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講師とアシスタントという関係が終了したのは、5月の半ばだった。
あっという間に終わった気がする。
緊張はしたけど、悠人や生徒達のテクニックなどをいろいろ学べたことは、私の財産になった。
それに、悠人とずっと一緒にいられて、毎日がドキドキだったのも確かだ。
短い期間に、大きな刺激をみんなからもらえた気がする。その貴重な経験を、シャルムで活かせられるようにと、今は気合いを入れ直して頑張ってる。
お客様に対しても気を配りながら、常に笑顔を忘れず何があっても冷静にと心がけた。声かけも積極的に行って、最高のリラックスタイムを提供できるよう努めた。
シャンプー、カット、パーマなどにも、今まで以上に丁寧に、そして、真剣に取り組んだ。
次第に、少しずつだけど、私を指名して下さるお客様が増えてきて、アシスタントの経験は、何ひとつ無駄じゃなかったんだって感謝した。
それから、慌ただしく時は流れ……
5月も終わりに近づいていた。
昼間は暖かく、穏やかな日差しが降り注ぐ。
そんなある日の仕事帰り、ゆっくり夜空を見上げたら、春の星座が見えた。
おおぐま座だ。
しっぽが北斗七星。
子どもの頃から星座を見つけるのは得意だった。
1番好きなのは、冬のオリオン座――
最近、星座なんて気にも止めずにいたけど、こんな風に星座を探すくらい、少しは心の余裕が出てきたのかな……
「穂乃果さん!」
1人で帰る道の途中、振り向くとそこに輝くんがいた。
「どうしたの? こんなところで」
会うはずのない場所にいた輝くんに、思わず驚いてしまった。
「この近くに友達がバイトしてる店があって、そこで晩ご飯食べて帰ろうかなって。そしたら、穂乃果さんがいたからびっくりして。すみません、思わず声かけちゃいました」
そう言った輝くんは、驚きの中にも優しい表情を浮かべていた。
「そうなんだ。本当にびっくりだね。私は、そこの本屋さんに寄ってたの」
私の雑誌と、悠人に頼まれた本を買いに行ってた。
「そうなんですね。あの……穂乃果さん、今から時間ないですか? もし良かったら、一緒にご飯に行きませんか?」
え?
ご飯って……2人きりで?
悠人は今日は遅くなるみたいだけど、やっぱり……2人きりは良くない気がする。
お互いに恋愛感情がなかったとしても……
「ごめんね、せっかくのお誘いなんだけど……ちょっと今夜は……」
「だったら10分だけ時間を下さい。ここで、ちょっと待ってて下さいね」
そう言って、すぐ目の前にあるカフェに飛び込んで、テイクアウトで飲み物を買って戻ってきた。
「ミルクティー、好きでしたよね。どうぞ」
「ありがとう……わざわざごめんね」