テラーノベル
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翌日は早い時間から水着に着替えて、遊歩道を通って海へ向かった。
白い砂浜の向こうには、朝の陽射しを受けた海がどこまでも広がっている。岸に近いところは透き通った淡い水色で、沖へ行くほど青と緑が溶け合った鮮やかな色へと変わっていた。波が寄せる度、陽の光が水面で細かく砕け、きらきらと輝いている。
透明度が高いからか、浅瀬では白い砂の上に落ちる波の影までくっきりと見えた。
砂浜にレジャーシートを敷いて荷物を置き、パラソルを立て、その下に阿部と宮舘が座る。佐久間、ラウール、向井、目黒、深澤の五人が一直線に海に向かって走り出す。
🩷「ひゃっふーい!」
🧡「おお、思ったより冷たい!」
💛「急に入ったらケガするぞー!」
💜「平気へい、うおっ! 足つった……」
🤍「ふっかさん、おじいちゃんじゃん!」
💜「うっせ! めめ、肩貸して」
🖤「はいはい」
💜「……ちょっとめんどくさいとか思ってる?」
🖤「……ちょっとだけ」
💜「……めめぇ……」
💛「ったく。ふっか、歳考えろ」
💜「ほぼ同い年だっつーの!」
ため息をつく岩本は長めの黄色いサーフパンツを履き、鍛えている筋肉が太陽の光を浴びて輝いている。
目黒は黒、向井はオレンジ、佐久間はビビッドなピンク、深澤は紫、ラウールは白とベージュのサーフパンツ。宮舘は紅い薔薇のサーフパンツにアロハシャツ。阿部は黄緑と緑のグラデーションの水陸両用パンツに、白い半そでのパーカを着ている。
そこに、紺色のラッシュガードを着て青いサーフパンツを履いた渡辺がやって来た。
❤️「どう? 日焼け止め塗れた?」
💙「ばっちり。でも、何度か塗り直す」
❤️「その方がいいね」
💛「舘さんは?」
❤️「俺は先に、阿部と一緒に留守番してるよ。もう海上アスレチックの方にみんな行ったし、照も遊んできて」
💛「じゃあ、あとで交代する」
❤️「戻って来る順番だけ決めといてね」
わかった、と言って岩本と渡辺も海の方へと向かって行った。
💚「舘様はいいの?」
❤️「ん。後でちゃんと行くよ。俺、ああやって走ってくタイプに見える?」
💚「ふふっ、見えない」
❤️「ちょっとのんびりしてから行くから、ちょうどいいんだよ」
💚「そっか」
視線の先には、少し沖にある白い大型の遊具をいくつも繋げた海上アスレチックが浮かんでいる。そこで遊び回るみんなの姿を見て、阿部は笑みを浮かべていた。
❤️「阿部は? 退屈じゃない?」
💚「俺は見てるの好きだよ。ふーちゃんもいるし」
阿部の隣にはカワウソの姿をしたふーちゃんが寝そべっている。
❤️「カワウソだ」
💚「海に馴染むようにしたんじゃない? 昨日のリス園でも楽しそうだったし、一番、満喫してるよね」
❤️「だね……何か飲み物いる?」
💚「みんなも飲むだろうし、あったら嬉しいかも」
❤️「じゃあ、待ってて」
💚「うん。いってらっしゃぁい」
手を振って宮舘を見送る。
💚「みんな、楽しそうだ」
はしゃいでいるみんなの声が聞こえてくる。佐久間もラウールも笑っている。目黒も岩本も笑顔で、向井は派手にアスレチックから落ちている。深澤が落とそうとするのを渡辺が全力で逃げている。
もぞもぞと、ふーちゃんが動き出した。
💚「ふーちゃんも行ってくる?」
「キュ」
小さく鳴いたふーちゃんに、阿部はふふっと笑う。
💚「ふっかのところまで行くんだよ」
「キュウ」
もう一度鳴いてから、ふーちゃんは海に向かって走って行った。
その後ろ姿を眺め、波の音に耳を傾ける。太陽の熱は感じるけれど、頬を撫でる潮風が心地いい。波音と、バシャバシャとした水音、潮の香り。それだけで海を感じられるから、阿部にとってこの時間は苦ではない。
💚「みんな、気にしてないからありがたいな」
阿部が海に入らないことを、当たり前のように思って接してくれる。阿部が、水が苦手なことを知っているからだと思う。
だから阿部も、こうして普通に過ごせているのだが。
レジャーシートから立ち上がって、少しだけ海の方に近づく。寄せる波は、あと20センチほどで阿部の足に触れるという距離。けれどそこまでだった。これ以上は近づけない。一歩を、踏み出すことができない。
💚「……やっぱり、無理か」
そう思って少しの間、海を眺めていた。
「なにしてんの?」
そうしてボーっとしていたからだろうか。声をかけられてそちらを見ると、白髪でサングラスをかけた男が話しかけてきていた。
💚「えっと……」
「一人でつまんなくない?」
💚「あ、いや。大丈夫ですけど」
「俺らと一緒に遊ぼうよ。あっちに俺のダチいるからさ。絶対、退屈にさせないから」
言って、強引に腕を掴まれる。
💚「あの、やめてください」
「なんだよ、遠慮すんなって」
💚「ちがっ!」
「いいから来いよ」
阿部が抵抗しているからだろうか。男の口調が強くなる。
腕も体も筋肉がついていて、がっしりとした男に腕を引かれれば、身長は阿部の方が高いけれど華奢で体重が軽いため、いとも簡単に歩かされてしまう。それでも足に力を込めて精一杯、抵抗していて。
🖤「ちょっと。何してるんですか」
不意に、よく知る声が聞こえて阿部は顔を上げた。
💚「めめ」
そこにいたのは不機嫌オーラ全開の目黒で。
「あ、いやあ。この子、もしかしてお兄さんの連れ? いやあ、はは、参ったなあ……すみませんでした!!」
