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ずっと俺は1人だった…コンプレックスに悩んで、誰も喋らないで、ずっと、ずっと…1人だった。
有馬記念のその後、キタサン達にフレイムの過去を話した。
「実は俺…メジロのウマ娘じゃないんだ」
「俺の本当の名前は…アルティスタフレイム」
「アルティスタ…フレイム…」
「以外だろ…知ってるけど、俺はラモーヌに拾われた存在…」
フレイムはついに…残酷な過去を話す時が来た──
フレイム幼少期
「ただいま…」
「フレイムおかえり…どうしたの?!」
「…グズッ…痛いよ…」
「…すぐ手当するからね!」
「…お母さん」
「またいじめられたの?」
「うん…押されて…殴られて…」
「………大丈夫!!お母さんがついてるから!」
家に帰る途中、毎回罵声を浴びられ、暴力が多く怪我の痣も残ってる。
俺は思った。生きてる意味無いな…
翌日
毎日のように今日になるのが嫌だった。
「フレイム、大丈夫?」
「大丈夫だよ、行ってくるね…」
学校
教室に入るのが毎回嫌。怖くて怖くて…
(大丈夫…)
「え?!何…これ?」
フレイムの机には落書きがされてあった。大きな字でバカにされた字も書いてあった。
「やぁ〜い!」
「ウマ娘なのに男子声って、最悪だな!!」
「なんだ?言い返してみろ!!」
俺はこの場から逃げた。
「俺…死にたいよ…!」
「え?」
「君が死んだら家族だって心配するでしょ!」
「…えっと」
「私、ブラウンアエラス!君と同じウマ娘だよ!」
「アエラス?」
「君はアルティスタフレイムちゃんだよね!かっこいい名前!」
「…かっこよくないよ、俺声低いし…」
「な〜に弱いこと言ってるのよ!自信持ちなさいよ!」
「……自信?」
「…友達になろ!」
「え?」
「ウマ娘同士、仲良くしようね!」
「えぇぇぇぇーーーーーー!!!!」
嬉しかった。あの時友達が一人もいなかった俺にとって、「安心」という言葉が。
学校の帰り道
「…友達」
「うっ!」
「おい!何ノロノロ歩いてんだよ!邪魔なんだよ!」
「いや…俺を抜かせば良かったはずじゃ…?」
「お前が邪魔なんだよ!さっさとどけ!」
その男の子がフレイムに殴ろうと襲いかかった。
すると
「ちょっと!有望な子を怪我させるつもり?!」
「あぁん?!誰だよお前!」
(アエラス?)
(はっ!!!!!)
「お前は関係ねぇから引っ込んでろ!!」
1人の男子がアエラスに殴りかかろうとした。
だが…
「ふっ!!!!」
(え?交わした?!しかも消えた?!)
「どこにいるんだ!!」
アエラスは木の上にいた。
俺にも分からなかった。ウマ娘なのにあんな瞬発力が。
「やめてくれ!!悪かったからぁ〜!!!」
フレイムをいじめた男子達は一目散に逃げた。
「…アエラス?」
「大丈夫…?怖かった?」
「…っ!!」
怖かっただろうか、アエラスに抱いたフレイム。
確かな恐怖が無くなって、安心が湧いていた。
「うぅぅぅ〜、怖かったよ…」
「…もう大丈夫だよ、フレイムちゃん」
俺はあの時アエラスが来ていなかったら、もうダメかと思って。
「一緒に帰ろう!!」
「…うん」
「へぇ〜そんな事があったんだね!」
「フレイムもようやく友達が出来たんだな!」
「うん、アエラスがいなかったら大変だったよ」
「フレイムがやっと友達が出来て良かったわ!」
やっと出来た友達に、俺は嬉しかった。
翌日
「アエラス、昨日はありがとう…」
「いいのよ!」
「あの動き凄かったよ!あれ教えて!!」
「…いいけど、その分強くなってね!」
「強くなる!強くなるから!ソラみたいに!」
俺はあの時のことを教えて貰えなかったら、あの動きをすることはなかった。
「ねぇ!放課後グラウンドで競走しない?」
「競走?」
放課後
「なんで競走するの?俺そんなに足速くないから…」
「今はまだ小学生なんだから!大人になれば速くなるって!!」
「アエラスは…トレセン学園に行くの?」
「もちろん!私の夢を叶えてくれる所だから!」
夢を叶える…俺にそんなことなんてあるのかな…?
「じゃあ行くよ!よーいドン!!」
2人は勢いよくスタートした。アエラスは先行に出た。
(速い…俺…追いつけるかな?そもそもなんでウマ娘は走るのにこだわるの?なんで…?)
“走る”意味を知らなかった。今のフレイムみたいになるとは思わなかった。
(待ってアエラス!置いていかないで!!)
(えっ?!)
先行のアエラスのスピードについて行くフレイム。あっという間に追いついてしまった。
(フレイムちゃん速い!これで一緒にトレセン学園に行けるかも!)
「フレイムちゃん!私と一緒に夢を叶えようよ!」
「夢…?」
「ほら、最近有名なスクーデリアローマさんとユリノテイオーさん!宝塚のレース凄かったなぁ!!」
「スクーデリア…ローマ?ユリノ…テイオー?誰なの?」
「知らないの?!あの二人は、無敗の三冠ウマ娘なんだよ!!」
「無敗の…三冠?よく分からないよ」
「もう、フレイムちゃんその事も知らないの?」
知るわけがなかった。無敗の三冠がどれだけ凄いのか──
1回も…負けずに?けど凄いな!!
