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#シークレットベビー
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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次の日、母の付き添いを断り一人で登校した。
校長室に呼ばれたのは私だけ。でも一河も水咲もちゃんと自分の気持ちに正直になっていたし、戦っているのが分かるから、私だって怖くなかった。
色々と追及されたり強い言葉で止められるかと思ったけれど、お見合いの解消は意外とすんなり終わった。
恋愛結婚憧憬症候群中のお見合い解消は、本来ならば禁止。だけど、一慶さんの場合は特例が使えた。
そんなこと仲人さんは教えてくれなかったのに。
ただ虫みたいな小さな字がつらつら書かれた書類数枚に名前を書くだけで終わる。
その書類も、自分の意志で辞めるという証明とかこのお見合いで何か精神的苦痛が起きてないかとか、分かりにくい文章で遠回しに『このお見合いは本人による決断で始まり終わり、国は何も責任ありません』って意味の内容だと理解できた。
仲人さんと保健室の先生も、黙々と書類に目を通し「うん。不備はないね」と確認し、校長に書類の入った袋を渡していた。
「お見合いをうけなかったことによる、学校側の学生への差別はもちろんありません」
当然なことなのに、あえて言われて面食らってしまう。
お見合いしない生徒にそれほど学校も厳しい場合があるのかな。
「これでもうお見合いは終了です。帰って結構ですよ」
保健室の先生は先に出ていき、校長もさっさと職員室に戻った。
あっけない終わり方に、指導室でぼんやりと佇む私に仲人さんは「お疲れ様」と言った。
「あのお見合いが終了したので、恋愛結婚憧憬症候群もとけますか?」
「すぐにテレビの番組を切り替えるようにはいかないだろうけど、自分の相手が強制ではないと安心できたら大体の子はすぐに治るわね」
「そうですか」
それを聞けて安堵した。あとは私が心からお見合いを終わらせたと思えば、一慶さんが普通に見えるんだ。
それを聞けただけでもう心は解放された気分になってきていた。
仲人さんもカバンを持つと行ってしまおうとしている。
「今までありがとうございました。ご期待にはお答えできませんでしたが、手厚い補助で感謝しています」
「ふふ。頑張ってね。貴方たちには期待しています」
最後まで自分の感情ではしゃべらない、徹底的に公的業務のように接してくれていた。
沢山ご迷惑をかけたのに、それぐらいなんでもなさそうだった。
「……これで、終わり」
国から押さえつけられた法律だと思っていた。もっと抑止力があるとか圧力があると思っていたからあっけなくで驚いた。
それは教室に戻ってからも変わらない。皆はまだ私がお見合いを終わらせたのかも続けているのかもわからない。
水咲と一河も首輪みたいだからとブレスレットを外してしまった今、だれがどうなったのか誰も分からないんだ。
「お疲れ。いじめられなかった?」
「圧力もなかった?」
一河も水咲も心配してくれたけど、私も心配になるほどなにもなかったと聞くとほっと息を吐いていた。
私たちは反発していたが、拘束力はそうない法律のようだった。
一慶さんと私は、ただのお友達。お見合い相手でもない。
同じクラスにいるわけでもないし同じ学園生活を送れるわけでもない。
「ほらー、授業始めるぞ、席につけつけ」
「きりーつ」
水咲の声で皆がバタバタと教室を移動し、机の上に教科書を置く音が響く。
これからは宿題の免除もない、私が理想としていた普通の学園生活。
少し違うのは、婚約指輪をしていたり結婚指輪をしている生徒がちらほらいること。
このクラスの数人はすでに、青春を終わらせているのかと思うと少しだけ寂しい気持ちになった。
「教科書23ページ、出席番号18番、二段目から読んで」
漢文の授業は眠たくて、両肘ついて顔を固定してもうとうと眠ってしまいそう。
だって昨日は遅くまで一河と水咲とゲームして、そのあと庭で一慶さんの筋トレを見ていたからね。
水咲は瞬き以外は微動だにせず黒板を睨みつけ、一河は可愛らしくあくびをしていた。
それを見て、私もうとうと舟をこぐ。ああ、きっとお見合いが終わった安心感だ。
頭ががくんと大きく動かないように両手で押さえて、目を閉じだ。
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