「あ、江戸君?!」
ある日、江戸は散歩をしていると、奈良時代に声を掛けられた。
ここは縄文や飛鳥達の住んでいる本家の近くではないし、何故か汗をかいていて誰かから逃げているようだった。
「奈良か。どうした――」
「しっ!江戸君、少し隠れさせてね!」
急な展開に江戸は戸惑うが、ひとまず言うことを聞いて奈良を後ろに隠す。
しばらくすると、前から今までに見た事がない程の勢いで戦国が走ってくるのが見える。
「は…江戸!奈良をこの辺で見なかったか?彼奴、俺愛用の茶器を割って逃げていったんだ!」
――奈良やらかしたな。
どうしようもないなこの人、そうは思いながらも奈良さんを隠してやると言ったのは江戸である。
「知らないな…こっちには来ていないと思うぞ。」
一応そう言っておくと、戦国が去った後に奈良から
「本当に有難い…今度、わえの米分けてやるからな!」
と言い、米俵片手に戦国の行った方向の真逆に走って行く。
「生きて帰ってくだせぇよ…」
そう小さい声で江戸は呟くが、奈良には聞こえていない。
何故かって、奈良の頭の中は
やらかした、殺されるかもしれない――
でいっぱいになっていたからだ。
奈良はその後、何処に隠れようか迷った末に、江戸や日帝達の住んでいる分家に隠れる事にした。
「はぁっ…疲れた…」
家に着くと、インターホンなど知らない奈良は勢よく扉を開ける。
すると扉の音に気付いたのか、陸が中から出てきた。陸は驚いた顔をすると、一言奈良に放つ。
「奈良爺さん、今度は何をやらかしたんだ?」
実は前も一度、家に奈良がいきなりやって来た事があったのだ。
その時は、飛鳥の黒歴史を奈良が煽り散らかした事により堪忍袋の緒が切れたらしく、飛鳥から隠れる為此処に来ていた。
また何かやらかしたのだろう、と陸はあからさまに面倒くさそうな顔をする。
戦国の茶器を割って逃げていると言う事を伝え、まあまあ、中に入れてよ陸君…と頼み込んだ末に、やっと奈良は家に入れてもらえた。
そして座敷に入ると、中には日帝兄弟や日本やにゃぽん、そして…
「お?奈良じゃねぇか」
縄文がいた。
皆で茶を飲んでいるようで、くつろいでいる縄文は、まだ奈良が戦国の茶器を割った事を知らない。
どうしてここに?と問う縄文に奈良は今までの経緯を伝える。
縄文は経緯を聞くと共に、江戸と同様
――奈良やらかしたな。
茶を啜りながらそう思う。
「というか、何で縄文もここに?」
「平安から煎餅を預かってな。ぜひ分家に持って行ってくれって。だからここまで持ってきて、そのまま流れで茶を飲んでるんだ。」
確かに、今日本達は炬燵で雑談をしながら煎餅を口に運んでいる。
納得していると、先程まで雑談の中に混じっていた海がふと口を開いた。
「なぁ奈良爺。前も飛鳥さんに追われてここまでやって来たよな?」
「え?嗚呼。来たな此処に。」
「じゃぁさ、もしかしたら戦国兄ちゃん、飛鳥さん情報で此処までくるのでは…。」
奈良は少し考えると
「あり得る…」
奈良は汗を滲ませ言った。
この家に居れるのはあとどれぐらいだろうか。
するとにゃぽんは突然、ふとしたように少し障子を開けると外をみて勢いよく閉めた。
「せ、戦国兄がいる!!」
気配と殺気がとてつもなかったらしく、にゃぽんはこの世の全てが終わったような顔で奈良に伝える。
コメント
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奈良爺~ッッ!!
奈良爺!お憑かれ!
奈良さんやらかしましたね...( ᐛ ) 生きて帰れることを願っています...🙏