俺にはなれっこないけど…
「アエラスはその三冠を取りたいの?」
「もちろん!」
「凄いなアエラスは…対して俺は…」
「自信を持ちなさいよ!フレイムちゃんも三冠取りたいんでしょ!一緒に頑張ろうよ!!」
「⋯アエラスと一緒ならきっと楽しい、僕も頑張るよ⋯!」
アエラスとなら笑顔になれる⋯僕の暗かった人生に光が差すかと思ってた。
なのに──
「アエラスちゃん引っ越すらしいんだよ!」
「へぇそうなんだ!」
教室の生徒がアエラスの引っ越しに話題が絶えなかった。
やっとなれた友達なのに⋯やっと一緒に夢を叶えようと思っていたのに⋯
「ねぇ、引っ越すって本当なの?」
「⋯ごめんねフレイムちゃん、お父さんの仕事の関係で海外に行くことになっちゃってね」
「⋯向こうに行っても夢を叶えられる?」
「大丈夫だよ!離れても私の夢は変わらないよ!」
「そうだよね⋯!僕も強いウマ娘になれるように頑張るよ!!」
キタサンとダイヤみたいに、この先も笑顔でいられると思ってたよ。思ってたのに⋯
アエラスが海外へ行ってしまったその日から、俺の地獄の生活が戻っていった。
さらに──
聞きたくない噂が毎日毎日耳がタコになるくらい聞こえた。
同級生が安全ピンの先端を俺に刺したり、何度も蹴られたり、皆から見放されていた。
そんなある日のことだった──
「それで、フレイムの事なんですけど⋯」
家に謎の女性があがっていた。それは若くて、凛々しい女性だった。
「母さん、その女性の方は?」
「初めましてフレイムちゃん!藤宮リンネと申します!」
「は⋯初めまして⋯アルティスタフレイムです⋯」
「藤宮さんはね、あの有名なメジロのメイドなんだって!」
メジロのメイド?メジロって何なの?
「⋯?」
「メジロっていうのはね、メジロマックイーンやメジロライアンとかいうウマ娘を輩出しているんだよ!」
誰なの?マックイーンとかライアンっていう人知らないし──
「お母さんはね、現役時代に1度だけメジロのウマ娘と戦ったことがあるのよ!必ずメジロに勝ってやるって!」
そういえばそう言ってたけど、なんでメジロのメイドが俺の家にいるのか分からない──
「フレイムちゃんも強いウマ娘になりたいの?」
「⋯なりたい!友達と夢を叶えたいんだ!!」
まるでマックイーンみたいな鋭い眼差しが私の心を奮闘させた。
「じゃあ、メジロ家が主催している大会が8月にあるの!良かったら来てみてね!」
その大会は8月中旬に行われる予定。フレイムは参加しようと思っていた。
その日の夜──
父さんから旅行に行こうかっていわれて、仕事の関係で有名なホテルの2泊3日の泊まりだった。
家族で行こうと思っていたから、俺は楽しみで楽しみで仕方がなかった。
2泊3日の旅の当日
そのホテルの中には、大勢の方が多くいた。ウマ娘も中にいたが、全然知らない人だらけだった。
「⋯人がいっぱい」
「まだ準備中だから、部屋に戻ってようフレイム」
「うん⋯」
知らない人だらけで早くこの場から避けようとしていた。
情けないよな⋯俺って──
「うわっ!!」
知らない人にぶつかってしまった。俺の不注意だった。すぐに謝罪しないと──
「⋯すみません!自分の不注意で⋯」
「⋯貴方、随分悲観な感情ね」
「⋯え?」
ふと目をあげたら、とてつもない綺麗な祖母だった。最初俺は怖かった。
「フレイム大丈夫⋯メジロのお祖母様?」
「あらディザイア、お久しぶりね」
「⋯何この人?」
「この方はあのメジロ家のお祖母様よ!フレイム、ちゃんとぶつかった事謝ったの?」
「ちゃんと謝ったよ!俺の不注意だったからぶつかっただけだよ!」
というか、メジロのお祖母様って何なの?そんなにすごい人なの?
「⋯貴方、藤宮の知り合いかしら?」
「⋯え?」
藤宮⋯藤宮リンネのこと?言われてみればメジロのメイドだったよな。
何かあったのか──
「話は聞いてます、メジロ主催のレースに貴方が出走すると⋯」
「⋯はい」
「⋯走る意味は分かるかしら?」
「走る意味⋯」
簡単そうな質問だが、フレイムは難しかった。走ることに最初は興味を持たなかったが、アエラスと出会ってから少しずつ変わっていた。
なんて大口叩いてるけど、その人に伝わるのは──
「⋯素敵な目標ね」
「⋯素敵?」
「あら、ばあやここにいたのですね」
「ラモーヌ?!」
「あら、お久しぶりね」
「母さん、この人は?」
「メジロラモーヌよ。私の後輩で初めてトリプルティアラを獲得したウマ娘よ!」
「トリプル⋯ティアラ?」
また聞いたことがない名称だ。世の中の知らない言葉多いよ──
「桜花賞、オークス、秋華賞を制した者だけが得られる3つの栄冠のことよ」
「⋯へぇそうなんだ!」
「ディザイア、その娘は?」
「俺はフレイム、アルティスタフレイムです」
「フレイム⋯まだ小さい炎(ほむら)な娘」
「ふふ、将来強いウマ娘になる予定よ!」
母さん、余計な事言わなくていいんだよ⋯!
そもそもメジロの前で強いウマ娘になるって言われたら──
「では、私はこれで。行きましょう」
「ではまた」
後に俺が、メジロに拾われるようになるとは思わなかった。
夜
賑わい始めたパーティー。父さんも関係者に挨拶を交わしていた。
「中野さん、今日は祝賀会を開いて頂きありがとうございます!!」
中野新人(なかのあらた)
アルティスタディザイアの元トレーナー、ディザイアの夫。トゥインクルシリーズの解説者としても活躍していた。
「こちらこそ。そうだ、自慢の娘を紹介しますね!」
「フレイム、ちょっといい?」
「何?」
「関係者の挨拶だよ、そんなに硬くなるなよ!」
「分かった⋯」
嫌々連れていかれ、URAの関係者に挨拶をすることになった。
「この娘が、将来有望のウマ娘のアルティスタフレイムです!」
「こんばんは⋯」
「初めまして、君は母親みたいになりたい?」
「⋯まだ分かりませんが、少し憧れています」
「フレイム、関係者の前で暗い顔するな!胸を張れもっと!」
「⋯⋯」
父さんの前でそんなこと言われても⋯俺は⋯
「私は数多くのウマ娘を見てきたけど、その子は将来有望になると思いますよ!」
「何故ですか?」
「君の瞳の裏にもう1人の自分がいる」
瞳の裏にもう1人の自分?分かるのそんなこと?
