ひとつのピースがなくなるだけで俺の毎日は簡単に崩れていった。そのピースを外す時、周りのピースも破壊してしまったように元に戻せぬ生活、高校にはいる前まではシバが居ないのが当たり前だったのにもう一度離れると言うだけでこうも心を乱されるなんて知らなかった、小さい頃に引越しでその頃の友達と二度と話せなくなるってことになった時はこんなにその友達について考えたりなんてしなかったのに、シバは俺にとって砂金の中にあるプラチナのように希少で特別すぎたのだ。
もっとも恋人が特別じゃなかった奴なんていないだろうが、けれどもシバはきっと俺がシバのことを恨んでいると思っているのだろう、それもあながち間違いでもないがきちんと謝罪をしてくれれば許す気でもあるし、早く元通りになって欲しいのが本音だ、しかし現実というのは簡単にいかないもので高校を卒業してもなお退院したあの日からシバと話すことが出来ていなかった。
「 ほんま…過去に戻れたらえぇのに。 」
独り言がただ部屋に響く。
『もしも過去に戻れたら』
そう何度考えただろうか、もし戻れたら俺達はあんな約束なんてしないで各々の道を進むように言えたのだろうか、あの日のようなことになる前に2人の考え方の違いについて話し合うように言えたのだろうか。
そんなことを考えたって無駄だということは分かっているが考えてしまう、我ながら本当に愚かと思う、けれども恋人を失ったら誰でもこうなるものではないか。
そう考えていたって分からないし、暗く湿りすぎた部屋では頭も回らない、だから俺はベランダに繋がる大きな窓を開けて外に出て空気を吸い、景色を見ることにした。
こうすれば気も紛れるだろうと思ったから、しかしさっきまで馬鹿みたいに考えていたことが頭から急に離れるなんてことはなくずっと俺の考えの全てをかき消してくる、きっと俺が大人だったらタバコでも吸って煙とともに嫌な考えも流すことが出来たのだろう、だが生憎俺はまだ20歳では無いのでタバコを吸うことは出来ないし酒に溺れることも出来ない、俺ができるのはきっと、もう一度シバとテンメーと俺の3人で笑い合いたいと願うことだけなのだろう、今は無理でもまたきっといつか、仲直り出来るその日まで待っておこうと思う。
もしその日が来たらシバの新しい仲間も紹介して貰えるように。
その新しい仲間は俺たちと同じようなことになって欲しくないから、けれど多分新しい仲間と笑いあってるシバを見たら俺は嫉妬してしまうかもしれない。
それでも、俺はシバのことを応援していくつもりだ。
元恋人の幸せくらい応援できる人間じゃないといけないしな。
コメント
2件
5話〜9話までイッキ見したけど全部、素敵でした✨