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「……答えろよ、元貴」
若井の声は低くて、でもどこか震えていた。
掴まれた腕が痛いくらいに熱い。
逃げられない。視線も、心も。
「お前……俺にどう思ってんのか、はっきり言えよ」
「……っ」
心臓が破裂しそうだった。
こんなの、言えるわけない。
怖い。怖いのに……。
「……言えよ!!」
若井が声を荒げた瞬間
――俺の喉から、勝手に声が飛び出した。
「……好きだよ!!!」
空気が止まった。
涼ちゃんの目がわずかに見開かれ、若井の手もぴたりと止まる。
「……俺だって、若井のこと……ずっと……」
涙がにじんで、声が途切れる。
本当は隠すつもりだったのに、全部ぶちまけてしまった。
「……元貴」
若井が俺の腕を掴んだまま、小さく名前を呼ぶ。
さっきまで怒気に満ちてた声が、
信じられないくらい柔らかく揺れて。
「……ほんとに、俺のこと……?」
「……あぁ……っ」
答えた途端、若井の顔が近づいた。
怒ってたはずなのに、
目の奥は泣き出しそうなくらい揺れてる。
俺は、逃げなかった。
「……ほんとに、俺のこと……?」
「……うん…」
声を絞り出すと、若井の顔がすぐ目の前にあった。
息が触れそうな距離。
心臓が、痛いくらいに鳴ってる。
その時――静かに立ち上がる気配がした。
「……僕、ちょっと外すね」
振り返ると、涼ちゃんが柔らかく微笑んでいた。
いつも通り優しい顔なのに、どこか全部見透かしているようで。
「二人で、ちゃんと話したほうがいいだろ?」
そう言って扉を開け、軽く手を振って出ていった。
――ガチャ。
静かに閉まる音。
残されたのは、俺と若井。
部屋にはやけに大きく、俺たちの呼吸だけが響いてた。
若井の手が、まだ俺の腕を掴んだまま震えている。
俺も、どうしていいかわからないまま、ただ若井を見返した。
「……元貴」
低く、でも震えた声。
「……言ったな。好きって」
「……うん」
もう隠せない。俺は目を逸らさずに頷いた。
若井の目が、涙で赤くなってる。
それを見た瞬間、俺の胸がぎゅっと詰まった。
「……ばか。俺だって……ずっと……」
若井がそう呟いて、俺を抱きしめた。
熱い。苦しいくらいに強い。
でも、ずっと欲しかった温もり。
俺は目を閉じて、その腕に身を預けた。