「今日の会場にはメジロ家の方もいらっしゃるので、君はメジロみたいなウマ娘になると思いますよ」
メジロみたいに?なんの関係もない俺がメジロみたいになれる⋯
「⋯こんな俺でも強くなれますか?」
「なれるさ!君みたいな娘を何度も見てきたから、特にスクーデリアローマとユリノテイオーは無敗の三冠を獲得して、トレセン学園に入学する子が増えているからね!」
トレセン学園⋯アエラスも言っていたな。
あそこの倍率はとんでもなく高い⋯
「父さん、俺トレセン学園に行きたい!母さんみたいに強くなりたい!!三冠を目指したい!!」
「⋯なりたいじゃなくてなるんだよ!父さんが推薦してやるから!!」
「本当に?!ありがとう!」
そこから俺はトレセン学園に入りたいと思った日だった。
「記念だったんだね」
「フレイムさんのお父さんがまさかフレイムさんのお母さんだったんだね」
「生まれた時から最初は嫌だったけど、今思えばウマ娘で良かったなって思ってたよ⋯あの出来事がなければな」
「あの出来事?」
関係者と話した後⋯
俺は1人で会場の外にいた。
「⋯綺麗な夜景」
「綺麗な夜景だね!」
「藤宮さん?!」
「URAの人に三冠目指すって大胆に宣言したね」
「仕方ないですよ、三冠なんて夢のまた夢」
「それでもティアラをとったラモーヌさんはすごいよね!」
メイドだから知っている話。メジロの凄さ、何人も輩出してきた名家。強く美しい走りを俺がなれるか分からない。
そのことを藤宮に話した。
「走ることに対する情熱が似てたのかもね」
「メジロのウマ娘はそのような情熱を持っていたんですか?」
「もちろん。特にマックイーンは強かったよ、天皇賞・春に対する思いは誰にも負けなかった」
メジロマックイーンというウマ娘の過去レースを動画で見させてもらった。
「強い、本当に強いんですね!」
「そうなの!怪我とかで引退しちゃったけど、諦めない思いが強かったんだ。フレイムちゃんも同じようになれるかもね!」
「⋯俺、離ればなれになった親友に少しでも気づいて欲しいんです。”ここにいるよ”って」
アエラスの行方がまだ分かっていない。勝って強くなって存在を気づいて欲しいと思った。
「⋯じゃあフレイムちゃんが三冠とって、友達に気づくといいね!」
楽しく話していたその時──
「何この音?」
「⋯フレイムちゃん逃げよう!火災報知器がなってる!!」
「火事?」
突然鳴り響いたサイレン。藤宮とフレイムは外にいて、まだ火は大きくなかった。
なんとか無事エントランスの外に脱出し、避難してきた人が多くいた。
しかし──
「母さんと父さんがいない?!まだ中にいるの?!」
「ダメだよ!助けに行ったら危ないよ!」
「⋯離して!助けに行かないと!!」
藤宮の手を振り払い、再びホテルの中に入った。
煙がまだ薄らだが、火の手はすぐそこまで来ていた。
叫んでも返事がないが、まだ生きていると信じ続けた。
聞き覚えのある声⋯母さんだ!!
声が聞こえた方に走り、部屋のドアをノックした。
返事が無く、何度も探した。すると──
ドアに手をかける⋯が
「熱っ!!」
ドアノブは火傷するぐらいの熱さ、手をかけられなかった。
大きい衝撃音が部屋の外から聞こえた。火の手がもうすぐそこまで来ていた。
廊下の周りも火が迫って来た。
「フレイム!もう母さんの事はいいから早く逃げなさい!!」
「嫌だよ!死んじゃダメ!」
「何しているんだ!早く避難を!」
「待って!!まだ中に母さんが!!」
「火の手が来てます!避難してください!」
消防隊員に抱きかかえられ、母さんのいる部屋の救助はなかった。
母さんの部屋からまた衝撃音が聞こえ、声が聞こえなくなっていた。
もう遅かった──
ホテル火災での死者は300人を超え、戦後過去最悪の出来事になった。
その後鎮火し、現場を藤宮と共に見た。
母さんがいた場所まで行き、その中に入った。
中は黒く焼き焦げ、元がつかない状態だった。
「母さん、父さん⋯!」
ずっといたかった。親に恩返しをして成長した俺を見せたかった⋯⋯
やっと目標ができたのに⋯⋯!
