テラーノベル
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ザク 、ザク………
ひたすらに土を抉って 、穴を掘る 。
この 、僕の積もりに積もった感情を完璧に
閉じ込めておけるくらいに深くて大きな穴を
でも 、そういう時に限って
お前はいつも邪魔をする。
「………喜八郎」
『……..』
「いい加減 、穴を掘るのをやめろ 。
もう十分出られてないだろう….??」
『……..』
「….無視か 、そうか無視をするのか 。
お前も 、所詮そんなんだったから
あのお方に振られたんだろうな 。」
そう告げられた瞬間 、
穴を掘る手を止めて彼を見上げ睨みつけた 。
「……..悪いが 、いくら怖い顔をしても
私にとっちゃ可愛いだけだ 。残念だったな 。」
次の瞬間 、僕は思わず涙が零れてきた 。
泣きやもうにも涙は止まることを知らなくて
ただ 、ひたすらに啜り泣くしかできなくて
でもそんな時 、お前は穴まで降りてきて
僕を強く抱き締めてきた 。
「だから 、だから私は言ったのだッ
あんな男…….お前には無理だと 。
お前を愛してくれるのはこの私だけだと!」
確かに 、思い返してみれば
いつもお前は僕一番に考えてくれていた
いつも危険ごとにはお前が付いていて 、
いつも僕優先なお前を当たり前に思う僕だった
きっと 、そんな僕を愛してくれる人は
本当に滝だけなのかもしれない 。
「ちょっと仙蔵!!!!」
『…..なんだ伊作 、部屋に入る時は声くらい__
「どうして喜八郎が
滝夜叉丸と付き合ってるのさ!
まさか 、まさかお前断ったわけ!??」
『……だったらなんだって言うんだ 。』
バチン ッ _______ “
「っ!?お 、おい伊作__」
「お前 、そんな嘘で
喜八郎を傷付けて満足なわけ?」
「お前は …….. !
喜八郎の思いを踏み躙ったんだよッ!!」
伊作が私に馬乗りになり 、胸倉を掴んで
涙を流しながらそう淡々と口から零していた
そんな伊作を止める文次郎 。
そしてあとから騒ぎを聞きつけた
留三郎やろ組のふたり 。
そして伊作は 、
私の心を最後まで抉っていった 。
「仙蔵 、僕は今のお前を応援できない
僕は 、滝夜叉丸を助けるからね 。」
伊作がこうも怒るのは当たり前のことだ 。
なぜなら 、私は 。
私は 、四年間ずっと想い続けてきた
後輩からの告白を振ってしまったことからだ 。
冬至を迎えた頃だろうか
私は作法委員会委員長として来年度の
委員長代理候補の喜八郎には引き継ぎを
教えなければならないのだった 。
きっと 、ほかの委員会は冬に長期休暇後からの
教え込みのようだが 、私はそうはしない 。
あいつは気まぐれでやりたくない日などがあれば
とことんその物事を避けるわ穴掘りに関しては
何を言っても聞く耳を持たないのだから 、
そんなヤツに彼らとおんなじ時間を設けても
せいぜい二分の一も満たない知識で終わるだろう
だから 、こうして随分前から
引継ぎ準備を行っているのだ 。
まぁ 、喜八郎と少しでも二人っきりで居たい 。
そんな理由も無きにしも非ずではあるが 。
あの日は 、どうも激しく冷えた日だった 。
寒さに弱い私は喜八郎の児童体温を利用するべく
喜八郎を隅に置いて 、でも適度な距離を保ちつつ
引き継ぎの準備を進めて言った 。
『さぁ 、喜八郎 。今日は昨日の続きからだ 。 』
「えぇ??戦の作法は長くて疲れます〜」
『えぇじゃない 。全く 。
これじゃあ下の者に教えられないだろう 。』
「立花先輩が教えに来てください〜」
『城勤めの忍者は忙しいんだ 。』
「ちっ …. 」
『そう不貞腐れるな 。』
可愛い後輩にそんなことを言われてしまい
勤め先が決まっていながらも 、
それを断ってしまう勢いだったではないか。
そう思いながらも 、拗ねながら筆に向かう
喜八郎の文字を追っていく 。
今回は 、作法とは離れてしまうが
今起こっている戦について 、今まで習ってきた
作法の知識を使いまとめあげるというもの 。
それをいつしかの代で使えればと思う 。
戦国作法の一つ例をあげるのも 、
生徒の想像力を高めることができて良いと思った
現代 、とある将軍の後継問題により
大規模な戦が行われている 。
幸い 、この地周辺で行っていないため
被害は無いのだけれど 、なんせこの地域には
忍者が多発している 。
だからこうやって私たちは
忍術学園に通っているわけだ 。
また 、私が卒業を果たせば
次いつお前に会えるか分かったもんじゃない 。
もし 、お前とひとつになれたとして
お前や私が道中に死んでは意味が無いだろう
きっと 、私もお前も 。
どちらかが死んだとき 、その時はきっと
常人じゃいられそうにないのだからな 。
だから 、私はお前を振った 。
「……い 、」
「せん…….」
「せんぱーい!聞いてますか!!」
『….ッ 、すまない 。終わったのか 。』
「えぇ 、もうとっっくに」
『それは 、すまなかった 。』
「……」
『…….喜八郎 、?』
筆を置いては体の向きを私に揃え
その目は凛とし過ぎていて
今にも吸い込まれそうだった 。
私はずっと逃げていた 。
聞きたくない 。振りたくない 。
絶対に言うな 。言うな喜八郎 。
それはもう何十回も願った 。
でも 、彼は悪戯好きな猫
「立花先輩 。」
「僕は 、貴方を慕っています 。」
等々言われた 。等々叶ったこの想い 。
でも 、それじゃあダメなのだ 。
これは 、私とお前の将来の為_______
『………すまない 、喜八郎 。』
『かつて私は 、お前を
後輩としか思っていないのだ 。』
『っ……….だから 、』
「大丈夫ですよ 。先輩 。」
『喜八郎ッ…..』
「わかってる 。全部わかってます 。」
「でも 、あなたに伝えられてよかった 。」
そう言って 、喜八郎が出ていってしまった 。
止めようにもたった今 、ヘムヘムによる鐘が鳴り
委員会活動の終わりが知らされた 。
それにより 、もう私が
お前を縛れる理由も無くなった 。
許せ喜八郎 。
どうか 。
この 、馬鹿で愚かな私の嘘を見破らないでくれ
「喜八郎 、私の豆乳ぷりんを分けてやろう 。」
「え 、いいの?」
「ああ 、なんせこの平滝夜叉丸は恋人である
お前の好きな食べ物を熟知しており 、
その上お前が甘味を欲していることくらい
容易いのだからな!!!」
「それは昨夜お前が喜八郎を_____」
「わァーーー!!?!!!?この阿呆!!
