『貴方ノ為ならどんな罪モ犯ス』〜桃の花は赤く散る〜
第5輪 全てノ空ハクが揃ウ
ユーハンが居なくなって3日が経った。
エスポワールは何やら騒がしいらしい。
『有力貴族5家が続いて失踪?』
『えぇ。こんなこと初めてですよ…。』
『…ルカス、ちょっと調べて欲しいことが…。』
『……?』
グロバナー家本邸
私はグロバナー家に来ていた。
『…立て続けに貴族が失踪か。トゥルージュ家もまだ見つかっていないし…。』
『あの、フィンレイ様。』
『何かな?ベリアン。』
『ユーハンさんに個人的に依頼を頼んだとユーハンさんから聞いているのですが…ホントですか?』
『ユーハンに依頼?いや、私はしてないが。』
『え?』
『?ユーハンがどうかしたのか?』
『ユーハンさんからの手紙で…フィンレイ様から依頼があり、屋敷を空けると…』
『変だね。私はユーハンに依頼を頼んだ覚えはない。』
『っ……?』
(それならどうして…。)
バタバタ…!
ガチャ!
『フィンレイ様!大変です!』
『何だ、騒がしい。』
『トゥルージュ家が…!』
『なに……?』
エスポワールの湖で骨と子供2人の遺体が発見された。鑑定の結果…骨はトゥルージュ家の
当主の奥様方だった。
『見つかったのはこの3人で…当主様は発見されませんでした。』
『…。』
『遺体の損傷が激しいので裏組織の犯行かと……。』
『こんな見つかるような場所に遺体を隠すなんて犯人はどういうつもりなんだ?』
『…っ。』
『…ベリアン。もう一度言う。私はユーハンに…。依頼を頼んだ覚えはない。』
『…かしこまりました。お時間を割いてしまい申し訳ございません。』
『…ところで。トゥルージュ家が居なくなったのはユーハンが居なくなった時だね?』
『何を仰りたいんですか…?』
『5家の失踪と、屋敷に帰らないユーハン…これはなにかの偶然かな?』
『…仲間を疑うなんて私はしたくありません。ユーハンさんが嘘をついたとしたならそれは何か事情があるんです。…失礼します。』
バタンッ。
『…まだまだ青いな。ベリアン。』
一方その頃、デビルズパレス。
『やっぱり、ルカスのこの貴族の弱みメモが役に立った。攫われた5家の当主は私に嫌がらせをしてきた人だ。』
『主様にはあまり見せたくなかったんですけどね…。いつかフィンレイ様に報告しようと書いていたものですから…。』
『……。』
(共通点は私に嫌がらせをして危害を加えた貴族。そして、トゥルージュ家が居なくなったのは私に嫌がらせをしてきたから。そして、ユーハンがいないのは…。)
頭の中でパズルを揃える。
そして、次で決定打を打たれる。
バタバタ……!
ナックが急いで帰ってきた。血相を変えて。
『主様…!!何やらエスポワール騒がしいので聞いてみたら……。湖にトゥルージュ家の遺体が……!』
『嘘……っ。』
私はガクンっと膝をついて座り込む。
揃わなかったピースが……揃ってしまう瞬間だった。
『そん、な…。』
(トゥルージュ家は最近嫌がらせをしてきた貴族だ。だからルカスは知らない。知ってるのは私とユーハンだけ…。)
『…ルカス。』
『主様…?』
『今夜……。みんなを食堂に集めて。』
『え……?』
『会議をしなきゃ。あの赤い悪魔を止めなきゃ。』
惨劇まで残り3日――。
次回
第6輪 仲間ノ事を疑エなイ
コメント
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ぷちさーん!お久しぶりです元の名前がHuの透明です(新ネーム)ユーハンが鍵になるのか…次回も楽しみ!