テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
52
歌大好き!
78
#異世界
あのち
1,469
16
「 痛い 」
────────────────────
保健室
「…」
何故か風間も、白宮も、天城もいた。
松本 「…」
松本も、俺の事をずっと見てた
帰る時間なのに。
葛西 「…消毒するね」
「……痛くねえって。」
俺は無意識に言っていた
葛西 「…」
葛西の手が止まる
余村 「……ねえ」
「…」
余村 「嶺二くん」
顔を上げる
余村 「僕、ちょっと今怒ってるよ」
全員止まる
「…は?」
余村 「なんで今日、学校休んだの」
「……」
余村 「なんで怪我するまで喧嘩したの」
「…」
余村 「なんで苦しいのに何も言わないの」
「…別に」
余村 「別にじゃない」
空気が止まる
余村 「君さ、知ったんでしょ。」
「……」
余村 「ひとりじゃないのかもって」
「…!」
余村 「なのに戻ろうとした。 」
「…」
余村 「怖かったんだよね」
止まる
余村 「期待したくなかった 」
「…うるせえ」
余村 「だから先に離れた」
「うるせえ」
余村 「なのに誰も追わなかったら、少し寂しかった」
「うるせえ…!!」
余村 「じゃあ言ってよ。 」
空気が静かになる
余村 「何が苦しいの」
「…」
何が苦しい…
分からない。
今までそんなこと、気にしなかったから。
気にしたら終わりだと思ってたから。
「…知らねえ」
余村 「知らねえ じゃないよ。君はいつも僕達に気持ちを話さない。」
余村 「僕達、友達じゃなかったの?」
「……」
違う。
違うのに、なんで返せねえ。
余村 「返事して」
「…」
余村 「君だけずっと我慢して、君だけ勝手に消えて」
委員長が少しだけ俯く
余村 「…それ、仲間のやることなの」
風間 「……」
みんな、何も言わない
余村 「…君さ、痛いって何も言わないよね」
「……」
余村 「苦しいも言わない、助けてとも言わない」
委員長が少し笑う
余村 「でもさ、言わないから無い事にはならないんだよ」
止まる
余村 「僕、委員長で沢山ここの生徒を見てきたから分かる。」
静かになる
余村 「痛くならない人は自分で頬を殴らない 苦しくならない人は学校から逃げない。」
「……!」
余村 「君、ずっと限界だったじゃん」
風間 「……」
松本 「…」
違う、違う…!
俺は限界なんかじゃない…!
「…違う」
余村 「違わない」
「違う…!!」
声が出る
「俺は普通だ…!!」
余村 「どこが」
「……」
余村 「喧嘩して、怪我して、休んで、自分自身を殴って。」
委員長が初めて少し声を強くする
余村 「それのどこが普通なの」
「……っ」
余村 「君の普通は、君自身を苦しめてる」
静かになる
返したい。
でも、言葉がない
「……」
余村 「怒ってる理由、分かる?」
「…知らねえ」
余村 「心配してるからだよ」
止まる
余村 「…僕達さ、」
余村が少し目を逸らす
余村 「嶺二くんがいない学校、少し嫌だった」
空気が止まる
風間 「…俺も」
松本 「俺もです」
白宮 「……普通に、心配しましたよ。」
天城 「探したしね。」
葛西 「…うん。」
「……」
なんだよ。なんで。
なんで、そんな顔するんだよ。
余村 「だから」
余村が近づいて、俺の前にしゃがむ
余村 「痛いなら痛いって言って」
「……」
余村 「苦しいなら苦しいって言って」
「…」
余村 「友達、なんだから。」
止まる
その瞬間
「………」
喉が熱い
言葉が出ない。
出ないのに。
「…分かんねえ」
余村 「…」
葛西 「…!」
「…どう言えばいいか、分かんねえ。」
静か
余村も返さないし、葛西も動かない。
何だよ、なんで誰も動かないんだ
言ったろ。
わかんないって。
「……」
余村が小さく言う
余村 「…分からなくてもいいよ。」
止まる
余村 「今まで言わないで生きてこれたなら、急に出来ない。」
「……」
口が勝手に動く
「…言った所で」
静か
誰も動かない。
「…どうせ何も、変わんねえだろ。」
空気が静まる
「…」
しまった、何言ってんだ俺は
閉じろ。
余村 「…誰に」
止まる
余村 「誰に言って、変わらなかったの?」
空気が止まる
「…」
喉が詰まる
返せない
景色が少し遠くなる。
知らない部屋 冷たい床 誰かの声。
【 うるさい、お前が我慢すれば終わる 】
「……」
一瞬戻る
「…知らねえ」
余村 「…」
「覚えてねえ」
葛西 「…嘘」
葛西が静かに言う
葛西 「覚えてない人の顔じゃない。」
空気がまた、悪くなる
余村 「…今日はもう、何も聞かない。」
余村 「でも」
余村が少し笑う
余村 「嶺二くんが話したくなったら、でいいから。」
「…」
返さない。
でも、手だけ少し握る
葛西 「…消毒、いいかな。」
「……おう」
消毒を怪我に付ける
「……って」
余村 「…!」
今日は少し、感じる…かも。
余村 「……今日はちゃんと、言えたね。」
「……」
本当にコイツらは、
……
やさしいな。
コメント
1件
よかった……いや、よかったって言葉だけじゃ足りないな。14話、すごかったです。 「痛い」って言えない主人公の気持ち、すごく伝わってきた。特に「言った所でどうせ変わんねえだろ」のところ、あれは過去に誰かに言われたんだろうなって想像させられて、胸が痛くなった。でもそれに対して余村が「誰に言って、変わらなかったの?」って返す場面、もうそこで全部変わったと思うんです。 保健室の空気がピンと張り詰めてる感じとか、みんなが一言も無駄にしない台詞の配置とか、全部効いてた。ラストの「今日はちゃんと、言えたね」でちょっと泣きそうになりました。この先、どうなっていくんだろう……続きが気になります。