俺はもう⋯終わったんだ⋯強くなりたいなんて⋯夢なんだ⋯
両親が亡くなり、居場所もなくなってしまったフレイム。通ってた小学校も退学し、藤宮の元で暮らしていくことになった。
マンションの部屋でただ佇む毎日。感情も失いかけていた。
毎日、毎日、人との関わりを絶っていた。
人生が全て─
────
────
────
────
そんなある日のことだった。
「お願いします!どうかこの娘を!!」
「藤宮!いくら紹介しても、あの娘は私の家族ではないですのよ!!」
藤宮とメジロのお祖母様にどうかフレイムを養子にしてほしく、何度も何度も頭を下げた。
「あの子は有望になります!今感情も失いかけているんです!ずっと苦しんでいる状態で、自殺してもおかしくない状況なんです!どうかフレイムちゃんを!」
「!!!!」
「あの娘を養う環境ではないのよ!!将来有望でも受け入れないわ!!帰りなさい!!」
藤宮はなんとしてでもフレイムに強くなってもらいたかった。
なんとしてでも⋯フレイムを──
「分かりました。フレイムちゃんを出走させ、4馬身差で1着を取ります!ダメなら諦めます!」
大口を叩いているが、藤宮はフレイムにメジロ主催のレースに出走させ、夢を叶えて欲しいと思った。
「レースに出走?」
「メジロ主催のレースで絶対に勝ってもらう!そして、フレイムちゃんを養子にしてもらう!」
「⋯無理だよ、俺はもう終わってるんだよ、何もかも失って──」
「終わってないよ!親友の夢を渡すれたの?絶対強いウマ娘になるって!」
強い⋯ウマ娘…けど──
「もう走りたくない…父さんも母さんも友達も…全部…」
声をあげて、フレイムに怒鳴った。
「…!!」
「あの…無敗の三冠でも?」
あの紅き跳ね馬でも、何かを失っていた状況もあった。
あの日…史上最強とも呼ばれたスクーデリアローマ。史上初の凱旋門賞の制覇に期待が高まっていた。
しかし…結果は3着、世界は厳しかった──
藤宮とフレイムのトレーニングを行い、見返してやると誓った。
メジロ主催のレース当日
札幌競馬場
真夏の8月、避暑地となっている北海道。
「フレイムちゃん、きっと大丈夫!優勝は必ずあるよ!!」
「…俺、頑張る!!」
このレースのライバル達は、フレイムよりかなり体格の大きい子や、既にレースで勝利している子も多くいた。
「ねぇあの子、絶対弱そうじゃない?」
「ハハハ!絶対最下位だよきっと!!」
ライバル達はフレイムの姿を見て、バカにしていた。
しかしフレイムはわかっている。どう見ても相手は体が大きく、まだ小学生のフレイムには不利な状況だった。
「フレイムちゃん、気にしなくていいの。私もトレーナーの資格を持っているから大丈夫!」
フレイムは小さく頷いた。
それもそう、藤宮はメイド兼トレーナーでもある。
「頑張ってフレイムちゃん!!」
「…行ってきます!!」
関係者控え室には、メジロのお祖母様、ラモーヌとが見ていた。
「ディザイアの娘も出走するわね」
ゲートイン中、フレイムを見つけた。
「あの娘が養子になる…藤宮も大馬鹿者ね…」
「養子?あのディザイアの娘が?」
ラモーヌもその話に興味が湧いていた。ティアラ路線で活躍していたアルティスタディザイアの娘が、まだ小学生相手にどう戦うのか──
レースがスタート──
ライバルが一斉に走り出し、フレイムもその流れについて行った。
「後方から差すつもりね」
フレイムは後方からの追い上げに選択した。
「…………」
皆速い!やっぱり出走経験のあるライバル達は凄い…!!
レース設定は──
2000mの中距離 左回り 良
初めてのレースが中距離、しかも恵まれた体格ではないフレイムにとって不利な状況だった。
スタンド前を通り、ストレートを駆け抜けていくライバル達。
フレイムは後方から2番手、終盤追い上げても1着は難しい順位──
「これは…もう勝負権を失っているわ。後方から2番手とは1着は不可能だわ」
呆れた表情を見せ、観戦席から外れた。
だが、ラモーヌは観戦していた。何かに食いつくような感じがした。
「…あの娘、どう見てもわざとなのかしら?」
フレイムが順位を落としているのは──
「…この策、まんまと引っかかってる!」
逃げてるライバル達は早くも体力がつき、先行策のライバルに抜かされた。
後方もペースを上げ、流れでフレイムもペースを少しだけ上げた。
だが──
「…最下位になってるわ、むしろわざとらしさが出てるわね」
作戦が少しずつ分かってきた。
弱い相手にわざとそのオーラをだして、本番に勝負のオーラを放つあるあるの作戦だった。
「あの子、もう諦めたのかい?所詮小学生だから勝てないわ!!」
勝てない…油断してるな…これはな──
第4コーナーに入り、後方から続々とペースを上げた。
「これで勝負は…」
本領発揮となり、ライバル達を続々と抜き去って行く。
観戦席から見ていたラモーヌはフレイムの姿に驚いていた。
まるでもう1人の自分…現役時代のお祖母様に似ていた──
「気に入ったわ…!」
フレイムは不可能と言われていたレースで、小学生がてら4馬身差の1着に輝いた。
藤宮の有言実行となった。
「…まさか、有言実行になるとは」
席を外していたお祖母様は、違う席で観戦していた。
藤宮とフレイムの絆は計り知れない…
「お祖母様!」
「藤宮…」
「これでお分かり頂けたでしょう、フレイムちゃんを養子にしてください!」
「…いつ私が許可したのかしら?」
「これだけ見てもまだ分かって貰えないのですか?!」
「まだ1戦しか走ってないじゃない!!何度も言いますが、あの娘は関係ない!!」
いくら言っても、やっぱり分かってもらえない。もう諦めるしかないと思った。
しかし──
「「!!!!」」
現れたのは…ラモーヌだった──
「ラモーヌ様?!」
「いいかんげな事はやめなさい!あの娘はメジロと関係ありませんのよ!」
「関係ないけど…私は構わないわ。アルティスタディザイアは不可能な事があっても走り抜いてきた逸材だわ」
母は、格上のライバルを相手に4馬身差で勝利している。今回のフレイムと全く同じだった。
「しかし…!」
「私も、あの娘はお祖母様と似ているところがありました」
メジロのもう1人の男性執事が現れた──
「余計な事は言うんではありません!ただの偶然よ!」
「…お祖母様もフレイムちゃんに似たような走りしていましたね」
それは…格上のライバル相手に、魂を瞳孔に光らせるような瞬間だったという。
「…分かりましたわ、あの娘を養子にします」
「本当ですか?!」
「ただし、私なりの育て方をするので、口出しは許しませんよ!」
「ありがとうございます!!」
その事をフレイムに伝え、家庭裁判所で改名の申請を行った。
数ヶ月後
「皆さんに話がある」
「なんでしょうか?」
「本日から養子になる娘を入れさせる。入りなさい」
「初めまして…本日からお世話になります、メジロフレイムです!!」
その日俺は、旧名を変え、メジロの養子として過ごす事になった。
「「「「……」」」」
フレイムの過去に黙り込んでしまった4人。今思うと、ずっと苦しかったと思っていた。
「…なんかごめんな、俺の事で暗くなって。忘れてもいいんだよ!」
「…忘れるわけないじゃない!むしろこっちが気が付かなかったのが悪かったんだから…」
私、フレイムさんの事…ちゃんと知ろうともしなかった。
この日…私はフレイムさんを…守ってあげようと思った。
「でもな、俺はトレセン学園に来て…無敗の三冠を取って、キタサン達と友達になれて…すっごく楽しい!」
「フレイムさん…」
思い返せば──
入学当時はスピカに入らされようとしたけど、憧れを追い求めてスクーデリアに加入。2戦目でGII制覇、その後も強さを発揮して無敗の三冠獲得、そして有馬記念を制し、史上初の無敗のクラシック四冠を獲得した。
それだけじゃない──
ダイヤと出会い、キタサン達と友達になれた。ミラクルのピアノ練習、リッキー達と遊んだりした。
人生に笑顔が戻った学園生活になった。
「今日はずっと言えなかった事を言えたし、もう大丈夫だよ!!」
「フレイムさん、また不安な事があったらいつでも聞いて!」
「私も!!」
「僕も…頼れるか分からないけど、いつでも聞いてね!」
「皆…!」
頼れる友達がいて良かった。これからもきっと明るい未来が待っている!!
