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『貴方ノ為ならどんな罪モ犯ス』〜桃の花は赤く散る〜
第6輪 仲間ノ事を疑エなイ
その日の夜――私はみんなを食堂に集めた。
『ユーハンが…連日続く貴族誘拐の犯人?』
『うん。今日ベリアンが確認に行ったの。グロバナー家にそしたらフィンレイ様はユーハン個人に依頼は頼んでないって。』
『え?待ってください、それはつまり――。』
『…ユーハンが嘘をついて屋敷を空けたの。なにかやましいことがあるんだよ。そして決定打はトゥルージュ家が居なくなったのはユーハンが居なくなった日。』
『……。』
食堂が静まり返る。
『そして今日…遺体が見つかった。トゥルージュ家の当主の奥さんと、その子供二人…。奥さんの方は骨だけ見つかった。子供は体中に蟲に刺された後があった。ユーハンのことだから当主だけは最後に手にかけると思う。』
『ユーハンがそこまでする理由はなんなんだよ…!』
『そうですよ!ユーハンさんがそんなこと…!』
同室の2人が声を上げる。
『…私に対して嫌がらせをしたから。』
『『は…?』』
『ユーハンは忠誠心の高い執事。主である私に危害を及ぼす貴族がいたら…どうすると思う?』
『それは…。』
『私はこれ以上…ユーハンに手を汚して欲しくない。ユーハンは私の担当執事だから。そして、主として正しい道に導きてあげないといけないの。そしてちゃんと罪を償ってもらう。』
『主様……。』
『……分かりました。ユーハン君の居場所をまず探しましょう。』
『うん…!』
と、行動に移そうとしたその時だった。
『お言葉ですが、主様。ユーハンさんが犯人だという証拠はあるんですか?』
『え……?ベリアン…?』
『物的証拠がありません。あるのは供述だけです。』
『っ、ベリアン、仲間を疑いたくないのは分かるけど……。』
『ルカスさんは黙ってて下さい!』
ピリッ
食堂がピリついた。
『主様…。彼が何故我々に嘘をついたのかは分かりません…でも、ユーハンさんがこんな残忍なことをするはずありません!』
『ベリアン…っ。』
(…仲間思いのベリアンが困惑するのも無理はないよ…。どうやって説得すれば…。)
『嘘をつくってことはなにか後ろめたいことがあるんだよ!ユーハンはそういう人だよ?』
『っ、ユーハンさんの何を知ってるんですか?主様は。』
『っ、それは、担当執事だからそれなりのことは…!』
『貴方は悪魔執事のこと何も分かってません!!』
『っ……!』
(ベリアンさんのあんな怒った顔…初めて見た…っ。)
(あぁ…すごい剣幕だ。)
『我々は…絶望を経験してここにいるんです。未来が掻き消え…死にたくなるほどの絶望を経験したんです…。そして時々思い出して苦しくなる…。主様の言う通り、彼は忠誠心の高い執事です。そんな彼が嘘をつく理由なんて1つしかありません。主様や我々の前で見せたくない一面があるんです。涙や…苦しい姿…はたまた暴走した姿…。』
(それを言われたら…っ。もう何も…!)
私は言葉が出ない。
『主様……。』
『貴方は何も理解していない。だって貴方は…』
『ベリアン――!』
『悪魔執事じゃないんですから!!』
『っ……!!』
核心を疲れたようで胸が苦しい。
『はぁ、はぁ…っ!』
『そうだね…っ。私はただの主様だよ。みんなの過去は触りでしか知らない。主になって3年近く経ったけど、みんなの過去のことは知らない…。だって、私だってみんなに絶望して欲しくないから…。知りたくても知れないこの気持ちも知らないのに…っ。』
(ダメ、止まらない…。)
『もうみんなが悪魔化した姿は見たくない…っ。私だって…みんなと同じが良かったよ…。』
『っ、主様…。そんなこと言うなよ…。』
『そうっすよ、主様は俺達とは…。』
『分かってるよ…っ。みんなと同じになれないことなんて分かってる…っ。でも私はみんなみたいに不老じゃない。歳をとっていつかは死んじゃうの。みんなとずっといることなんて無理なんだよ…!』
『主様……。』
(思わないようにしていた。俺が勝手に。
主様にずっと居て欲しいって言うのは俺の勝手なエゴ。)
『私だってユーハンを疑いたくない。みんなのことだって。でも…。私はユーハンにこれ以上手を汚して欲しくないの。ベリアン……。お願い。協力して。』
『……。』
『主様。少しベリアンと話をしてきます。ミヤジ、行こう。』
『あぁ。』
私はベリアンとミヤジを連れて食堂を出る。
『……。』
(ベリアンの気持ちも分かる。痛い程。
でも私は彼を止めたいの。どんな手を使っても――。)
惨劇まで残り2日――。
次回
第7輪 惨劇ノ序章ノ始まリ