なな何を言うかと思えば 、場を考えろ!!」
「なーにが阿呆だ馬鹿野郎!!!
お前こそ時間くらい考えろよ!!!!!」
「だから夜の話はするな!!!!
守一郎の顔を見てみろ!!!」
「え….?喜八郎 、滝夜叉丸??/ /
うそ…..まじかよっ 、!!」
「しまった 。守一郎はまだ知らなかったのに…!」
「ふっ 、自ら同室を沈めてしまうとは 。
なんと残酷なことなのだろうなァ……..??」
「なッ …. こんっの滝夜叉丸……」
「なんだ 、田村三木ヱ門??」
「ふたりとも??落ち着きなさい」
「 「 はい 、タカ丸さん 」 」
「もうっ 、食事中にその話はよしてよ!」
「すいません 、タカ丸さん 。
ですが今回は私ではなく三木ヱ門が……」
「 滝 」
「き 、喜八郎 。」
「もう今日一緒に寝ない 。授業も隣やめる 。」
「なッ…!?何故だ!!何故なのだ喜八郎!!!」
『…..ぁ 、きはちろ….』
「喜八郎 、廊下を走っては危ないからね?」
「はぁい 、伊作先輩 。」
『……..伊作 。』
「なに 、悪いけど 。
僕はそう簡単に近づかせないからね 。
今のふたり 、すっごく幸せそうだもの 。」
拗ねたような顔で私の横を通り過ぎる
喜八郎に声を変えようとしたところで
伊作に遮られ 、そう言われてしまった 。
もう 、私は喜八郎と話す事もできないのだろうか
そんなの 、そんなのあんまりじゃないか 。
そんな私を見据えたのか 、伊作は私にこう言った
「喜八郎が好きなんだったらさ 、
先のことばかり考えてないで
まずは気持ち伝えてみなよ 。」
その日の委員会活動後 、
すぐに喜八郎に想いを告げた 。
委員会では 、普段通りの喜八郎の姿が居て
少し身が軽くなったのを感じた 。
そのおかげか 、無事想いを
そのまま伝えることが出来た 。
結果は勿論 。振られたに決まってる 。
でも 、私はもう悔やんではない 。
だって 、私は喜八郎の初恋相手だったという
肩書きが残されているのだ 。
その短期間の間だけでも 、互いを想い合えた
あの時間を 、私は忘れることは無い 。
そして 、この春で私はもう 。
なんのあと残りも残さずに
卒業することが出来るのだから______
「ぅ ” …… ひっぐ…..きはちろぉ、、」
「おいおい 、ちと飲みすぎじゃねェか?」
『いいの!!仙蔵は頑張ったんだから!!』
「にしても喜八郎やるなァ 、
仙蔵をここまで泣きべそかかせるなんてな!!」
「なはは!!まぁ相手が滝夜叉丸だ!!
無理もない!流石体育委員会!
恋愛も勝っていかないとな!!」
「ッ、、、!!!」
「あ”ーー!!!仙蔵もう飲むなッ!!!」
「…….もそ 、」
当たって砕けろって言うよね 。
僕だって 、散々お前と喜八郎を
くっつけようと努力したよ 。
でも 、いつまでも
男を見せないお前に腹が立った 。
その分 、滝夜叉丸はいつだって積極的で
喜八郎のそばを離れないし
喜八郎しか見えていないようだった 。
だから僕は 、
喜八郎想いの滝夜叉丸を応援したんだ 。
でも 、仙蔵だって頑張ったんだもん 。
今日くらい 、やけ酒を許してください 。
先生方 、どうかご贔屓下さい 。
山田先生 、お酒を盗んでごめんなさい 。
コメント
7件
相変わらずめっちゃ物語書くの上手だね!?❤️🔥 まだTERROR続けててくれたのびっくり
神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神神