「話逸れちゃうけど…今日は病院で寝泊まりするの?」
「明日の午後には退院できるよ!その日まではキタサンと一緒かな?」
しばらくは安静にしないといけないため、フレイムとキタサンは病院で1晩を過ごすことになっている。
「皆を読んできてもいいよ、話終わったって」
「伝えとくね」
「フレイムちゃんの両親…友達も…」
口に出しているスペシャルウィーク。こっちもフレイムの過去の出来事に驚いていた。
「フレイムは私たちの養子なんです。ラモーヌさんがレースで見つけた子なんです」
「レース?」
「数年前まで開催されていたメジロ家主催のレースなんです。全国から集めた猛者の集うレースで、まだ小学生だったフレイムだけだったんです」
説明すると──
それは…将来有望のウマ娘を見つけるレースだったというが、中々現れる事がなかったそう。
「そのレースにまだ小学生だったフレイムが参加してたんです。しかも…GI制覇してるウマ娘達を4馬身差で勝ったんです。小学生1人だけフレイムが」
「嘘…?!」
フレイムの衝撃エピソードに驚く皆。
トレセン学園に在学しているウマ娘でさえなし得なかった記録だった。
「ですが…フレイムは行方不明の友達を探しているんです。無敗の三冠獲得したらもしかしたら気づくかもって…」
「私に憧れを持って来ただけじゃなくて、友達の行方を分からせるためだったんだね…なんで気が付かなかったんだろう…」
「フレイムちゃん?」
今まで気が付かず、ウマ娘兼トレーナーサポートの役目をしてきた。辛かったことや楽しかったことなど分かって来たのにも関わらず、フレイムだけ気が付かなかったことに情けなさを抱いていた。
「皆さん!フレイムさんが中に入っても大丈夫ですよ!!」
「話終わったの?」
「言いたいことが全部言えて良かったって言ってましたよ!」
フレイムはなんとなくそう言ってたが、違和感を感じたローマ。
これでも気分が良くなるとは思わなかった。
夜
「それでは、お二人方は明日には退院するので、今夜は安静にしててください」
「分かりました」
夜になり、院内の明かりが暗くなってきた。院内で過ごすのは初めてだという2人。
「ダイヤ、今頃ローズと一緒かもな」
フレイムはローズに一緒にいてくれるかと言われ、1日だけダイヤと同室になることに。
「ダイヤちゃんには迷惑かけちゃったね」
「それは俺も同じ、ローズに散々迷惑かけてるし」
「…有馬記念、勝ちたかったな」
「キタサン…?」
有馬記念…あの日の勝利以来、勝ちがなかったキタサン。この日だけは負けたくなかった。相手は最強のメジロフレイムを相手にした。ついて来れたこともすごいことだ。
「テイオーさんの有馬記念を見て、私も皆に勇気を与え続けたいって」
「…俺も同じ、ローマさんに憧れてやってきて、チームに入れたことに感謝してる」
2人ともあの有馬記念を忘れられない。復活の帝王、伝説の跳ね馬という、歴史上忘れられないレースを残してきた。
「フレイムさん、いつかまたコスプレの撮影しようよ!今度は中山競馬場で!」
「もちろん!あと、フレイム”さん”じゃなくて、フレイム”ちゃん”って呼んでよ!」
「もちろんだよ!フレイムちゃん!」
─────
─────
─────
「「…?」」
暗闇の中…たった2人だけ──
「…キタサン?!」
「フレイムちゃん?!」
「ここ…どこ…?」
何も見えない…キタサンの姿だけ見える──
「…やっと見つけたぞ!」
「「!!」」
上から降りてきた人物。それは…
「闇のチリシィ!!」
「…ここならエマにも邪魔されずに済む…。フレイム、もう一度、悪夢に染まれ…!」
召喚させたのは──
「…父さん?母さん?アエラス?」
「この人たちが…!」
「君の夢を奪って、現実でも繋がる心を閉ざす!」
「フレイムちゃん、どういうこと?」
「…俺の心を奪えば…現実につながって…死ぬ」
「!!!!」
フレイムちゃん…そんなの嫌だよ!ずっと一緒にいたい!
「けどな、心の繋がりはキーブレードより強い!今この状況、エマは必ず来てくれる!!」
「このような状況でこいつらと戦えるのか?」
「…戦える!俺の大事な…大好きな人が、隣にいる!」
フレイムの隣…キタサンとなら!!
「フレイムちゃん…!!」
「何言っているんだ?その娘が相手なら楽勝さ!!お前たち、やれ!!」
3人相手だけど、キタサンとなら行ける!!
攻撃技を繰り返す2人、相手が強敵でも戦えてる!
「離れやがって、けどこの距離でも!!」
「何?!」
ターゲットとの距離を一気に詰めるテレポを使い、フレイムの母親に攻撃を繰り返した。
キタサンもキーブレードを使いこなし、アエラスに攻撃を繰り返す。
「やけに2人の攻撃が効いている!こうなったら!」
「え?!」
「何が起きるの?!」
突然止まり、攻撃をやめた──
「君たちの強さは分かってきた。しかし、これでもどうかな?」
闇の糸に絡まれた2人、身動きが取れない。
「うっ……」
「くっ…!」
「これで…闇の底へ沈まれ!!」
猛烈な振りに意識を失いかける!マズイ…!!