長身で凄みをきかせたからか一目散に逃げていく男。
それを見送って、目黒は阿部の肩に手を置いた。
🖤「阿部ちゃん、大丈夫? 何があったの?」
💚「舘様が飲み物買いに行ってくれて、海見てたらあの人に声かけられただけ。多分、ナンパ?」
🖤「ナンパ!?」
💚「だと思う。一緒に遊ぼうって」
物憂げな美人が一人で砂浜にいたら、そりゃナンパもされてしまうか、と目黒は妙に納得してしまった。
💚「めめが来てくれるなんて思ってなかったから、正直ビックリだったけど」
🖤「まあ……でも、阿部ちゃんが一人になるの見えてすぐ戻って来た。やっぱり阿部ちゃんも一緒にどうかなって思って」
💚「あ……そっか」
阿部の表情が曇り、目黒はとりあえず座ろうと阿部をレジャーシートに座らせた。
🖤「阿部ちゃんが、水が苦手なのは知ってるけど、俺が一緒にいたら行けるかなって……」
💚「めめの気持ちは嬉しいよ。でもね、苦手なだけじゃないんだ……水がその、怖くって」
🖤「怖い?」
💚「あ、もちろん飲むのは平気だよ。見るのも大丈夫。けど、顔がつくかもしれないって思ったら怖くて……お風呂とかプールとか、入れないの」
🖤「昨日、温泉入んなかったの、寝てたからだと思ってた」
💚「それもあったけど、湯船に、入れない。昔、クラスメイトにプールに落とされたことがあって。本人たちはちょっとからかったつもりだったんだけどね……それ以来、怖くて入れないんだ。あ、照が助けてくれたから結果的には何もなかったんだけどね」
🖤「……ごめん……俺、知らなくて」
💚「いいのいいの! 言ってなかったのは俺だから。気にさせちゃうなって思って言えなくて」
🖤「……阿部ちゃん、楽しめてる?」
💚「もちろん。入れなくても、楽しそうなみんなを見てるのは好きだよ。お部屋でいっぱい喋るのも、何でもない事で笑い合うのも、めめと星空を見るのも、一緒に砂浜を歩くのも、ね」
そう言って微笑む阿部の顔はとても幸せそうなもので、胸がきゅっと締め付けられるような気がした。
阿部は本心で言っている。
それがわかるから。
🖤「阿部ちゃんはさ、興味はあるの? 入りたいなっていう」
💚「……ちょっとね。さっき海の近くまで行ってみた。結局、ダメだったけど」
🖤「そっか……ねえ。夜、一緒に温泉、行ってみない?」
💚「えっ? でも……」
🖤「ずっと一緒にいるし、最初は足だけつけてみる、でもいいと思うよ。温泉なら深くないから顔にはつかないし……どう?」
💚「……うん。めめもいてくれるし……ちょっと、頑張ってみようかな」
少しだけでいい。阿部の気持ちが上向きになってくれたのなら、言った甲斐がある。
そうしていると、ラムネの瓶を大量に抱えた宮舘が帰って来た。
❤️「お待たせ」
🖤「あ、舘さん帰って来たから俺、行くね」
立ち上がってぺこっと頭を下げると海の方にダッシュして行った目黒。
❤️「何かあったの?」
💚「ん。ナンパされたの、めめが助けてくれた」
❤️「えっ?」
ラムネの瓶がいくつか砂の上に落ちた。
💚「ん?」
❤️「……阿部を一人にするんじゃなかったか」
💚「俺、ちょっとなら一人でも留守番くらいできるよ」
❤️「そういう意味じゃないんだけどね」
キョトンとしながら上目に見てくる阿部に、これ以上は言っても無駄かと思って宮舘は「なんでもないよ」と言うと、阿部にラムネを一本差し出した。
❤️「はい」
💚「ありがとう」
阿部の隣に座って、一緒にラムネを開ける。冷たいラムネを呑みながら、海で遊ぶ七人を見守っている。
💚「なんか……平和だね」
❤️「……」
思わず、阿部を見てしまった。つい先ほど、ナンパされた人間のセリフとは思えないのだが、もう阿部の中では終わったことなのだろう。
だから宮舘はそれ以上のことは追及しなかった。
❤️「阿部、疲れたら休んでていいからね」
💚「まだ大丈夫だよ」
❤️「うん。でも、パラソルがあるとはいえ、ずっと炎天下だとさ。少し横になるだけでも違うと思うし」
💚「確かに」
❤️「寝たくなったらいつでも言ってね? 特別に膝をお貸ししますよ」
💚「ふふっ。ありがと、舘様」
そこからしばらく二人並んで海を眺めていると、みんなが戻ってくるのがわかった。
🤍「阿部ちゃーん! 舘さーん! ただいま~!」
❤️「おかえり」
💚「みんな、おかえりー」
🩷「喉乾いたんだけど、飲みもんってある?」
❤️「ラムネ、みんなの分あるよ。ちゃんと冷やしてたから」
🤍「飲みたい!」
❤️「はいはい、順番に取りに来てね」
お母さんか、とツッコミたくなったけれど、きちんと整列しているそれは親子か幼稚園のそれで、阿部はふはっと声を出して笑ってしまった。
順番にラムネを受け取って飲み始める子どもたち。向井のラムネが勢いよく噴射してびしょ濡れになって、大騒ぎで大笑いしていた。
コメント
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彼氏🖤助けた。 水が怖いのは😰落とされたのがそれともまだ他があるとか…
ほむぺ⋆*
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#あべさく
めかぶぷりん
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