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『葵さん…』
『私…どっ…どうしたら、いっ…いいか…わからなくて…』
『葵さん…気をしっかり持って下さい。これから茉奈ちゃんの所に行ってあげましょう。茉奈ちゃんも、きっと葵さんが来るのを待っていると思います』
『はい…』
すると電話の向こう側で、葵さんが誰かと話をしている声が聞こえてきた。
『美咲ちゃんが、病院まで乗っけて行ってくれるそうです』
『本当ですか? 良かった…。遠藤さんにお礼を言っといて下さい』
『わかりました。この後、用意が出来次第、紺野さん家に向かうのでよろしくお願いします』
『準備して待ってます』
それから僕は急いで洋服に着替えて、葵さんたちが来るのを待った。
それから15分も経たないうちに迎えが到着した。
「紺野くん乗って!」
運転席側の窓が開くと、遠藤さんが顔を出して言ってきた。
「よろしくお願いします」
僕は、車の後部座席に乗り込むと車内を見回した。
亜季ちゃんは、どうやら来なかったようだ。
「亜季ちゃんは熟睡しているようで、部屋のドアをノックしても反応がありませんでした」
助手席に座っている葵さんは後部座席の僕に振り向く事なく、そう言ってきた。
「別に…亜季ちゃんの事は聞いてないのに…」
「私の事はお気遣いなく…」
「そんなんじゃないです…」
「いいですよ、無理しなくて」
「無理なんてしてません…」
「そうですか」
亜季ちゃんとの事になると、葵さんは嫉妬深くなる。
「それより葵さんに聞きたい事があったんです」
「何ですか?」
「もしかして未来の映像が何か見えてたんじゃないんですか?」
「断片的にですけど…。電話でも言いましたけど能力者が絡んでるのでハッキリとは見えないんです。それでも、こうなるんじゃないかって事は想像できました…」
「やっぱりそうだったんですね…」
「ごめんなさい。確信が持てなかったので余計な事は言わない方がいいと思ったんです」
「葵さん…僕には、どんな事でも包み隠さず話して下さい。そうじゃなきゃ、葵さんを助けられませんよ。たとえ悲しくツライ現実を見る事になるとしても…全てを伝えて下さい」
「あっ‥ありがとうございます。次からは必ずそうします」
「そうして下さい」
後ろを振り向いた葵さんと僕は、見つめ合って笑みを交わした。
「それより、どうして薬を注射したのにこんな事に…」
「僕は、茉奈ちゃんが注射した直後に“体が熱い”って言ってたから、薬が効いてるものだと思ってました」
「私もそう思ってました。でも、あの薬は未来から届けられた治療薬のはず…効かないなんてあり得ません。もしかして、何かやり方が間違っていたとか?」
「その薬だけじゃ足りないんじゃないの?」
遠藤さんが突然話しに入ってきた。
しかも、その言葉は意外なものだった。
「美咲ちゃん…それって、どういう事?」
「薬で病気は治ったんじゃないのかな? それなのに、心臓が止まって昏睡状態に陥ったって事は、茉奈ちゃんが能力者である事と何か関係あるんじゃないの?」
「つまり茉奈ちゃんは能力者であるが故に、死のふちを彷徨っている…」
「そう考える方が自然だと思う。そういえば…葵ちゃんが小学4年の時、突然気を失って救急車で病院に運ばれた事あったよね。葵ちゃん憶えてない?」
信号待ちをしていると、車を運転してる遠藤さんは、葵さんを見つめて優しく問いかけていた。
「うん、そんな事あったね…」