「キタ…サン…!」
「………」
振りによって意識が遠のいてしまった。
「まずはこの娘だ…!!」
フレイムが言っても、父さんには分からない。キタサンを高いところから離した!!
「キタサン!キタサン…キタサァァァン!!!」
もう終わりだ。キタサンはもう…
突然キタサンが光だし、浮いている──
この光…
「…大丈夫ですか?」
助けたのは…エマだった──
フレイムの悲痛な叫びが届いて、エマが来てくれたのだ!
「もう大丈夫ですよ…」
光の魂をキタサンに与え、意識が戻った。
「…あれ?私」
「キタサン!無事で良かった!!」
「フレイムちゃん?ダイヤちゃんも?」
「初めまして、エマ・シオンです」
「なんかダイヤちゃんにそっくり…!」
キタサンと会うのが初めてだというエマ。ダイヤと瓜二つの姿に驚いていた。
「そっくりだろ!」
「フレイムさん、この方がお友達ですか?とても可愛らしい友達ですね!」
「か…可愛いってそんな…」
言われたことがない事に火照ってしまった。
「エマ、キタサンブラックっていうんだ!自慢の友達だよ!」
「自己紹介はその辺にして、あの3人をなんとかしましょう!」
まだ終わってない。エマが来たおかげで集中攻撃ができる!!
前方に発生させた衝撃波で敵を飛ばすダブルブラストを繰り出すエマ。
攻撃が効き、その効果は抜群だ!
「母さん!フレイムだ!こんなことやめてくれ!!」
「…お前、私の名を捨てたのか?**アルティスタを捨てたんだぞ!**この私が許せると思うか!」
「…捨ててない!俺は夢を叶えるために走り続けたんだ!!」
「ウマ娘で本当に良かったって思ってるんだ!!だから…友達に危害を加えるのはやめろ!!」
「なぜお前が馴れ馴れしく接しているんだ!!」
「私はフレイムちゃんを大切な友達だから!初めて会った時、私とダイヤちゃんと同じ目標で学園に来たことを知ったんです!!」
フレイムの父さんはキタサンに連続攻撃を出した!とてもキタサンでは防ぎきれようがない
エマが防御魔法を使い、キタサンを助けた。
「ありがとうエマちゃん!」
「援護するわ!!」
協力体制で戦い始めた2人。フレイムも見ていた。
「息ぴったり!」
初対面のはずなのに、コンビネーション技を繰り出した!
やっぱり親友だからなのか?
「…このままじゃ埒が明かない!2人共、コンビネーション技を使おう!!」
「えっ?!」
キタサンとエマを見て、俺にも出来るかもしれないと思った。
まだやったことがない技を繰り出すか?
「やったことがない技をどうやって?」
「それはやってみないと分からないだろ!本気で行くぞ!!」
フレイムは勝負服からアルティメットフォームと変わり、本気になった。
「私たちもフォームチェンジしましょう!」
「でも、私やったことないよ?!」
「私の言う事を聞けば、簡単ですよ!」
「でもどうやって?」
「約束のお守りを上にかざしてください!」
「上に…こう?」
すると──
2人の衣装が変わった──
「凄い!衣装が…!」
「キタサン様はライトフォーム、私はダークフォーム。攻撃が上がって回避速度が速くなりますよ!」
「これで行くぞ!!」
フレイムは魔法陣を展開し、無数の剣を頭上から降り注いだ!
キタサンとエマは敵を集中させ、ロック数を稼いだ。
隙を見てフレイムの攻撃を繰り出し、3人を動かなくしている。
地面から惑星みたいな魔法陣を出現させ、無数の光球を3人に与えた。
「はぁぁ!喰らえ!!」
魔法陣を出現と同時に光の柱を回転しながら攻撃を繰り出した。
フレイムの母さん、父さん、アエラスは、3人を相手に敗れ、倒れた。
「心の繋がりがあるから、弱くても強いんだ!俺の大事な家族と親友に傷を負わすな!!」
「…次は…全員を終わりにしてやる…!!この世の終わりを!!!!」
闇のチリシィは姿を消した。全員を巻き込む、この世の終わりにはさせない!!
「フレイムちゃん…」
「…心配いらねぇよ、どんな状況でも救い出す!!」
フレイム?
「!!!!」
*フレイム…私たちを助けてくれて…ありがとう*…
「母さん…!!」
フレイム…大きくなったな…学園楽しんでるか?
「父さん…!」
フレイム…三冠おめでとう
「アエラス…!!」
幻想の姿…俺は夢を見ているのかも知らないが…
今だけは──
「父さん、母さん、アエラス、俺強くなれた?立派なウマ娘になれた?約束を果たせたのか?」
「うぅぅぅ…!!」
やっと気づいてもらえた。実感がなかったが、長く感じた。
「俺…最初ウマ娘…嫌だと…グズッ…思ってたけど…俺を育ててくれて…ありがとう…」
ウマ娘…声が低く男子みたいだった。けど、目標ができて、学園を楽しむことが出来た。進んできた道は間違っていなかった。
フレイムを笑顔にしてくれて…ありがとう
「…いえ…フレイムちゃんと一緒にいて楽しいです…!!」
フレイムを笑顔にしてくれたキタサンにお礼をと感謝をしてくれた。
フレイム…養子にしてくれたメジロの方々にありがとうって思ってる。
「父さん…アルティスタを捨ててごめん!」
気にするな…フレイムの名前が変わっても、フレイムはフレイムさ
「父…さん……」
大事な名前を捨ててしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。レースに出走する度に、苦しかった。
フレイム…世界に行っても…俺たちを忘れるなよ
3人は姿を消し、この世界を去った。
病院
「…父さん…母さん…アエラス…」
「…フレイムちゃん…私の傍に来ていいよ」
「キタサン…!!」
ベットを降り、キタサンの傍に寄り添った──
「キタサン…やっと気づいてくれた……気づいたよ…!!」
「私も…気づいて良かったね…!」
「うぅぅぅ……!」
泣き始めた2人。
今の夢は後に忘れることはない。フレイムとキタサンだけが見た、夢の世界。
「俺…キタサン達と友達で本当に良かった…楽しい生活をすることが…出来たよ!!」
「私も…フレイムちゃんと友達で良かった!」
朝焼けが照らした病室の中を照らした。
たった2人だけの…
「やっと2人が帰ってくるな!ゴルシちゃん楽しみぃ〜!!」
チームの皆が2人を迎えてくれている最中だった。
「ていうか…なんで俺らの室内でやることになったんだよ!!」
三井のトレーナー室を借りて、退院祝いをすることになった。
しかし…許可はなく…
「ゴルシ、祝うならいいけどさ…勝手に室内でやるのやめてもらえる?」
「うちらのトレーナー室狭いからさぁ〜、ローマのトレーナー室なら広くていいじゃないかって!!」
「自由人過ぎる…」
「というか、なんでお前らのチームバタバタしてんだ?」
やけにバタバタしているローマ達。その理由とは──
「記者会見を行うの。フレイムが全て話すらしいから」
「何話すんだ?」
「それは会見を見てから、今言ってもゴルシじゃすぐばらすでしょ!」
「ばらすわかねぇだろ!」
と言っても、ゴルシの言う事…全然信用出来ない!!
