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「……俺、どうしたらいいか分かんねぇよ……」
声が震えて、自分でも情けないくらいだった。
涼ちゃんは俺の背中を撫でる手を止めずに、少し間を置いて言った。
「元貴。……若井はね、すごく正直なやつだよ。
嘘つけないし、ごまかすのも下手。
きっと、君に向けてる気持ちもそのままなんだと思う」
「……っ」
胸がぎゅっと締めつけられる。
分かってた。分かってたけど、
誰かに言われると、もう誤魔化せなくなる。
「でも……怖いんだよ。もし俺が意識して、
変に距離取ったりしたら……壊れそうで」
「大丈夫だよ」
涼ちゃんの声は柔らかく、だけど芯があった。
「君たち二人なら、ちゃんと向き合える。僕が保証する」
その言葉に、胸の奥のぐちゃぐちゃが少しずつ整っていく。
気づいたら俺は、涼ちゃんの胸に寄りかかっていた。
「……涼ちゃん……」
その瞬間。
「…………」
――ギィ、と教室のドアが静かに開いた音。
顔を上げると、入り口に立ってるのは若井だった。
目が合った。
若井の表情は……驚きと、怒りと、寂しさと……全部混ざってて。
俺は息をのんだ。
「……元貴……」
低い声が、静かな教室に落ちた。
若井の声は、聞いたことないくらい低かった。
「ち、違っ……! これ、そういうんじゃなくて!」
俺は反射的に声を上げて、椅子から飛び起きた。
「ちょっと話してただけで!
俺、落ち込んでて……で、涼ちゃんが……っ」
言えば言うほど、空気がどんどん重くなる。
口から出るのは弁解ばかりで、何一つちゃんと伝えられていない。
若井の目が鋭く光った。
「……“涼ちゃん”って呼んでんじゃねぇよ」
「っ……」
心臓が止まったみたいに固まった。
この前まで“藤澤さん”って呼んでたはずなのに…
…気づけば自然に、“涼ちゃん”って。
俺の焦りを見透かすみたいに、若井が一歩近づいてきた。
「元貴……何、涼ちゃんに頼ってんだよ」
「ち、違う……俺は、俺はただ……!」
「ただ、なんだよ」
声が震える。喉がつまって、言葉が出てこない。
違うんだ、本当に。
だけど説明しようとすればするほど、余計に誤解を招くみたいで。
「…俺……」
言葉に詰まった瞬間、若井がぐっと俺の腕を掴んだ。
その力が、普段よりもずっと強くて。
「……元貴、お前……俺のことどう思ってんだよ」
涼ちゃんが間に入ろうと一歩踏み出したけど
――俺と若井の視線が絡んで、外せなくなっていた。