コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「慣れないな~」
「慣れなくても仕事じゃなければ呼ぶのが条件ね」
「何その条件」
オレが勝手に決めた二人の条件。
でも勢いでそうやって言い切れば、なんかそんな気がしてくるでしょ?
だから、オレはあなたがちゃんと呼んでくれるまで、こんな風にずっと言い続けるから。
「わかった。で、コーヒーはブラックでいい?樹くん」
「ブラックで。ってか、そこ、”くん”いらないから。樹ね」
どさくさに紛れて下の名前は呼んでくれたモノの、くん付けがまだ気に食わない。
呼び捨てにして、そのドキドキをあなたには味わってほしい。
オレの名前を呼んでドキドキしているあなたが見たい。
「くん付けでいいじゃん。会社では早瀬くんなんだし」
「会社ではそれでいい。でも会社以外ではちゃんと違いつけないと。呼び捨てで」
さすがに会社ではそれでいいけどさ。
会社以外ではちゃんとオレを意識してもらわないと。
「ハイ。ブラック」
「どうも」
彼女が淹れてくれたコーヒーを受け取る。
「今までさ~こうやって彼氏に手料理作ってあげたの?」
淹れてくれたコーヒーを一口飲んで、結局気になってるモヤモヤの理由を尋ねてしまう。
「あぁ。うん。たまにね」
「へ~」
ほら。
結局聞いたところで、またオレがモヤモヤするだけなのに。
ただ嫉妬が大きくなるだけなのに。
出会っていない時の誰かに嫉妬するなんて、今までのオレでは考えられなかったけど。
誰かを必要以上気になることもなかったし、こんな過去にまで気持ちが揺れることなんて当然なかった。
なのに。
彼女の過去も知りたくなって、必要以上なことも聞きたくなる。
「忙しい人だったから、そんなしょっちゅうではなかったけど」
「へ~」
なんかその言い方が過去とはいえ、オレの入り込めない、彼女がなんか遠い存在に思えて。
オレは自分で聞いたくせに、素の気持ちが出てしまい、素っ気なく反応してしまう。
聞きたいけど聞きたくない、そんな男のプライドが邪魔をして。
オレ以外の男の存在を聞きたくなくて。
オレ以外の男のことを思い出してほしくなくて。
彼女を好きになってから、こんな些細なことでも、彼女には嫉妬してしまうことを、オレは初めて知った。
「オレなら嬉しくて無理やり時間作ってでも手料理食べたいけど」
だから、オレはさり気なくアピールする。
「えっ?早瀬くん、そんなタイプなの?意外」
ただそれはあなたの手料理限定だけど。
あなたが作ってくれるならどんな時でも嬉しいのに。
「樹ね」
そしてまた呼び方が元に戻っていることを指摘。
「あっ・・」
「オレなんだと思ってんの? そんないい加減な男に見える?」
でも今それよりも、彼女の中にあるオレのイメージが少し気にかかって確認する。
「見えたっていうか、勝手にそう思ってた・・」
そしたら案の定の答え。
「オレの何も知らないのに?」
「だよね。出会い方と噂で出来上がったイメージ・・?」
今まで好き勝手やってたツケがこんなところで回って来た。
オレの何も知ってもらえてないのに、知ってもらう前から勝手に望まないイメージがついてしまっているようで。
そうじゃなくても、きっとこの人はまだ恋愛に前向きではなくて。
なのにこんな男が相手ならそりゃ余計そんな気持ちにならないよな。
真剣な相手に、すでにそんな風に思われてしまってるなんてな・・・。
「噂やイメージなんて誰かが勝手に作り上げたモノなのに。それがホントのオレとどれだけ一致してるかなんてわかんないよね」
だからそのイメージを壊したい。
別に誰に何をどう思われてもいいけど。
彼女にだけは、目の前のこの人だけには、今はちゃんと真剣に向き合っているということを知ってもらわないと。
「てか逆にあの出会いは運命的だとは思わないワケ?」
「それこそ意外!またそんなこというタイプなんだ」
オレはあなたと出会えたことは運命だと思ってるよ?
こんなどうしようもないオレをあなたは変えてくれたんだから。
「出会い方なんて、一つの単なるきっかけなだけ。要はオレが実際どんな男なのかが肝心だと思わない?」
あの日の出会いは、きっとあなたは軽い出会いだと思っているだろうけど。
でも、オレにとっては、ようやく待ち望んでいた瞬間で。
結局どんな出会い方だったとしても、大事なのはホントのオレを知ってもらうこと。
あなたへのこの気持ちをわかってもらうこと。
イメージじゃない、あなたの目の前にいる今のオレを見てほしい。
あなたといるオレを知ってほしい。
「まぁ、確かに・・」
「実際、オレが想像通りの悪い男なのか、そうじゃないのか。・・・どう思う?」
だから、今、彼女がオレをどう思ってるのかが気になって、彼女にそんな質問をなげかけてみる。
ホントはあなたは今オレの事どう思ってるの?