「フレイムからだ!」
内容は──
ローマさん、これから学園に向かいます。キタサンと一緒ですから心配しなくていいですよ。
それと、会見内容はキタサンに言ったので、秘密にしてくれと言ったので大丈夫です。
「キタサンなら分かってくれるかもね」
会見内容をキタサンに伝えている。ワールドチャンピオンシップに挑む事など──
「なんだよ!お祝い皆でやろうって言ったじゃねぇかよ!会見開くって聞いてないぞ!!」
「フレイムが重要な事を話すのでお祝いはその後にしましょうゴールドシップさん」
会見場
既に多くの報道陣が来ていた──
「これだけの報道陣が来るとは…」
「それもそうですよ、メジロフレイムがワールドチャンピオンシップに参戦する可能性はゼロではありませんし、クラシック無敗の四冠という達成という称号もえられたわけですよ」
生徒会室では、ルドルフとグルーヴが会見の中継を見ていた。
「でも、他に何かがあるのか?」
「”他に何かが”?」
学園 正門前
「ありがとう、キタサン降りるの手伝うよ」
「ありがとう」
フレイムとキタサンは学園にやって来た。右脚を負傷しているため、手伝っている。
「フレイム、こっちだ!」
「トレーナー!」
三井が急いで迎え、会見の準備を行った。
「時間は?」
「まだ大丈夫だよ、トレーナー室で少し休め」
「キタサンも一緒に行こう」
トレーナー室
皆待ってるよね…? 俺の出来事…嘘ついたまま…過ごした事…怒ってるよね…?
「ローマ、フレイムとキタサン来たぞ!」
ドアから現れた2人…その姿を見た皆は──
「待ってたぜ!」
「おかえりキタちゃん!!」
「皆さん!ただいま!!」
暖かく出迎えてくれたキタサン。対して──
「…………」
やっぱそうだよな。メジロってこと嘘だったし…信頼されてなんか…
「…おかえり、フレイム」
「…マック?」
「フレイムちゃんもおかえり」
マックイーンやスズカなど、出迎えてくれた。
「待ってたぜ、フレイム!!」
「ゴルシ…」
もう…泣きそう
俺…
「フレイム、そろそろ会見の時間だから行こう」
「そうですね…」
「フレイムちゃん!」
「?」
「…私たちちゃんと見ているからね。無理しなくていいんだよ」
キタサンから言われた言葉。その言葉を胸にしまった。
「…ありがとう!行ってくる!!」
午後13:00
メジロフレイム、緊急記者会見
「本日は、会見にお越しの皆様、忙しい中ありがとうございます」
「それでは、メジロフレイム、緊急記者会見を行いたいと思います」
同時中継もされており、全国のウマ娘ファンが見ていた。
「皆さんお忙しい中お越しくださり、ありがとうございます。私メジロフレイムは…ワールドチャンピオンシップに参戦することを表明致します」
ワールドチャンピオンシップに参戦。正式に決まった訳ではないが、新たな目標ができたことになっていた。
「ワールドチャンピオンシップに参戦することによって、メジロフレイムのトゥインクルシリーズは退く事になりました」
「ワールドチャンピオンシップに参戦することになった経緯を教えてください」
「経緯経緯と致しましては、私のご両親は…ホテル火災で亡くなってしまい、養子として生きていました」
ホテル火災、養子の言葉に、記者、中継を見ていた人が驚いていた。
「…生まれも育ちもメジロではありません。母親はアルティスタディザイア、父親は中野新太が…実の両親です。俺の本当の名前は…アルティスタフレイムです」
“アルティスタ”という名前を聞き、”中野新太”というレジェンド1家の娘でもあった。
「ウマ娘…という言葉を聞いた方はもちろんいると思いますが、最初に聞いた時の心境としては…大嫌いな名称でした」
トレーナー室
スピカ達も驚きを隠せなかった。ウマ娘の名称が嫌いという事…
「なんでウマ娘のことが嫌いだったんでしょうか?」
「…性格がそうだったのかもしれないですよ」
「性格…」
「ウマ娘が嫌いということはどういうことですか?」
「…このような声と性格がそう見えるからなんです。小学生の頃からずっと悩んでました。クラス皆が俺をからかったり、暴力を振るわれる日々が多くあり…自殺しようかと悩んでいました」
自殺…俺はあの時そうしていたらここにはいない。けど、アエラスと藤宮さんの出会いがあったからここまで来れた。
「自殺しようかと悩んでいた時…同じウマ娘から勇気をくれました。その娘は将来トレセン学園に入学するはずでした。しかし…その夢は叶わず、遠いところに行ってしまいました…」
その娘…ブラウンアエラスという名前。今も行方が分からない──
「その後…両親と旅行に行った先で、ホテル火災に遭い、両親はその場で亡くなった…。感情もなくなり、もう終わりだと思っていた時でした。メジロのメイドの1人がこの俺を育ててくれました。そのレースに勝ったら養子にしてもらうという大胆な計画をしていました」
養子になって、メジロなりの育て方をしてきた。何度も叱られたり、何度も失敗をした。
「俺はあのレース…スクーデリアローマさんとユリノテイオーさんの宝塚記念を見て、自分もそうなりたいと思いました。初めてレースに出走したあの感じは最高でした…」
あの時、跳ね馬のレースを見て、自分もそうなりたかった。
けど──
「レースに出走する度…”メジロ”の名前を呼ばれ続けた時から…ずっと…その名前でいていいのか…苦しみました…」
メジロではなく、アルティスタの名を隠し続け、無敗の三冠、クラシック四冠という誰もなし得なかった記録を樹立してきた。
「…ファンの皆さんは…俺を応援…してくれいるのに…笑顔にしてくれてたのに…嘘をついていた事に…情けない思いが…」
泣きなが話を続けるが…このトゥインクルシリーズの2年、嘘をついていた事…自分を苦しめていた。
もうこれでいいんだ。俺の事なんか嫌いになってもいいんだ。その方が──
「!!!!」
「えっ?!ローマいつの間に?!」
トレーナー室にいたローマだが、瞬間移動したかのように会見場に向かった。
「チームスクーデリア所属のスクーデリアローマです。この度メジロフレイムのご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
違う…!!ローマさんは悪くない!!俺が行けないんだ!!
