレをいつまでたっても意識しないでしょ?
名前を呼べば少しでもそんな雰囲気になって、オレを意識してしまうはず。
「ダメ。ドキドキし合う関係なんだし、そこはちゃんとそっちも呼ばないと」
だから当然オレは認めるはずもなくて。
あなたもオレにもっとドキドキしてほしいから。