ふと目覚めるとそこは見慣れた寝室だった。
目覚まし時計の大きな音と雲雀の小さな囀りが聞こえた。 空を見ようと見上げると付けっぱなしの 照明が私を照らしているようだった。 歯を磨いていると、母親がいたので、おはようと挨拶してみた。机には空っぽのお皿と箸が適当に置かれていた。
いつもは開けっ放しの押し入れを開け、黒色の背広を取り出し、そして鉛 のように重い鞄の紐を持ち、ネクタイを整えて、玄関へと向かった。
薄ピンクのスニーカーが二足と一足のオフィスシューズが並べられていた。私はお出掛け用のスニーカーを履き間違えたがサイズが一回り小さくて気付き、オフィスシューズに履き替えた。
扉を開け私は独りで呟いた。
「いってきます」
外の空気にはまるで暖かさと寒さに挟まれるような気がした。
太陽は銀色の雲に隠れ姿を見せない。
近くの広場には1匹黒蝶がひらりひらりと歩き、空へと飛んで行った。
改札という門をくぐり、乗り場に着いた刹那に四角い電車が私を迎えに来た。片足を踏み入れるとそこは真剣な顔がよく見られ、もう職場の感じがした。電車のつり革を引っ張り、扉の硝子を覗いてみると寝起きの青白い私の顔がそこには映っていた。
いつもの事務所に着き、パソコンをカタカタさせて仕事を捗らせた。部長には集中力が足りなくなっているだの、最近はよく怒られている。
休憩時間になり、私はいつもの様に弁当を取り出そうとしたがいつもの所には入ってなくて、コンビニの御握りと珈琲でお腹を満たすことにした。
時針が下を指した頃に、部長が私を呼び出した。
そのまま帰宅時間になって、そのまま私は帰宅した。帰り道に2匹の黒蝶が私の方へとを歩く。
帰りの電車の扉は私を映さない。
最寄りの駅に着くと過去最大級の大雨が振り、私は母親に車で迎えに来てもらおうと電話を掛けてみた。 電話の着信音が暗闇の中に響き渡り、繋がった時に。
「この電話番号は現在使用されていません。」
私はその日、小学生から患っている病の発作が出て倒れた。 そのまま私は救急車に病院まで運ばれたのだろう。
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