「ですが…フレイムの功績は泥を塗らないようにしてください!!」
「…?」
「それでもフレイムを悪く見る人は…ウマ娘ファンとして最低な人です。いや、その他のウマ娘を侮辱してるのも一緒です!」
スクーデリアローマの願い…たとえ名前が変わっても…性格が違えど…挑むことに変わりはない。
強いウマ娘になるためにも、裕福な家庭から来ても、そうでなかったところから来ても…頑張れば夢は叶えられる!
中継を見ていたファンの人、学園で見ていたライバルや同級生も…今までの事を嫌な捉え方として見ていたことに、少しでも分かって貰えたかもしれない。
「私は…メジロフレイムのワールドチャンピオンシップ参戦を…どうかよろしくお願いします!」
会見後──
「…ローマさん」
「どうした?」
「色々迷惑かけてすみません!!」
「…いいんだよ、たくさん迷惑かけてもいいんだよ!だって私の後輩なんだもん!!」
ローマの放った一言に…号泣した。
その姿は…守護者の美しき涙だった──
トレーナー室
「ローマちゃん…かっこよかったね」
「あぁ、こんなにフレイムを守ってくれた。成長したなローマ」
ローマの成長を見てきた三井。4年過ごしてきたが、ここまで成長してくるとは思わなかった。
「きっとローマさんもフレイムちゃんも、この先かなり成長を見せると思うよ!!」
「そうだね!!」
「トレーナー!ただいま!!」
戻って来た2人、やっと安堵の顔が見えた。
「…戻りました」
「…お疲れ様、よく頑張ったな!」
「…はい、皆ありがとう!世界に挑戦してみるよ!何年かかっても、絶対世界一になる!!」
「応援してるよフレイムちゃん!!」
やっと笑顔が戻ったフレイム。人生の分岐点…いや、出発点とも言えるかもしれない───
1月1日 元日
スピカとスクーデリアとの初詣。さらに──
「優希、来年は俺もスーパーGT参戦するからな!トヨタとして負けねぇからな!!」
「兄さん、そう簡単に行くかな?Zも改良型で戦うから」
三井の兄、蓮や妻の優花、娘の梨乃愛も来ていた。
蓮はジャパンフォーミュラとスーパーGTに参戦する。
「初めまして蓮さん、スピカトレーナーの沖野です」
「初めまして、ユリノのトレーナーの漆瀬です」
「弟がいつもお世話になっております」
蓮がスピカのトレーナーと漆瀬とは初対面。
キタサン達も初対面らしい──
「三井さんのお兄さんもレーシングドライバーなんですね!」
「まぁ俺より上だけど」
昨年までジャパンフォーミュラ一筋で来ていたが、ライバルが国内最高峰(ジャパンフォーミュラ・スーパーGT)2冠を達成し、F1直下のF2に参戦することが決まった。
この出来事に、蓮は両カテゴリーの参戦を決めた。
「まさか兄さんがTOM’Sで来るとは」
TOM’S…それは知る人ぞ知るチューニングメーカー。36 37の2台体制となっている。
一方──
「フレイムちゃん、今年どんなお願いしたの?」
「…それはね、ワールドチャンピオンシップで勝利!」
「夢があるね!」
「…キタサンはなに願った?」
「私は、後輩が強くてカッコイイウマ娘ができるようにかな!」
「世代交代か…」
キタサンは有馬記念の後に引退した。その教えを受け継いでほしいと願った。
後の教え子が…GIを連勝する未来が…
「うん…私も引退しちゃったし、後輩たちにその思いを受け継いで欲しいんだ。もちろんフレイムちゃんの活躍も見てもらおうと思ってね!」
「ハハ…ワールドチャンピオンシップには神童の娘もいるし、遠くなるけどな…」
神童…エースプロストの活躍や強さは6年たっても衰えていない。計り知れない強さだ…
「フレイムちゃん!」
「何?」
「…ありがとうキタサン!!」
登校日
学園にはいつもの賑やかさが戻っていた──
「おはよう」
教室に入ると、同級生らがフレイムに駆け寄った。
まさか…あの時の会見のことか?
「…すまない、俺…」
「…!!」
フレイムの活躍を願っていた。嘘をついていた事ではなく、皆の思いが…!!
「…いや…朝から泣かせてくるなよ……ありがとう…!」
「ねぇねぇ、また私たちと走ろうよ!」
「ずるい!私も!!」
「分かった!放課後走ろうぜ!!キタサン達も!!」
「うん!!」
フレイムの笑顔がとても楽しいと思えるような感じがした──